映画『関ヶ原』原田眞人監督&大場泰正登壇、ティーチインイベント
8月26日に公開され、国内映画ランキング初登場第 1 位の大ヒットスタートを切ったV6・岡田准一主演の映画『関ヶ原』。公開約2か月を迎えようとする現在も、歴史好きやリピーターら老若男女幅広い層に支持を受けて“鬼ヒット”継続中だ。10月12日には東京・新宿バルト9にて、劇中で大谷刑部を演じた俳優の大場泰正と原田真人監督がティーチインイベントを行い、観客との質疑応答を楽しんだ。
台湾での公開とハワイ国際映画祭への出品も決定したことから「この映画にとっての第2章が始まる」とさらなるロングランを期待する原田監督は、本作のリズムを“起承転結”ではなく“序破急”と表し「三条河原の処刑場で三成(岡田准一)と初芽(有村架純)が出会うシーンまでが序であり、その序の中にも細かい序破急がある。さらに合戦上で島左近たちが戦に敗れ山となって死ぬ場面のアングルは、冒頭に出てきた五百羅漢を映したアングルとまったく同じ。最初に始まったことで終わるという構成を意識した」と“原田タッチ”を自ら解説。
セリフもあえて聞き取りづらくしたといい「薩摩勢の声が聞き取れないという意見があったが、何を言っているのかわからない奴らが来たという状況を表したつもり。聞き取らせようとあえて編集で音を工夫したのは一か所だけ。三成が陣地に戻ってきたときに左近の息子・信勝に対して“左近に会っていけ”と言った部分。演出面でも大河ドラマだったら光成が馬から降りて長々と話をするだろうけれど、これは映画ですから。あえてスピーディーにしました」とこだわりを紹介した。
原田監督から「大谷刑部をやるのならば大場泰正しかない。端正な佇まいがいい」と太鼓判を押された大場は「アップに耐えられる顔の傷の特殊メイクには1時間くらいかかりましたが、リアルに作ることで観客の皆さんに戦国時代の世界に入ってもらえる。それに“体のせいで戦いたいけれど戦えない”という心理的バックグラウンドを表すためにも傷のインパクトは大きかった。ストーリーだけでなく、ワンカットの中でいかに多くを語るか。特殊メイクはその武器になった。あの特殊メイクがなければ、大谷刑部を演じきれなかったと思う」と熱演の舞台裏を振り返った。
本作の特殊メイクで一番時間がかかったのは、滝藤賢一が演じた豊臣秀吉。原田監督は「5時間くらいかかったが、滝藤は愛知出身で秀吉に対する思い入れも深かった。秀吉についてはその顔に見合う俳優が今まで演じてこなかったという思いがあったが、滝藤は見事に老人のいやらしさを醸し出してくれた」と感服。改めて「俳優の顔も歴史的建造物ばかりのロケ地もそうだが、すべては映画の世界に浸ってくれればいいと思って用意したものばかり。だからセリフが聞き取れなくても問題ないんです」と強調した。
最後に大場は「この映画は色々な人に見てもらい、語られるべき映画。自分自身、日本映画史の中で本作がどのように語られていくのかを見守りたいし、この作品の魅力を改めて発見していきたい」と思い入れたっぷり。原田監督も「この作品は『アラビアのロレンス』のデヴィッド・リーン監督や『七人の侍』の黒澤明監督などが作ったエピックにどれだけ近づくことができるかを意識した」と狙いを明かし「今の時点で感動してくれなくても問題ない。5年後、10年後にどう感想が変わっているのかが重要。我々が『関ヶ原』で作り上げた世界観は30年経っても損なわれるものではないだろうし、観客がこの作品にいかに近づいてくれるか。末永くこの映画と付き合ってほしい。それがクラシックの価値ですから」とメッセージと送った。