江戸川乱歩賞を受賞しデビュー、その後も数々の賞に輝くミステリー界の旗手・薬丸岳が2013年に発表し、神戸児童連続殺傷事件を彷彿とさせ話題を呼んだ「友罪」(集英社文庫刊)の映画化。『64-ロクヨンー前編/後編』(2016)での大ヒットも記憶に新しい瀬々敬久監督待望の最新作『友罪』(ゆうざい)がギャガ配給にて2018年5月25日(金)より公開となった。

キャリア史上最難の役に挑む生田斗真、瑛太を主演に、佐藤浩市、夏帆、山本美月、富田靖子と日本映画界を代表する名優が集結した本作で描かれるのは、かつて世間を震撼させた事件を起こした少年Aの“その後”と、周囲の人々の葛藤――。それぞれの過去と現在が絡み合い、疑心や後悔に囚われた様々な人間模様が交錯し、やがて人間存在の謎に満ちた深みへと導く、慟哭のヒューマンサスペンス。

この度、TOHOシネマズ日比谷にて公開記念舞台挨拶が行われ、主演の生田斗真、瑛太に加え、
佐藤浩市、夏帆、山本美月、富田靖子、瀬々敬久監督が参加した。

「この映画、はっきり言って問題作。ですが、瀬々監督の指揮の下、全てのキャスト全てのスタッフが尋常じゃない覚悟をもって作り上げた作品なので、しっかりと受け止めてほしい。」本作の完成披露試写会で力強くコメントした生田の言葉通り、上映直後の会場は、厳粛な空気が漂い、人間の本質を問う重厚な物語を目の当たりにした観客らによる深い感動と盛大な拍手に包まれた。

「作品に、多くの願いや希望の光を込めた。」そう口にした生田は、「沢山の方に、特に日本の社会をこれから担っていく方々に見てもらって、僕たちの想いが届いてほしい。友情とは何か、考えてもらえたら嬉しいですし、この映画を大切にしてくれたら光栄です」と挨拶。続く瑛太も「こんなに多くの方が映画を観てくれたことに、嬉しい気持ちでいっぱい」と笑顔を見せつつ、「今日は雨男の斗真と一緒なのに晴れたね(笑)」とジョークを飛ばし、場を和ませた。佐藤、夏帆、山本、富田もそれぞれ公開を迎えたことに喜びと感謝を口にする中、メガホンをとった瀬々監督は、「皆さんの表情がどんよりしてないかなと、舞台に上がるのが正直すごく不安だった」と正直な心境を吐露。しかし、「瑛太さんのシャレで少し笑顔になってくれてる。よかった(笑)」と、ホッとした表情を浮かべた。

挨拶が終わると、ある種のタブーを孕んだ難しいテーマに挑んだ面々は、それぞれ撮影当時の想いを述懐。己の罪と闘いながら友となった鈴木の真の姿を探る元週刊誌ジャーナリストの益田純一役を演じた生田は、「特に賛否両論ある映画だと思う」と作品全体を考察しながら、「どういうことを感じたのか、皆さんの意見が早く聞きたい気持ちです」とコメント。対する元少年A・鈴木秀人役を演じた瑛太は、実際に原作小説のモチーフとなった神戸児童連続殺傷事件における少年Aの手記を読み、「人間である以上、動物である以上、そういった(少年Aのような)衝動が生まれてきてしまうということに、どこか共感めいたものを感じてしまう部分もあった。」と複雑な心境を告白。「色々なことを感じたが、演じるとなったら、どんな役でも愛していないと僕は演じることができないので、僕自身が鈴木を守ってあげたいと愛しながら撮影していました」。

続いて、元AV女優として暗い過去を持ちながらも、鈴木に次第に惹かれていく藤沢美代子に体当たりの演技で挑んだ夏帆は、憧れの瀬々監督作品の出演に大きな喜びを感じつつも、「正直即決で決められた訳ではなかった。」とオファーを受けた際の想いを語り、「美代子を受け入れることができるかすごく悩みましたが、だからこそ挑戦したい気持ちが勝った」と振り返った。一方、益田の元恋人で自身も雑誌記者である杉本清美を演じた山本は、生田との共演を振り返り、「普段は本当に気さくに話しかけてくださっていたのですが、編集部に益田が乗り込んでくるシーンの撮影時に、生田さんがテストの時からピリッとした空気感を作っていらして、やっぱり生田さんはすごいなと思いました」とコメント。生田のことを「尊敬している」と続ける山本に、生田は照れ笑いを浮かべ、「すみません、役者ぶっちゃって(笑)」と笑わせた。

一方、医療少年院でかつての鈴木を担当していた白石弥生に扮した富田靖子は、瑛太との緊張感あふれる掛け合いシーンが続くも、「初めて台本を手にした時に、どうやって演じたらよいか結論の出ないまま撮影に挑みました。内容はピリッとしたシーンが続きましたが、撮影は割と淡々と、静かに進みました」と述懐。他キャストも同調する中、生田が、「ちなみに、佐藤浩市さんは自分のシーンじゃなくてもいつも現場にいてくださって。本当に映画が好きな方なんだなと。すごく安心しましたし、素敵だなとおもって嬉しかった」と、家族を離散し息子の罪を償い続けるタクシードライバーの山内修司を演じた大先輩の佐藤を立てると、当の佐藤は、「なんか俺が凄く暇みたいじゃん!(笑)」と笑いながら生田にツッコミ。キャスト一同笑顔を見せる中、続けて「「罪」であったり、「赦す」ということに千差万別の意見や答えがある中で、結局なぜ我々がこういったテーマを映画として提示するのか。観ていただいた方には、物語を自分自身に照らして、ご自身なりの答えを紐解いていただきたい」と語った佐藤の真剣な言葉に一転、一同は真剣な眼差しで観客を見つめた。

また、イベント中盤では、物語のテーマにかけて、自身における「友達」の定義をそれぞれ発表。「自分を写す鏡みたいなもの」(生田)、「友達と思って付き合ってない人」(瑛太)、「一緒にいたいと思う人」(夏帆)と、それぞれが悩みながら答える中、「ケーキをきちんと半分こに出来る人。マネージャーさんはいつも気を使って私の分をちょっと多くしてくれるので(笑)」と山本が回答すると、「その答え、可愛い~!(笑)」とキャスト陣が山本をいじる場面も。一方、「若い時に比べて歳を取ると、細かいことが気になくなる」という佐藤が「歳を取ると簡単なもの」と答えると、瀬々監督は「僕は浩市さんと逆かな。今は歳取って、飲み仲間とか仕事仲間くらいしかいない(笑)」と反論。「劇中には、若い頃学生の時にあったような、そんなかけがえのない純粋な友情関係を、益田と鈴木で描きたかった。僕は友達はもういないので(笑)」と続けた。

最後に、本作での生田と瑛太を称賛した監督は、次に二人を起用するなら「二人の立場を反対にして、例えば生田さんが死刑囚で、それを看取る刑務官を瑛太さんに演じてもらいたいな。僕が好きなショーンペンの『デッドマン・ウォーキング』みたいに。」と意欲を見せるも、双方から「監督、本当にありがたいんですけど、もうちょっとポップなものを今度はやりたいねって二人で話していたので、ポップな作品でお願いします!(笑)」と懇願され、会場は笑いに包まれた。