2017年9月21日(木)渋谷・スペイン坂の「GALLERY X BY PARCO」にて『SR サイタマノラッパー~マイクの細道~』Blu-ray&DVDBOX発売記念スペシャルイベントが行われ、入江監督、SHO-GUNGの三人、そして山本舞香が登場。集まった多くのファンを前に作品のエピソード・トーク、じゃんけん大会、SHO-GUNGのフリースタイル・ラップ等で大いに盛り上がった。

『SR サイタマノラッパー~マイクの細道~』は映画『SR サイタマノラッパー』シリーズの初ドラマ化としてテレビ東京ほかで2017年4月7日から6月23日まで放送された人気作品。この日は、8月23日にリリースされたBlu-ray & DVDBOX を購入した方の中から抽選で選ばれた約60名が集まった。場内ではオフィシャル・グッズ「SHO-GUNGフェイスタオル」の販売も行われた。

まず登壇したのは同作でラップ監修を務める上鈴木兄弟。登場するや、「Say ho!」「ho!」とコール&レスポンス。タカヒロが「いいですね!なんでも言うこと聞いてくれそうなお客さん(笑)」と言うほど、ノリの良い人が集まっていたようだ。続いて、盛大な拍手に迎えられてIKKU役の駒木根隆介、TOM役の水澤紳吾、MIGHTY役の奥野瑛太、トーコ役の山本舞香、監督・脚本の入江悠が登場。自己紹介を挟み、この日参加できなかったカブラギ役の皆川猿時からコメントを預かっているとのことで、駒木根が代読することに。「今から僕が話すことはすべてここに書かれていることなので!」と断りを入れてから読み上げられたそのコメントは、「ジュクジュクジュクッ(スクラッチ音)ワンツー、YO!YO!YO!KIMIKO!(余貴美子)。“ブーンブーン”(トラックを運転するジェスチャーで)皆川猿時こと、MCカブラギ46歳です!カブラギは現在大阪で舞台の本番中なのでそちらに伺えません、非常に残念です。入江監督、SHO-GUNGの3人と久しぶりにディープキスしたかったなぁ」と、最初から“らしい”内容となっていたが、「『SR サイタマノラッパー〜マイクの細道〜』は、カブラギにとっても思い入れのある作品です。もともと映画のファンでしたから、出演が決まったときは素直に嬉しかったです。」と真面目なコメントも。また、出演にあたり長かった髪をバッサリ切りパンチパーマをかけたものの、前の作品の撮影がまだ終わっておらず映像が繋がらなくなり、偉い人に怒られたというエピソードも披露。その場にいないにも関わらず爆笑をかっさらうあたりはさすがだ。

イベントは、プロジェクターにそれぞれが選んだお気に入りシーンを流しながら、ドラマの内容を振り返るトークからスタート。まず駒木根が選んだCLUB CITTA’でのSHO-GUNGとKEN THE 390、R-指定(Creepy Nuts)の邂逅シーンから。台本にはほぼラップが何も書かれておらず、かなりリアルなフリースタイルとなっていたことを告白。水澤が選んだのは、大間のスナックでIKKUとTOMがMIGHTYとラップするシーン。久々に会ったせいか気持ちが入っており「この大間のシーンは妙なテンションでした。変な感情になっちゃいましたね」と感慨深そうに語っていた。このシーンは5回ほど撮ったそうだ。映像の中のラップがMIGHTYの“今日行くぜ余裕”というリリックをきっかけに「教育 金融 ブランニュー」へ入るくだりになると、「キタ!」とお客さんが湧く場面も。奥野はトラックを傷つけてSHO-GUNGがカブラギにキレられる場面をチョイス。「ラップをしていなくて、ちゃんと長くお芝居しているシーンで面白かったです」とのこと。カブラギの激怒ぶり、りんごを思いっきり投げるシーン等にキャスト、お客さん共に笑いが絶えず。「これは新キャラとSHO-GUNGの良いサイファーですよね」と伯周。続いてはトーコ役として『SR サイタマノラッパー』シリーズに初出演となった山本舞香が選んだシーンへ。「おっ!もしかしてこれは?」とキャスト一同が色めき立つ中、映し出されたのは遠野のかっぱ伝説の川で見せたパンチラシーン。「ありがとうございます!」と拝む男性陣に対し、「今までお芝居してきて初めてなんですけど、入江監督が「俺の作品でパンチラしたら出世する」って言われて、「じゃあやります」」と即答したことを告白した。「きっと山本舞香もそのうち朝ドラに出たりするはず」と堂々と予言する入江監督。その入江監督は、大間でのトーコ初登場シーンを選んだ。「ここは、山本舞香さんのクランクインシーンで、まだSHO-GUNGの3人とも馴染んでないと思います。これは結構テイクも重ねていて、良い夕日を狙って、日をまたいで撮影した」という。訛全開で怒涛のまくし立てを見せるトーコのセリフ回しに笑いが起きるが、「この芝居は落語みたいに1人でずっと喋らないといけないから、むずかしいんですよ」とその芝居を賞賛していた。その後IKKUがコケるシーンが映し出されると「さすが名優(笑)!」とキャストが絶賛して場内は爆笑となった。

お客さんから事前に募った質問の中からもいくつかピックアップ。「映画とドラマの撮り方の違いは?」という質問に対し入江監督は「CMがあったり尺が決まっていて1秒たりとも長くできないので、泣く泣く切った分は今回の特典映像に入っています」。長回しのラップシーンは切らざるを得ず、特にカッパを呼び出すシーンは放送上かなりカットされているとのことなので、特典映像で確かめてみてほしい。「CLUB CITTA’のライヴにカブラギとトーコも参加させた理由は?」という質問には、「最初は予定なかったもののチーム感が出てきたから」とのことで、SHO-GUNGだけでなくトーコとカブラギがいて色んなものを吸収して人間的に成長していったことから5人のSHO-GUNGとしてステージに立たせることにしたようだ。初めてラッパーとしてステージに立った舞香は、ラップはできないし歌うのもあまり好きではないため最初は断ったそうだが、結果的にサントラCDに「トーコの帰郷ラップ」が収録されるまでに。「舞香ちゃんはレコーディングのときも勘が良かった」とタカヒロが語ったように、若者ならではのHIPHOPへの元々の親しみがあったようだ。また、上鈴木兄弟は「ラップ監修でリリックを作ったときにカッコイイフレーズだから自分たちでも使おうと思ったことは?」との質問に対し、第1作で「二巡目スタート準備中」というフレーズを最初は「MCハマーになる途中」と書いていたが却下され、その後2人のラップユニットP.O.Pの「中学生日記 feat.BIKKE(TOKYO No.1 SOUL SET)」でキメに使っていることを告白。他にもIKKUの体重、TOMの肌つやがCLUB CITTA’で良く見えた理由など、マニアックな質問に出演者が次々と答え、お客さんは笑いながら興味深そうに聞いていた。そして、一番多かった質問だったという「次回作は?」という声には「それはよく訊かれるんですけど、毎回次は決まっていないんです。今回のドラマも結構前に話があって、急に実現したので」と、未定であることを伝えた。また、「自分の活動の履歴とリンクしているところがあるので、自分に変化がないと作れないところもある。今回CLUB CITTA’にSHO-GUNGが立ったのも、僕が商業的な映画を撮れるようになったことに対する問題意識とか批評が込められているので」と、今作に込められた気持ちを改めて吐露した。

その後、来場者から質問を募ると、『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』を劇場で観たいという声や、「次作があるとしてロケしたい場所は?」「映画3作目で出てきたMIGHTYの彼女はその後どうなったの?」「SHO-GUNGと対峙させたいのは?」(「黒人とラップバトルさせたい」(入江監督))等、作品のファンならではの質問が相次いだ。また、お客さんからこの日プレゼントされたという、水木しげる風のイラストでシリーズの主要キャストが描かれた「SR百鬼夜行図」が紹介され、「クオリティがすごい!!」とキャストから絶賛されていた。イベントは終盤に入り、じゃんけん大会を実施。舞香とじゃんけんで勝った3人にサイン入りポスターがプレゼントされた。そしていよいよエンディングへ…と思いきや、ここでサプライズが。10月13日に20歳の誕生日を迎える舞香に、入江監督と上鈴木兄弟からプレゼントが贈られた。そして、SHO-GUNGの3人からはフリースタイルで誕生日祝いのラップをプレゼント。IKKU、TOM、MIGHTYのマイクリレーで舞香にメッセージを贈り、思わぬ展開に舞香も感激した面持ちだった。最後は1人ひとりが集まったファンに感謝の気持ちを述べた。

「僕も特典映像とかをたまに見て寂しくなったりしているんですけど、良かったらみなさんもたまに観てください。そしてまた会える日を楽しみにしています」(駒木根隆介)

「シリーズを通して「SRクルー」(作品のファンの総称)のみなさんに助けられて、ドラマ化まで進むことができました。SHO-GUNGタオルとかTシャツとかを見ると本当にウルッと来ちゃうんですけど、山あり谷あり、世知辛い世の中ですが、笑顔でまた会えれば良いなって思います」(水澤紳吾)

「10年間やってきて、こういうイベントでフリースタイルをやってまた落ち込むという(笑)これを経験したくないなあと思い続けた10年間ですがいまだに続いております。こうしてみんなで集まれて嬉しいです。今後もこういうことが続いたら素敵だなって思います」(奥野瑛太)

「歴史がある『SRサイタマノラッパー』に出演させて頂くことは私自身すごいプレッシャーでしたし、入江監督とも初めてだったので、どんな方なんだろうっていう緊張感もありました。でも現場に入って東北からCLUB CITTA’までの道のりをみなさんと一緒に過ごすことで、トーコも山本舞香自身も成長できたんじゃないかなっていうことを実感しています。本当にこの作品に参加させて頂いてありがとうございました」(山本舞香)

「今日思い出したんですけど、10年前に1作目を作ったときに、ライヴのシーンを1回書いたんですけど、消したんですよ。「こいつらにはまだライヴはできないな」って。それから10年経って、ドラマ化でSHO-GUNGがようやくステージに立てたんだなって。それがDVDには詰められていて、特典映像にノーカット版を入れているんですけど、本当にライヴをやっていて、それをカメラの三村和弘が追って、録音の山本タカアキさんが録ってというのが記録されているので、「本当にこいつらライヴをやったんだな」っていうのを是非観て欲しいです。次回作はまだ全然考えてないですけど、誰かがやりたいとか言い出したり、ひょんなことからの巡りあわせもあると思うので、その日を楽しみにしたいです。今日は本当に楽しいイベントでした。ありがとうございました!」(入江監督)

万雷の拍手に乗って、「エンドロールっぽく」出演者が退場して。その後、出口に立った7人は1人1人と握手を交わしながらお客さんを送り出し、最高の盛り上がりとなったイベントは終了した。

★終演後 出演者にインタビュー

―お疲れさまでした!今日のイベントの感想とみなさんにとって『SR サイタマノラッパー』はどんな作品なのかをそれぞれ教えてください。

上鈴木タカヒロ:いつも最後だと思って何回もやってる『SR サイタマノラッパー』のイベントなんですけど、また次もあったら楽しいなと思ってます。僕らにとっての『SR サイタマノラッパー』は、ひょんなことから絡んでみたら、10年間楽しいことが沢山あって、僕らのラッパーとしての活動(P.O.P)にも影響を受けているというか、良い意味でも悪い意味でも狂わされた作品だなって(笑)。

上鈴木伯周:みんなこれでキャリアがスタートしているようなもんですから。まだ一応みんな現場にいるのが嬉しいっちゃあ嬉しいですけどね(笑)。まだまだいきたいです。

タカヒロ:こんなことはないと思うので、せっかくなら作品と良い関係を続けられたら良いなって。“伸びるグンググーン!”できたらいいなと思います。

駒木根隆介:今日は、事前にSHO-GUNGの3人で「今日はラップはないんだよね…?」って確認はしてたんですけど、やっぱりありましたね(笑)。ないなんてことはないんですね。本当のフリースタイルだとああいうクオリティなんだなと。10年って長いようで全然成長してないんだじゃないかなと思ったりもしながら(笑)。自分にとって『SR サイタマノラッパー』は、間違いなく強い負荷をかけてくれるので、毎回(笑)。自分にとってそういう風に関われる作品はなかなかないので、これからも負荷がかかれば良いなと思っております。

水澤紳吾:映画館で初めて上映されたときから、ファンのみなさん、「SRクルー」に支えられてこっちもエネルギーをもらって育って行った作品だと思いますので、改めてみなさんの前でこういうイベントをやらせてもらって本当にありがとうございました。とても楽しかったです。

奥野瑛太:今日のイベントはいつもと違うなと思ったのが、映画のイベントのときの顔ぶれだけじゃなくて、新しいお客さんの顔もあって、映画からドラマに変わったことで観てくださっているお客さんの層も変わっていってるんだなっていう印象を受けました。やっていることは映画もドラマも変わらずにやっているつもりなので、それによって広がってきた輪がどんどん広がっているのか小さくなっているのか質がどうなっているのかというのはわからないんですけど、色々変化していることを地続きで共に体験しているので、この作品を通してとても良い体験をさせてもらってるなって感じています。

山本舞香:今日のイベントでも言ったんですけど、途中参加ということでプレッシャーはありましたし、SHO-GUNGの御三方に馴染めるんだろうか?っていう不安もありました。もともとチームワークができていたので、ずっと「ポツン」っていう感じなんだろうなあって。でも、だんだん心を開いてくださったので。みなさんはみなさんでキャラクターへの想いが強いんだろうなっていうのが私にも伝わってきましたし、これを崩さないようなお芝居が出来たら良いなっていうことだけが、私がやらなきゃいけないことだった気がします。私自身も成長させてもらったし、すごく思い出になる作品になったんじゃないかなって思います。

―今日はサプライズもありましたね。

舞香:ねえ!?すごく嬉しかった!

タカヒロ:入江から「俺ら大人だから」ってメールが来たんだよ。

伯周:入江は変わった!

駒木根:俺らにも教えてくれれば良かったのに(笑)。

舞香:なんで誕生日知ってるんですか?

タカヒロ:だって現場で10月(13日)にハタチになるって話してたじゃん。

舞香:ええ~嬉しい!

入江悠:あと1回、撮影中にバレンタインデーのチョコを買ったんだけど、照れくさくてマネージャーさんに渡しちゃったっていう。そのときに、「なんで直接渡してくれないんですか!?」って言われて、すごく恥ずかしくて。20歳くらい下の子に怒られて。

一同:ははははは!

舞香:「なんで直接くれないんですか!?」って言ったの覚えてますよ。あの食堂のところですよね?

入江:そうそう。だから今日はそれのリベンジ(笑)。まあ我々は裏方だからそれで、SHO-GUNGのプレゼントはラップだなって思ってたので。

舞香:でも、本当にハタチになったらみんなで飲みましょう。

タカヒロ:うん、飲もう。

伯周:最初の乾杯したいね。

舞香:でもやっぱりちょっと会わない期間があったから、今日は水澤さんも奥野さんもすごく私に人見知りするというか。

水澤・奥野:(笑)。

駒木根:いや、飲んだら大丈夫だから(笑)。

―では最後に入江監督、お願いします。

入江:今日イベントをやっていて、やっぱり『SR サイタマノラッパー』は青春だったっていうことは思いました。ドラマはその青春から時間が経って、そことどう向き合うかみたいなことを考えながら撮っていた気がして。20代の終わりから30代をほぼほぼこの作品とやってきたので、遅れてきた青春っていう気がしていますね。イベントも何回もやってきたんですけど、次回作がない限り今日が最後なんですよね。それでみんなバラバラになって行くんですけど、この作品に携わった人は応援してくれた人も含めるとすごい数になるので、その人たちがみんな元気でやっていってくれたら嬉しいですね。

取材・文・写真:岡本貴之