「オスカー候補となるべき今年No.1の映画。(Variety)」、「ノーラン最高傑作。(The Guardian)」など、早くも2018年のアカデミー賞®最有力候補の大本命! 『ダークナイト』『インセプション』と、新作ごとに圧倒的な映像表現と斬新な世界観で、観る者を驚愕させてきたクリストファー・ノーラン監督が、実際に起きた史上最大の救出作戦を描いた大傑作が誕生! 360°全方位から迫る究極の映像体験『ダンケルク』が9月9日(土)より日本公開となりました。
海の町、ダンケルク。追い詰められた英仏軍40万人が撤退を決断。若き兵士トミーは、絶体絶命の窮地から脱出できるのか!?世界が嫉妬する才能を持つ、『ダークナイト』『インセプション』のクリストファー・ノーラン監督が実話に挑んだ最新作! 民間船もが救助に関わった、史上最大の救出作戦が幕を開ける!
日本公開直前の9月8日(金)深夜、新宿ピカデリーでは初となる爆音上映を開催致しました。最新作『ダンケルク』、そして『インターステラー』(2014年)、『インセプション』(2010年)の3作品を爆音で一挙上映! “究極の映像”を“究極の音”で体験できる貴重なチャンスということで、本上映のチケットは発売から2分で完売! トークイベントには、映画、音楽評論家であり爆音上映プロデューサー・樋口泰人さん、自他共に認める最強のノーランファン、映画評論家・森直人さん、そして『ダンケルク』で音楽を担当した“映画音楽の巨匠”ハンス・ジマーを愛するダイノジ大谷さんの登壇し、ディープな“ノーラン愛”をとことん語り尽くしました。

『ダンケルク』公開記念 爆音前夜祭トークイベント
■日時:9月8日(金) 23:30〜24:00
■登場ゲスト(敬称略):樋口泰人、森直人、ダイノジ大谷

樋口:今朝まで音の調整をしていたのですが、チケットが2分で売り切れたというのが大変なプレッシャーでした(笑)。元々、完成度が高い作品なので音をちょっとあげればいいくらいで作られてますが、とても繊細に作られてるのでちょっと調整するだけで全然変わる。

森:ノーラン監督に関しては、だんだん好きになってきた。変な監督だな、と思ってからすごく好きになりました。今回の上映順のように、『ダンケルク』から始まって『インターステラー』、『インセプション』と遡ると、変な監督としてのノーランをディープに実感できると思います。たぶん今、全世界で一人だけ、違う発想で映画を作っている人だと思います。

樋口:“爆音”で観ると特にノーラン作品は色々な音が入っていることが分かります。一番の特徴は、すーっと音が消えることがあるということ。無音が一番の見どころなんです。爆音やっておきながらあれですが、無音がどこにあるか、無音の時にどういう状態になるか、という部分を観て頂ければいいかな、と。『ダンケルク』は音楽が要所要所で音がすっと消える。その完全な無音の時にどんな音が聞こえるか。そこに耳を澄ませて頂けると嬉しいです。

森:すべてが非常にコントロールされた映画ですよね。空間、時間、それに合わせたサウンドスケープが緻密に作られてる。リミックスするような作業で、ご苦労されたと思います。どうしたら際立つかというのが大変な作業だったと思いますが、いかがでしたか?

樋口:銃弾やら爆撃やら色々な音が流れる中で、どこかに合わせるとそれ用の全体像ができてしまう。できる限りバランスを取るために、ハンス・ジマーの音楽でウルっとくる部分に合わせました。泣いてもらえる“爆音”です(笑)。

大谷:戦争映画って俯瞰の視点が多いのに、『ダンケルク』は主観が多いので圧迫感がありますよね。状況下を登場人物本人たちが理解できてない。それから、普通は主人公が成長したりするのに、しない(笑)。そういうカタルシスがない。こんなやり方あったんだと、驚きました。

樋口:音が閉塞感を与える作りになっています。風景が広がっても、音によって全体像が見えない作りになっています。音楽が消えた時だけ世界が広がって、別の世界が見えてくる。俯瞰ではなく、一部しか見えていない人たち、無名な人たちがそれぞれ孤独な戦いを繰り広げて、ある時、世界とふっと世界が変わる。そういう面白さがあります。最前線の人は世界のことは分からないですよね。それから、パイロットの視界があんなに狭いとは思っていませんでした。

大谷:パンフレットの写真だと、翼にカメラを付けてますよね。それもすごいな、と。

樋口:飛行機のバックミラーも初めて具体的に観ました。

森:そういうミリオタ的な描写も、今までの戦争映画等は違いますよね。大谷さんが言われた通り、「こんなやり方があったのか!」という新鮮さ。これまでの戦争映画は『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸作戦がスタンダートで、その再生産が繰り返されていますが、『ダンケルク』は全く違う。アメリカで公開されて批評家のウケもいいし、観客も入ってる。大衆性と実験性を押し進めているのがノーラン監督なんです。例えるならばビートルズですね。イギリスからやってきてハリウッドを席巻しているのは、ノーランが発明をしているから。本人がこの作品を「戦争映画じゃない」と言ってますが、じゃあなんなのか、と。それは、ひたすら驚くのがいいと思うんです。

大谷:確かに、何映画?って聞かれると…とにかく「映画」なんですよね(笑)最初は「体感型」とか思いましたが、それだとアトラクションぽいじゃないですか。そうではなくて、絶対に「映画」。映像美がすごいと言われてますが、ノーラン監督は「映画作家」なんですよね。

樋口:さっき、「戦争の現場は外が見えない。目の前のことだけである」という話になりましたが、それはノーラン監督がイギリス人としてアメリカで映画を作ってるということとうまくミックスされてるんだと思います。

森:ヒューマニティと「人間なんて」という要素が混ざってる。“ダンケルクスピリット”というイギリスのローカルな話をハリウッドのこの規模でやるのは、明らかに意図的です。大きなものと小さなものを同時にやろうとしているんだな、と感じます。

大谷:CGもほぼ使ってないんですよね?

森:そうですね。アナログ主義者、かつ最先端であるという、不思議な監督です。

樋口:今までの作品と比べると1時間少ないんですよね。

大谷:ハンス・ジマーの音楽もすごくいい! 時計の音は監督が渡したんですよね。

森:そこもアナログですよね。

樋口:時計の音もですし、もしかしたら船のモーター音もつけられた音楽かもしれない。それも爆音だから見えてくる。なるべくそういうことが見えてくるように、爆音よりも細部の音が聞こえるようにしました。だから最後、音をちっちゃくしたんです。

大谷:みんな、爆音を聞きに来てるのに(笑)?

樋口:最後に小さくすることで全部が聞こえてくるようになりました。それから3作品の音の調整していて気づいたのですが、『インセプション』、『インターステラー』に『ダンケルク』の音が入ってるんです。それが聞こえると、過去の作品が一体化してくる。だから今夜のように、寝てるんだか起きているんだか分からない状態で見るのはベストです!

森:ノーラン監督は知的に語られることが多い監督ですが、映画は理屈抜きで体感するものとして作られています。爆音だと、パーツごとに細部を、そして『インセプション』あたりからから監督の“変度”が増しているので、今日はそれを体感できると思います。

大谷:とにかく最高です!『ダークナイト』、『ダンケルク』と、特大のホームラン打つノーラン監督。これから映画の作り方が変わると思いますし、問題提起もある。皆さんは映画の歴史の目撃者になれると思います!