左から、大力拓哉監督・三浦崇志監督・林勇気さん

12/16、大阪市西区のシネ・ヌーヴォで大力拓哉監督・三浦崇志監督の『ニコトコ島』(’08)、『石と歌とぺタ』(’12)の公開が始まった。3人の男がどことも知れない地を遊びながら延々歩いていく。次々現れる観たこともない壮大な景色、手のひらから宇宙規模間で広がる法螺話に思わずにんまりの唯一無二の映像体験が出来る不思議な作品だ。

『ニコトコ島』は「イメージフォーラム・フェスティバル2009」で大賞を受賞、第62回ロカルノ国際映画祭にも招待され、『石と歌とぺタ』はローマ国際映画祭の招待作品として「CINEMAXXI」コンペティション部門で上映されるなど、世界の映画祭で評価されて来たが、日本では一般の観客に向けて初めて劇場公開となった。10月の東京のシアターイメージフォーラムを皮切りにシネ・ヌーヴォは12/16~1/5まで、名古屋シネマテークは12/21~23、神戸映画資料館では1/12~16の公開となる。

シネ・ヌーヴォでは初日から日替わりゲストトークに林勇気さん(映像作家・美術家)、西尾 孔志さん(映画監督)、小田 香さん(映画監督)、松田 圭輔さん(両作品に出演)、櫻井篤史さん(映像作家・Lumen galleryディレクター)らが登場。
今回は初日の林勇気さんとのトークを紹介したい。

 

映画の中で自由になるために

大阪市西区江之子島にある大阪府立江之子島文化芸術創造センターのイベントで知り合った林さん。大力・三浦コンビの作品はほとんど観ていて、元々ロードムービーが好きという。
「この二本の作品を通してみた時に、生と死が揺らいでいるような世界の中で3人が あてもなく移動して行くのがすごく印象的だなと思いました。普通のロードムービーではなく生と死、現実と現実じゃない世界の中を揺らぎながら旅をしていて、その中で3人の遊戯性、悪ふざけてるように見えながら、途中から宗教的な儀式みたいなものに見えてきたり。会話や映像の内容からも生と死が象徴される作品だなと思って観ていました」
今回『ニコトコ島』と『石と歌とぺタ』を劇場公開作品として選んだ訳について大力監督は、
「この二つの作品の間には『コロ石』という作品があってそれまではずっとモノクロでやっていたんです。今回初めて劇場で公開するので、白黒の代表的な作品とカラーの一番最初の作品をやってみようと、この二本になりました」

林「他の存在が一切映らないため3人が霊的な存在にも見えました」

大力「なるべく映画の中で自由にやりたいなと思っていて、どういう状況でも作るために、死んでることにすれば何でもありって訳じゃないですけど、そういう風になるかなと」
『ニコトコ島』の前にCO2の助成作品として制作した『僕たちは死んでしまった』は登場人物全員が死んだところからストーリーが展開する。
「山の中やあまり人の来ないところで撮っていました。外部の人間が入らない方がやりたいことに近い雰囲気になるなと思って。ノイズになるものをあまり入れないようにしています」

三浦「最近でも人は撮らないようにしてます。『石と歌とぺタ』の方は色々入ってるんですけども、特に『ニコトコ島』の時期は人工物や車とか避けて撮っているという感じで」

2人は毎回新しい作品で違うことをしたいと思っていると語る。
大力「『ニコトコ島』はほぼ最後の辺のカットを除いてカメラが全部固定されているんですけど、『石と歌とぺタ』はカメラを固定するだけじゃなくて手で持ったりして撮っているところが違うと思います」

林「『石と歌とぺタ』の方はカメラの存在を凄く意識させられたんですけど、走って来てカメラを掴んで撮影するシーンなどでは、世界を捉えているカメラ以上の何かに見えたり。音の使い方や映像と音の距離が近付いたり離れたりするのは意識されているんですか?」

大力・三浦・松田トリオで撮影に臨むため、録音するスタッフがおらずセリフをアフレコにしたという。

大力「あんまり画に馴染んだアフレコではなく、ナレーションみたいなアフレコの方が質感として面白いかなと。めっちゃ遠くに居るのにめっちゃ近い声が聞こえて来るような。はめ込んでみたら、“観たことないなぁこんなん”って。面白いなと思って使いました」

林「ヴェンダースの『ベルリン・天使の詩』のように、実際の会話とは違う層で三人が会話しているような音の使い方に思えました」

 

その場で捉えていく景色とパフォーマンス

話題は一度観ると忘れられない景色を得たロケ地について。
三浦「ロケ地は特にあらかじめ調べたりする事はなくて、とりあえず3人で車でうろうろしながらいい場所を探しつつ撮影してます。

いい場所選びの決め手はあくまで感覚だという。
大力「どっちかが運転していて どっちかが外を見ていて面白そうな景色があればストップして」

ストーリーはあらかじめ書くことがないという。
三浦「撮っている時点では何もないですね(笑)」

大力「『ニコトコ島』まではまだ話や流れを考えてから行ってたんですけど、その場で面白いと思ったものが撮れないのが、もったいなくて、段々その場で面白いと思ったものをそのまま撮って使うようになって来てます」

三浦「ストーリー上の決めたセリフとか、場面ありきだと場所探しが楽しくなくて。二人とも撮影が一番好きなので」

『ニコトコ島』では、知人の経営する安く泊まれる施設が九州にあり、いい景色を求めて旅に出た。足りない風景は奈良で追撮したという。
『石と歌とペタ』は瀬戸内海の小さい島に行ったり、大きい岩は和歌山、走り回る赤い森はフランスで撮った。パリのポンピドゥ・センターで『コロ石』が上映される際に3人で長めに滞在して、車で移動しつつ撮影したという。ゴッホの墓が近くにあったというエピソードも。

林「間に車のシークエンスが入るんですけど、車の中だけの出来事なのか、車で移動してるのかもすごい曖昧で
車が宇宙船みたいに見えて来てかっこいいなと思っていました。
そして、要所要所で3人がなんとかごっこみたいなことをして、ダンスにもパフォーマンスにも宗教的な儀式にも、遊んでいるだけにも見えるシーンがありますが、あれは何という行為なんですか」

大力「いい場所があると割と長い間そこにいるんですよ。何を撮るというわけでもなく、ただ喋ったりとか。松田くんにちょっとなんかしてとか言って、それが面白かったらそれやろうとか。連鎖反応で思いついてやるみたいな」

三浦「使えるかどうかわからないんですけど、例えば向こうがカメラを持っていたら、今撮っているかなと思ってちょっと動いてみたり」

林「パフォーマンス的要素もあるんですね。動きも魅力の1つだなと思って見ていたんですけど、編集の段階でプラモデルを作るように映画が立ち上がっていくという感じですか」

三浦「そうですね。キャラクターも作りながら考えて行って」

林「フランスの森のカットが入っていたというのも衝撃的だったんですけども、場所性を無視して編集したら繋がっているというのは映画的だなと思いました(笑)」

生と死、無意識の意識

林「『石と歌とペタ』の最後のシーンで照明で表情が変わっていくのも凄く生と死を感じると思いました」

三浦「みんなで爆笑しながら撮ってました(笑)」

大力「ライトを撮影するのに2個持っていったら、微妙に間隔がずれて光るので、バッチリ合った時にああいう感じになりました。撮っていた時は生と死とかは考えてなかったです(笑)」

三浦「でも無意識に出ていたかもしれないですね(笑)」

大力「あのカットを選んで使っているという事は、何かしらいいなと思うところがあったのかなと思います」

林「作り方がよく分からない映画だと思ったので、プロセスやどういうことを考えて作っているのかに触れることが出来て楽しかったです。脚本を書いてるようにも見えるし、ちゃんとロケ地を調べてこういう流れで撮って行こうという風にも見えたりするんですけど、どこまで演じているのかとか、演じずにドキュメンタリー的な要素があるのか、色んな所を揺らいでる作品だなと思いました。映画館で観ると更に凄いですね。今後もご成功をお祈りしております」

シネ・ヌーヴォではシネ・ヌーヴォXに移って1/5までの上映(12/30~1/1は休館)。名古屋シネマテークは12/21~23、神戸映画資料館では1/12~16の期間限定となるためお見逃しなく!

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