『イスマエルズ・ゴースツ』の記者会見

第70回カンヌ国際映画祭が、現地時間の5月17日(水)に、風光明媚な南仏の高級リゾート地で開幕した。映画祭初日の本日は、コートダジュールの陽光がきらめく快晴となった。

◆今年のオープニング作品は、フランスの人気監督アルノー・デプレシャンの『イスマエルズ・ゴースツ』!

アウト・オブ・コンペティション(賞レースの対象外)作品の『イスマエルズ・ゴースツ』は、主人公の映画監督イスマエルの家族が織りなす複雑な愛憎の物語に、彼が監督する新作映画を巡る話を絡めたドラマで、主演は監督の盟友とも言えるマチュー・アマルリックだ。

イスマエルは、型破りな外交官を主人公にした新作映画を撮ろうとしていた。だが、彼の前に20年前に亡くなったはずの妻カルロッタ(マリオン・コティヤール)が、突然姿を現したことで事態は一変。シルヴィア(シャルロット・ゲンズブール)と新たな生活を始めていたイスマエルの生活は大混乱に陥っていく。

破顔のアルノー・デプレシャン監督

映画祭のオープニング・セレモニーは宵の19時15分からのスタート(今年の司会者はイタリアの名花モニカ・ベルッチ)で、『イスマエルズ・ゴースツ』はそのセレモニーに引き続き、20時と23時30分からの2回、正式上映(ドレスコードのあるソワレ上映)が行われるのだが、我々報道陣はその上映に先立ち、午前中から始動せねばならない。

まずは午前10時から上映された本作のプレス向け試写を鑑賞後、12時30分から行われた公式記者会見に参加した。登壇者はアルノー・デプレシャン監督、そして俳優陣のマチュー・アマルリック、マリオン・コティヤール、シャルロット・ゲンズブール、アルバ・ロルヴァケル、ルイ・ガレル、イッポリト・ジラルドの総勢7名。

フランスを代表する人気監督ながらも映画祭的には不遇で、カンヌでは未だ無冠のアルノー・デプレシャン監督は、会見の冒頭で「70回目の節目の開幕作品に選ばれて光栄だ」とコメントし、実は本作には2バージョンが存在する(映画祭上映バージョンは114分の短縮版で、オリジナル版はこれよりも20分ほど長い)と明かした。

そして2女優の配役の妙については「マリオンはカルロッタ役に完璧に嵌まってくれたし、スキャンダルに全く無縁な女優シャルロットも役にピッタリだった」と自信のほどを示し、ボブ・ディランの曲を使ってマリオンに踊らせたダンスにも言及。
俳優陣も活発にコメントした会見で、アルバ・ロルヴァケルと共にサイドストーリー(劇中劇)部分を固めたルイ・ガレルが、アルノー・デプレシャン監督について熱弁を振るう姿が特に印象的であった。

◆長編コンペティション部門の審査員はスペインの鬼才監督ペドロ・アルモドバル(審査委員長)ら、総勢9名!

審査員メンバー記者会見

映画祭初日は、オープニング上映作『イスマエルズ・ゴースツ』の公式記者会見に続いて、14時30分から、映画祭の柱である“長編コンペティション”部門の審査員全員が登壇する審査員会見に出席!
今年の審査委員長に就任したのは、カンヌの常連でもあるスペインの鬼才監督ペドロ・アルモドバル。残る審査員メンバーの顔ぶれは、イタリアのパオロ・ソレンティーノ監督、韓国のパク・チャヌク監督、ドイツのマーレン・アデ監督(昨年、無冠ながら『ありがとう、トニ・エルドマン』で大いに気を吐いた才媛!)、フランスの監督&女優アニエス・ジャウィ、アメリカの女優ジェシカ・チャスティン、中国の女優ファン・ビンビン、アメリカの男優ウィル・スミス、作曲家のガブリエル・ヤレド。

今年は、動画配信サービス“Netflix”製作のオリジナル映画2本がコンペ入りしたことで、開催前から物議を醸していた(フランスでは劇場公開せず、直接ストリーミング公開となるため)が、この件について問われたペドロ・アルモドバル監督は、事前に用意してきたという声明を読み上げる形で“Netflix”を暗に批判。さらに「個人的には、劇場公開予定のない映画は、最高賞パルムドールのみならず、どんな賞も受賞すべきではないと思っている」と明言し、記者席をどよめかせた。

一方、「言っとくけど僕は人種差別主義者だからね」等々のアフリカ系アメリカ人の自虐ネタ・ジョークを連発して会場の笑いを誘っていたウィル・スミスは、“Netflix”を擁護。「僕には16歳、18歳、24歳の子供がいて、“Netflix”もよく見ているけれど、映画館にも週2回行く。だから、どちらも互いに影響を及ぼしちゃいないと思うよ。少なくても僕の家じゃね」とコメントした。

その後、19時30分からは明日が正式上映日となるコンペ作品『ラブレス』のプレス向け試写を鑑賞。上映後には、高級ホテルのプライベートビーチで“映画祭”が主催する“THE WELCOME PARTY”に顔を出し、しばし取材仲間たちと歓談し、本日の業務を終了!


(Text & Photo:Yoko KIKKA)