快晴の27日(土)。公式記者会見に続けて出席した後、14時からは“ある視点”部門出品作の『ウインド・リバー』を鑑賞。16時からは、エキュメニカル賞および国際批評家連盟賞の発表&授賞式に参加。また、公式部門第2カテゴリーの“ある視点”部門も本日が閉幕日で、ドビュッシー・ホールにて19時15分から行われた授賞式セレモニーを取材した。

◆パレ・デ・フェスティバル内にある“アンバサダー・ホール”でエキュメニカル賞と国際批評家連盟賞が発表!

映画祭ディレクターのティエリー・フレモーを迎えて、エキュメニカル賞(“長編コンペティション部門”を対象にキリスト教関係団体が選出)と国際批評家連盟賞が発表され、授賞作品の関係者が喜びを語った。今回、エキュメニカル賞を受賞した『光』の河瀨直美監督は、2000年に『EUREKA ユリイカ』で受賞した青山真治監督以来、2人目の日本人受賞者となる。

主演の永瀬正敏を伴って授賞式に臨んだ河瀬監督は、「映画は人と人を結び、人種や国境を超えていくもの。映画館の暗闇の中で、映画という“光”と出会うとき、人々は一つになれるのだと思います。このカンヌでも一体感を持てて嬉しかったです。この混沌とした時代に、70年という記念の年に栄えある賞をいただき大変嬉しく思います」とコメントした。

☆エキュメニカル賞受賞結果
●『光』河瀨直美監督

☆国際批評家連盟賞(FIPRESCI)受賞結果
●長編コンペティション部門:『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』ロバン・カンピヨ監督(フランス)
●ある視点部門:『クローズネス』カンタミール・バラゴフ監督(ロシア)
●監督週間&批評家週間部門:監督週間上映作『ザ・ナッシング・ファクトリー』ペドロ・ピンホ監督(ポルトガル)

『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』の出演俳優ナウエル・ペレ・ビスカヤール(中央)
カンタミール・バラゴフ監督
ペドロ・ピンホ監督

◆“ある視点”部門の“最高賞に輝いたのは、イランのモハマド・ラスロフ監督の『ア・マン・オブ・インテグリティ』

モハマド・ラスロフ監督

今回、全18作品中7本の初監督作が並んだ“ある視点”部門のアワード・セレモニーが、映画祭ディレクターのティエリー・フレモーの司会によりドビュッシー・ホールで催された。今年、この部門の審査員を務めたのは、アメリカの女優ユマ・サーマン(委員長)、ベルギーの監督ヨアヒム・ラフォス、フランスの男優レダ・カティブ、エジプトの監督モハメド・ディアブら総勢5名。

最高賞の“ある視点賞”に輝いたのは、イランの反骨の映画作家モハマド・ラスロフ監督の第7長編で、女性を主人公に据えた人間ドラマ『ア・マン・オブ・インテグリティ』。審査員賞は、2015年の『或る終焉』でコンペ部門の脚本賞を獲得したメキシコの俊英監督ミシェル・フランコの特異な母と娘の物語『エイプリルズ・ドーターズ』が受賞した。

監督賞のテイラー・シェリダンは、俳優・脚本家としても知られる才人で、ジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンを起用した監督デビュー作の『ウインド・リバー』は、先住民居留地が舞台のクライム・サスペンス。授賞式にはアメリカの大手独立系映画会社ワインスタインのハーヴェイ・ワインスタイン社長が代理で登壇。

女優賞は、イタリアの名優セルジオ・カステリットが監督した『ラッキー』で、奮闘するシングルマザーを熱演したジャスミン・トリンカが獲得。そしてフランスの人気俳優マチュー・アマルリックが監督&共同脚本&主演(女性歌手バルバラの伝記映画を作ろうとする映画監督役)した『バルバラ』がポエティック・ナラティヴ賞を受賞。残念ながら、黒沢清監督の『散歩する侵略者』は賞には絡まなかった。

☆“ある視点”部門受賞結果
●ある視点賞
『ア・マン・オブ・インテグリティ』モハマド・ラスロフ監督(イラン)
●審査員賞
『エイプリルズ・ドーターズ』ミシェル・フランコ監督(メキシコ)
●監督賞
『ウインド・リバー』テイラー・シェリダン監督(アメリカ)
●女優賞
ジャスミン・トリンカ『ラッキー』(イタリア/セルジオ・カステリット監督作)
●ポエティック・ナラティヴ賞
『バルバラ』マチュー・アマルリック監督

(Text & Photo:Yoko KIKKA)