ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018:本年度オフシアター・コンペ部門グランプリ、ついに発表!西口洸監督『EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)』が受賞
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018のクロージング・セレモニーが行われ、注目のファンタスティック・オフシアター・コンペ部門グランプリほか各賞が発表され、壇上ではそれぞれの作品の監督達が授賞の喜びを語りました。そのほかスティーブン・オカザキ監督、三船力也氏(コンサルティング・プロデューサー)登壇の招待作品『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』舞台挨拶や、本映画祭恒例のゲストが一同に介する雪上フォトセッションも実施!
<招待作品:『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』舞台挨拶>
3月18日(日) 13:30頃~ 会場:合宿の宿ひまわり 体育館
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スティーブン・スピルバーグやマーティン・スコセッシなど世界の巨匠に愛された唯一無二のサムライ俳優・三船敏郎。2016年にはハリウッド殿堂入りを果たすなど、今も世界中のファンの心を惹きつけ離さない“世界のミフネ”の波乱に満ちた生涯と映画人生に迫るドキュメンタリー映画『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』の上映後舞台挨拶が行われ、スティーブン・オカザキ監督とプロデューサーの三船力也が登壇。まずは今回の映画化にあたり、どうしても実現したかったことを問われると、監督は「本作は三船本人の話だけではなく、周辺にいる人々の物語や、60年代の時代のことを描きたい思いがありました」と振り返りつつ、「このプロジェクトによって三船がいかに偉大だったかということを、今一度思い出してほしいと思っています」と力強く観客に語り掛けた。本作では、三船と親交の深かった国内外の映画関係者にインタビューによって、三船の波乱万丈な人生を紐解いている。中でも興味深かったインタビューが、香川京子だったという。「黒沢三船だけではなく、色々な映画監督と仕事をされていて、この時代の生き証人だと思っています。温かい心を持つ素晴らしい方ですよ」。さらに「もう一人挙げるとすると、殺陣師の宇仁貫三さんですね。『俺が一番、三船に殺されてるんだよ。一作品五回くらい殺されたこともある』と話されていて。なぜかというと、私の死にざまがすごく良いから、もう一回生き返って回って殺されに来てくれ、とリクエストされたという話もしてくれましたね」と撮影当時の秘話も飛び出した。
またイベントでは、MCから“三船映画”の中で、最も好きな作品について問われると、「もちろん黒澤監督の作品が好きですが、実は一番好きな作品は、稲垣浩監督の『宮本武蔵』三部作ですね。(三船が出演するほかの作品とは)一味違っていて好きな映画です」(監)、「監督と同じく『宮本武蔵』シリーズも好きですが、個人的に人におすすめするのは『用心棒』ですね」(力也)とそれぞれ語った。さらに力也氏は、「小学生の頃、たまたま担任の先生が映画ファンで。道徳の授業で『七人の侍』をみんなで観ることがあったりして。見終えたあとは、周りがみんな侍ごっこを始めたりすることもありましたね」と明かす場面もあり、観客からは驚きの声があがるなど、知られざるエピソードの数々に、会場に集まった観客たちは驚いた様子だった。
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<メロン熊も登場!雪上フォトセッション>3月18日(日)12:00~ 会場:合宿の宿ひまわり前
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毎年恒例の雪上フォトセッションが、今年も合宿の宿ひまわり前にて実施。審査員長の瀬々敬久をはじめ、入江悠監督、大森立嗣監督など豪華審査員の面々が大集結!またメロン熊などゆるキャラたちも勢揃いし、快晴の中大盛り上がりのフォトセッションとなった。
【参加者】
■オフシアター・コンペティション部門/審査員
瀬々敬久(監督)、キム・ボンソク(監督)、入江悠(監督)、瀧内公美(女優)、アレックス・ツァ―ルテン(映画研究家)
■インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門/審査員
大森立嗣(監督)、イシグロキョウヘイ(アニメーション監督)、秦俊子(アニメーション監督) ほか
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<クロージング・セレモニー>
3月18日(日)15:30~ 会場:合宿の宿ひまわり 体育館
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ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018も残すところあと1日となった3月18日(日)、クロージング・セレモニーが開催され、本映画祭のメインともいえる、各部門の授賞式が行われた。喜びに沸きかえる監督らに会場からはあたたかい拍手が送られ、笑いあり感動ありの閉会式となった。セレモニーの最後には、本映画祭プロデューサーの深津修一が「2020年は本映画祭三十回目となる年です。三十回目に向け、本映画祭にとって、今後の新たなあり方を提案していきたいと思っております!」と熱い言葉を述べ閉会が宣言された。授賞作は以下の通り。
【ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門】
グランプリ『EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)』 監督:西口洸(にしぐちひかる)
見事グランプリを獲得したのは、西口洸監督の『EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)』。作品は母親の裸をみて勃起したことが原因で、ED(勃起不全)になってしまった少年の性春映画で、笑って泣ける爽やかな映画になっている。西口監督にはトロフィーの授与とともに、副賞として次回作支援金200万円が贈られた。
———————————–<監督授賞コメント>————————————-
「まさかグランプリをもらえるとは思っていなかったですし、作品を観ていただいたお客さんの中からは『え?』と言われてしまうこともあったので(笑)、驚きましたが本当に嬉しいです。ありがとうございました!」
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・審査員特別賞 『温泉しかばね芸者』 監督:鳴瀬聖人(なるせきよと)
・北海道知事賞 『キュクロプス』 監督:大庭功睦(おおばのりちか)
・シネガー・アワード(批評家賞)『キュクロプス』 監督:大庭功睦(おおばのりちか)
≪審査委員長 瀬々敬久 コメント≫
グランプリを選ぶにあたり、審査員たちの中で残した作品が、『温泉しかばね芸者』、『キュクロプス』、『あるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)』、『スロータージャップ』の4本でした。『温泉しかばね芸者』は、映画を作る映画で、虚と現実が入り乱れていて、最後はどちらかよくわからない作品になっていて、エモーションが掻き立てられる作品になっていたのではないかと思います。『EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)』は、自分の世界に近いところを描いているにも関わらず、独特でセンス切り口で人間を描いているところがよかったと思います。今回は、自分に向き合っているような描き方をしている『EDあるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)』をグランプリとして選びました。今回映画祭に来てとても印象的だったのは、『スロータージャップ』の阪元監督たちが、『僕は映画を変えます!』と言っていました。僕も18歳の時、映画がいいなと思ったのは、若い監督が今までの撮影規制システムを壊して、飛び越えていく世界にすごく憧れたことを覚えています。ですが、果たして映画が変わったかというと、そうではないと思います。だからこそ、変えたいという気持ちが非常に大切だと思いますので、ここにいるみなさんには映画に立ち向かってもらえたらと思います。
【インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門】
グランプリ『ぱん。』 監督:阪元裕吾(さかもとゆうご)、辻凪子(つじなぎこ)
・優秀芸術賞①『NO LINE』監督:川中陸(かわなかりく)
・優秀芸術賞②『父の日』監督:マット・ジョンズ
・優秀芸術賞③『Black Dog』監督:ジョシュア・ディーン・タットヒル
【アニメーション企画コンペティション】
・アニメーション企画優秀賞 「ドントクライ」
・スポンサー特別賞「アスファルトにも咲き誇る花」
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≪深津修一プロデューサー コメント≫
今回は会場を合宿の宿ひまわり一ヶ所にして、3スクリーンにしました。一部では縮小傾向ではあるのでは、というご指摘やご心配をいただきました。実はそれには意図があり、今年初めて札幌で同じ期間中にサテライト上映会というものを実施しました。札幌の方にも広く本映画祭を知っていただきたい、という想いがあり、より発展的な映画祭をやっていきたい、という強い意志です。そして、実は今回、テレビスポットも初めて行いました。本映画祭は、2020年が三十回目の年になります。三十回目に向け、本映画祭にとって、今後の新たなあり方を提案していきたいと思っております。来年も違った要素を取り入れて実施していければと思いますので、来年も必ず来てください!
■囲み取材■
≪西口洸 コメント、囲み取材での様子≫
「グランプリを獲得したことは驚きと嬉しさもあるんですけど、僕自身が学生時代、影の方というか、イケてないグループにいたので、僕自身の体験も含めた作品で、そんなの作品でグランプリを獲れて、イケてるやつらをおもんないなと陰で言う僕を含めた親しい友人たちが映画の主人公やと語りながら、麻雀とかしていたので、グランプリを獲れて、すごい喜んでしまったんですけど、確かに嬉しいんですけど、僕が受け取るんか…みたいに思うんですけど、いざ返上するんかってなったらそれは嫌だっていう、優柔不断な僕が主人公らしいなと思いつつ、本当にうれしいなと思います」とコメント。記者から今回の受賞をプレッシャーに感じますかと問われると、「プレッシャーに感じるというか、陰からイケてるグル-プをやいやい言うてた自分が、いざこういうイケてる賞をもらうと、自分の中の価値観がおかしくなりそうというか、実際うれしんですけど、それを羨ましがっている僕のほうが好きだったなと思い、恥ずかしいです」と照れながらも、真摯に答えていた。
≪審査委員長 瀬々敬久監督 コメント、囲み取材での様子≫
「独特のセンスの持ち主だと思いました。ファーストカットが海を撮っていて、そこから海女のお母さんがにょきっと出てくるところから始まるんですけど、そのシーンの間が素晴らしいというか、とても海女さんが出てくるとは思えないところから出てくるんですね。その次のカットは、海辺で高校生2人が座っている背中の引きのショットで、普通寄りとか撮影すると思うんだけど、全く撮らずに背中で続けていくという独特のセンスがあって、それがおかしさと繋がっていくというか、今まで僕たちが見たことのないようなカッティングと演出が続いていくのは、非常に興味深かったなと。全く新しい映画の誕生だなと思いました。また作品から弱者に対する優しい目線をすごく感じました。それは西口君独特なものだなと、笑いとペーソスの中で描いているという、押しつけがましさはなく雰囲気の中で優しさを伝えていくのはいいなと思ったし、沢山の人から支持されていく映画だと思ったのが選んだ理由です」とグランプリの選定理由を語り、ちょっとぼーっとしたキャラクターの若手監督を前に、瀬々監督は続けて、「西口君本人に関しては、ちょっと頼りなさそうなところがあるので、やや心配しているんですが、監督はキャラクターなので、そのキャラクターを活かして、西口君らしいやり方で西口君らしい作品を撮っていってくれたらと思います。次回にも期待しています。」とエールを送っていた。