第70回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2017】6
映画祭4日目の20日(土)も快晴!
“コンペティション”部門では、フランスのロバン・カンピヨ監督の『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』、スウェーデンのリューベン・オストルンド監督の『ザ・スクエア』が正式上映。
“ある視点”部門ではメキシコのミシェル・フランコ監督の『エイプリルズ・ドーター』などの3作品が上映され、招待作品部門には女優クリステン・スチュワートが初監督した短編映画『カム・スイム』、バーベット・シュローダー監督のドキュメンタリーなどが登場!
◆フランスの俊英ロバン・カンピヨが監督3作目となる群像劇『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』でコンペに初参戦!
2008年にパルムドールを射止めたローラン・カンテ監督の『パリ20区、ぼくたちのクラス』の脚本&編集を手がけたフランスの俊英監督、ロバン・カンピヨがコンペに初参戦した。
『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』は、エイズへの偏見が強かった1990年代初頭のパリを舞台に、過激な啓蒙活動を行うグループに加わった若者たちの姿を描いた群像劇で、2時間22分の長尺ながらロバン・カンピヨ監督のメリハリのある演出が光る秀作で、川の色が赤くなるラストシーンも印象的だ。
朝の8時30分からの上映に続き、11時30分から行われた『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』の公式記者会見にはロバン・カンピヨ監督とプロデューサー2名、出演したアデル・エネル、アルノー・ヴァロワ、ナウエル・ペレ・ビスカヤールら俳優5名が登壇。さらには共演した若手俳優たちが記者席の最前列に陣取り、見守る中で行われた会見は実に盛況で、俳優陣にも多くの質問が飛んだ。
緩急自在の演出を見せたロバン・カンピヨ監督は記者会見で、実在する団体を題材とした政治的ムーブメントを描く難しさを語ると共に、無名の若者の起用が必要だった旨などを滔々と述べ、パワフルな作品に仕上がった自作への自信を滲ませた。
◆スウェーデンの異彩監督のコンペ初参戦作『ザ・スクエア』は、ブラックユーモアが炸裂するシニカルな人間ドラマ!
2008年の『インボランタリー』が“ある視点”で、2011年の『プレイ』が“監督週間”で上映され、2014年の前作『フレンチアルプスで起きたこと』で“ある視点”部門の審査員賞を獲得したスウェーデンの異彩監督リューベン・オストルンドが、満を持してコンペに初参戦した。
スウェーデン、デンマーク、アメリカ、フランスの合作映画である『ザ・スクエア』は、オストルンド監督が自ら脚本を書き下ろした毒気に満ちた辛辣なドラマで、主演したデンマーク人俳優のクレース・バングを始め、エリザベス・モス(米国)、ドミニク・ウェスト(英国)ら国際色豊かなキャストが好演した快作だ。
現代アート美術館のキュレーターを務める著名人のクリスチャンが、携帯電話や金品を意表をつくやり方で盗まれ、それらを取り戻そうとして彼がとった姑息な行動が、思わぬ事態とトラブルを巻き起こし、さらには、準備中の企画展“ザ・スクエア”のために雇ったエージェンシーが制作した映像のネット炎上やパーティ会場での余興パフォーマーの暴走騒動が勃発し……。
夜の正式上映に先立ち、13時から行われた『ザ・スクエア』の公式記者会見には、リューベン・オストルンド監督とプロデューサー、キャストのクレース・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、クリストファー・レッス、テリー・ノタリーが登壇した。
会見ではリューベン・オストルンド監督が、本作における“ポリティカル・コレクトネス”についてや、ダイナミックさをシーンに与えるサウンドの秀逸さについて言及。痛烈な皮肉を散りばめ、ビジュアルにも徹底的にこだわった自作について実に饒舌に語ったオストルンド監督に対し、俳優陣は実にタフな撮影(テイク数のアベレージは70回!)だったと口々にこぼし、意表をついて登場するチンパンジーとの共演シーンを振り返った主演のクレース・バングは「猿好きの監督から、とにかく注文を多くつけられたよ。まず、目を見てはダメだとかね」と苦笑気味にコメントした。
◆夕刻、ドビュッシー・ホールで爆弾テロが疑われる不審なカバンが発見され、一時は騒然となった会場付近!
騒動が起きたのは、夜7時30分から上映されるはずだったミシェル・アザナヴィシウス監督のコンペ作『ル・ルトゥタブル』のプレス試写の際。会場のドビュッシー・ホールは予定時間を過ぎても一向に開場されず、会場前は黒山の人だかりに。やがて階段を手を繋ぎながら下りてきた係員たちが、理由も述べずに「後ろに下がるように!」と語気強く指示。それでも立ち去らずに会場を遠巻きにして事態の推移を見守っていると、しばらくしてから入場が許され、約45分遅れでの上映開始となった。
後に判明したこの退避騒動の理由は、劇場内で不審なカバンが見つかり、派遣された専門家が安全を確認していたとのことで、すわ“爆弾テロか?”と色めき立っての対処だったという。いやぁ、何事もなく済んで良かった!
(Text & Photo:Yoko KIKKA)