リューベン・オストルンド監督

それでは、長編コンペティション部門の受賞作と受賞コメントをかいつまんで紹介!

●最高賞のパルムドールに輝き、喜びを爆発させた『ザ・スクエア』のリューベン・オストルンド監督!

〈カンヌ国際映画祭便り6〉で既にお伝えした通り、映画祭前半の20日(金)に正式上映された『ザ・スクエア』(スウェーデン・デンマーク・アメリカ・フランス合作)は、スウェーデンの異彩監督リューベン・オストルンドによる辛辣なドラマで、現代アートのみならず、メディアや個人主義までも俎上にのせて皮肉った快作だ。

授賞式で名前を告げられた途端、ガッツポーズをとったリューベン・オストルンド監督は、登壇するや審査員たちに何度も投げキッスをした後、体全体で喜びを爆発させながら堂々たるスピーチを開始。編集者に“猿の演技が過剰だ”とダメ出しされたエピソードなどを表情豊かに披露しながらスタッフ全員と家族(実の娘であるアルバとヒルダの2人も映画に出演)に謝意を伝え、最後は客席を巻き込んでの絶叫パフォーマンス“幸せの叫び”(スウェーデンでは授賞式などで時折行われる慣習だそう)のキュー出しをして、拳を振り上げた。

今年、4本の出演作が映画祭で上映された売れっ子女優ニコール・キッドマンが、70回記念名誉賞を受賞!

過去にも映画のキャストとして、審査員として何度もカンヌ入りしてきた人気女優ニコール・キッドマン。今年は、コンペ部門に選出された2作『ザ・キリング・オブ・セイクリッド・ディア』『ザ・ビガイルド』の他、特別招待作品部門に出品されたジョン・キャメロン・ミッチェル監督の『ハウ・トゥ・トーク・トゥ・ザ・ガールズ・アット・パーティーズ』、70回記念イベントで上映されたジェーン・カンピオン監督のTVドラマ『トップ・オブ・ザ・レイク チャイナ・ガール』と、何と4本もの出演作が映画祭上映されるという快挙を成し遂げた彼女に対して敬意が表され、“第70回記念名誉賞”が贈られた。

授賞式では、帰国してテネシー州で家族と過ごしているニコール・キッドマンから届いた謝意を伝えるビデオ・メッセージがスクリーンに映し出された後、プレゼンターのウィル・スミス審査員が「ニコールがいないから、僕が記念撮影に応じるよ」と軽口し、居並ぶカメラマンに向かってポーズをとり、笑いを誘った。

●次点のグランプリはフランスの俊英監督ロバン・カンピヨの『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』が受賞!

ロバン・カンピヨ監督

エイズ啓発グループの若き活動家たちの姿を鮮烈に描き、グランプリを受賞した群像劇『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』の正式上映日は、偶然にも『ザ・スクエア』と同日の20日(金)だった。授賞式に登壇するや、客席の観客のみならず審査員たちからもスタンディングオベーションを贈られたロバン・カンピヨ監督は、「ありがとう! 感無量です。この映画は共同作業の賜物です。大勢の人々が関わって作るほど、作品は賢く、美しく、力強くなります。この映画祭にはとても感動しました」と述べ、手を貸してくれた監督仲間のジル・マルシャンとローラン・カンテ、共同脚本家、エイズ啓発グループ“レストラード”の活動家の友人らの名前を上げて謝意を伝えた後、「この映画はエイズで他界した方々だけでなく、今でも病いと闘う人々、社会的に困難な状況下で治療している人々に捧げる作品です」と力強く述べて締めくくった。

●監督賞は、2度目のコンペ参戦作『ザ・ビガイルド』でアメリカのソフィア・コッポラ監督が受賞

ニコール・キッドマンとソフィア・コッポラ監督(5/24の公式記者会見時)

24日(水)が正式上映日だった『ザ・ビガイルド』のソフィア・コッポラ監督は残念ながら授賞式を欠席。今回の受賞に寄せてソフィア・コッポラ監督がしたためた手紙の文面(審査員&映画祭関係者、スタッフ&キャスト、配給会社への感謝の意、そして脚本家・監督としてのスキルを伝授し、映画への愛を教えてくれた父親のフランシス・フォード・コッポラに対するお礼、母親と夫への謝意、さらには女性監督のお手本的存在だとしてジェーン・カンピオン監督に敬意を表明)をマーレン・アデ審査員が読み上げた。

 

 

 

 

リン・ラムジー監督とホアキン・フェニックス

●『ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア』が男優賞(ホアキン・フェニックス)と脚本賞(リン・ラムジー)をダブル受賞!

コンペ出品作の掉尾を飾り、27日(土)に正式上映された『ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア』が、男優賞と脚本賞の2賞を獲得した。男優賞を受賞したホアキン・フェニックスは、隣席に座っていた恋人の女優ルーニー・マーラに促されて登壇したものの、まごついた表情で「全く予想予期してませんでした。こんなクツ(タキシード姿ながら足元はスニーカー!)で申し訳ありません。革靴はもう航空便で家に送ってしまったんです。驚きのあまり言葉が出ません…。素晴らしい賞をありがとう!」とコメント。そして感謝したい人々の名前を挙げた後、「この映画は監督のリン・ラムジーとの絆の上に成り立っています。この賞も大好きな監督である彼女と分け合います」と言葉を結び、盛大な拍手を浴びた。

一方、脚本賞を受賞したリン・ラムジー監督は興奮気味に登壇し、感激の面持ちで「先週にミキシングをし、5日前に映画が完成したばかり。なので、今日、受賞できたことに驚いてます」とコメントし、審査員団、プロデューサーやスタッフ、そしてホアキン・フェニックスに謝意を伝えた。


(Text & Photo:Yoko KIKKA)