早見和真の同名小説を新鋭・廣原暁監督が映画化した青春ロードムービー『ポンチョに夜明けの風はらませて』が、10/28(土)より公開となります。将来に希望を見出せないまま、ただ何となく日々を過ごしていた高校生たち。彼らの行くあてもない“高校最後の旅”を描く青春ロードムービーです。廣原監督のもとに太賀、中村蒼、矢本悠馬、染谷将太、佐津川愛美、阿部純子ら若手実力派俳優が集結しました。この度公開に先駆けて、書店イベントを実施し、主演の太賀と、原作の早見和真が登壇。「原作」とは呼べないほどに大胆な脚色に、一部で話題の本作について、「原作にテーマが10個あるとしたら、その中の1つを輝かせるために頑張ってくれた。僕の書いた又八は、太賀の又八で間違いないし、いい意味でヘンテコで、そこに高校生4人が宿っているいい映画」と原作者が太鼓判を押しました!

『ポンチョに夜明けの風はらませて』書店イベント
■日時:10月11日(水)19:30~20:00
■場所:HMV&BOOKS TOKYO 6Fイベントスペース(渋谷区神南1-21-3 渋谷モディ6F)
■登壇者:太賀(24歳)、早見和真(40歳)

——「ひゃくはち」に続いてのタッグですね。
太賀:早見さんとは2008年に出演させて頂いた「ひゃくはち」以来です。

早見:高校野球を舞台にした「ひゃくはち」というデビュー作をいきなり映画にして頂いた。主役級以外の子たちは遠い存在だったけど、太賀くんはすごく印象に残ってた。1シーン、2シーンくらいのセリフなのに、すごく鮮烈に覚えてる。この子はきっと売れるんだろうなと、思ってました。実は「ひゃくはち」は、太賀主演説もあったんだよね。

太賀:それを聞いて斎藤(嘉樹)君はどんな気持ちでいるんだろう…

早見:斎藤だからいいかなって(笑)

太賀:なんで俺にしてくれなかったんですか! と、そこはぐっとこらえて素直に嬉しいです(笑)

——本作の原作「ポンチョに夜明けの風はらませて」を書かれたきっかけは?
早見:僕の小説としての原体験は「ひゃくはち」です。でも、「いつまでもこのテーマではやれないな」と思ってました。だからこそちゃんと清算したい、どこかできちんと閉じたいと思っていた。だから、「ひゃくはち」と同じ、男の子4人の物語を書きたかった。主演は太賀君と聞いてめちゃくちゃ嬉しかった。プロデューサーは現役の高校生ではない俳優でのキャスティングに不安があったみたいですが、僕は全然信頼していた。映画の感想として「おっさんが高校生を演じてる」という人もいるらしいけど、僕にはちゃんと高校生に見える。そこに太賀君の魅力がある。高校生も30代の役もこなせる、面白い役者だと思う。
ところで実際どういう経緯でこの話を受けたの?

太賀:撮影の1年くらい前にプロデューサーから脚本をもらいました。勉強不足で廣原監督のことは知らなかったのですが、原作が早見さんで、プロデューサーが「ひゃくはち」の永井さんということで即決で出たい!と。高校生役についての抵抗や気負いは正直なかったですね。脚本を読んで、素直に又八という役に対して眩しい、魅力的だなと思いました。

早見:ところで、俺のこと苦手だよね?

太賀:恐れず言うと…怖い(笑)。隠してるわけではないのに自分の未熟さがバレるというか。眼差しの鋭さに足がすくみます。

早見:何度か飲んだんだけど、屈託なくないんですよね(笑)もう一人、共通の知り合いに石井裕也監督もいるんですが、石井さんも苦手だよね(笑)?

太賀:苦手とかじゃなくて!生半可なことは言えないな、と。リスペクトしている分、中途半端な自分で居られない。今日のトークも一ヶ月前から震えてたんですよ。プロデューサーからも「早見さんは、鋭く来るよ」と言われてたし…(笑)

早見:僕は本当に太賀ファン。僕は素人だし偉そうに言えないけど、着実に進んでる。同世代の役者が脚光を浴びていくことをどう見ているんだろうと思ってた。染谷くんとか同級生だけどどう?

太賀:将太は高校の同級生だし、その中では一番最初に日の目を浴びた存在。すごく羨ましくも、悔しくもあった。今は、比べてもしょうがない。どうあがいても彼にはなれないし、と思うんですが。彼、彼らに対してではなく、「演じる役」に対して僕は嫉妬していたんだと思います。でもそれは彼らだから演じられた。そういう大事なことを見逃していたんじゃないかなと。役の巡り合わせとか、それは縁なんじゃいかなと、どしっと構えられるようになりました。

早見:太賀君の出演作品を観すぎて、もうしばらく観たくないと思いましたが、観ながら書いたメモに「10時間見てられる」とあった。それが太賀の特性じゃないかなって。実際に10時間観たら嫌になるだろうけど(笑)

——完成した「ポンチョに夜明けの風はらませて」を観た感想は?
太賀:僕はめちゃくちゃホッとしました。又八という主人公は周りが全然見えてなくて、目の前のことを楽しむことをテーマにアプローチした。客観性とかをまったく考えてなかったので、怖くて仕方なかった。でも、映画を見てその役割をしっかり監督が拾ってくれてました。それがホッとしたという一番の理由です。

早見:原作者としてもホッとした。製作陣はしきりに気にするんですが、全然原作と違うんですよ(笑)。なんですけど、みんなが思うほど違うと思ってない。決定稿までに、もっともっと違う、迷走した脚本を山ほど読んできた。監督の苦しみの過程をずっと見てきたし、最後に原作にすがってくれたのが見て取れた。原作にテーマが10個あるとしたら、その中の1つを輝かせるために頑張ってくれた。だから、原作読んで全然違うと思われるかもしれませんが、原作者としては全然そんなことは思ってない。僕の書いた又八は、太賀の又八で間違いないし、いい意味でヘンテコで、そこに高校生4人が宿っているいい映画。ぜひ見て欲しいなって思います。

太賀:今回撮影に入るにあたって、原作を読まずにやらせてもらいました。それは自分なりの決意表明で、又八という役を読んだ時に守りに入りたくなかったんです。持ち合わせたすべてでぶち当たりたかった。主人公を演じることはそこまで多くはないので、ひとつの正念場だと感じて臨みました。映画ができあがって原作を読みましたが、びっくりするくらい話し違って、「こんなに違うんだ!?」と(笑)。早見さんがおっしゃってたように原作と映画は別物でもあるけど、どちらも「ポンチョに夜明けの風はらませて」である、と。

早見:中村(蒼)くんとも「ひゃくはち」以来だし、10年前に出会って今回で一つの結晶になってる。またやろうね。今度は高校生以外で(笑)

太賀:ありがとうございます!