国内外で常に注目を集める黒沢清監督が劇作家・前川知大氏率いる劇団イキウメの人気舞台「散歩する侵略者」を映画化。
数日間の行方不明の後、夫が「侵略者」に乗っ取られて帰ってくる、という大胆なアイディアをもとに、誰も見たことがない、新たなエンターテインメントが誕生しました。夫の異変に戸惑いながらも夫婦の再生のために奔走する主人公・ 加瀬鳴海に長澤まさみ。侵略者に乗っ取られた夫・加瀬真治に松田龍平。一家惨殺事件の取材中に侵略者と出会うジャーナリスト・桜井に長谷川博己。桜井が密着取材を申し入れる若き侵略者たちー天野に高杉真宙、立花あきら に恒松祐里。5人は黒沢組初参加、それぞれが映画初共演という新鮮な顔合わせ。さらに脇を固める豪華キャストにもご注目ください。

この度、9月9日(土)の全国公開とオリジナル・サウンドトラックの発売を記念し、黒沢清監督と音楽を担当した林祐介さんによるトークショーを開催いたしました。国内外で注目を集めるお2人によるディープなトークに、観客も大満足のイベントになりました。

『散歩する侵略者』公開記念トークショー概要

【日時】 9月5日(火) 19時30分~20時30分

【場所】 渋谷モディ 6F HMV&BOOKS TOKYO (渋谷区神南1-21-3 渋谷モディ 6F)

【登壇者】黒沢清監督、林祐介(音楽)

<以下イベントレポート>

国内外から注目を集める黒沢清監督と林祐介さんの貴重な組み合わせによるトークイベントだけあって、映画の公開を待ち望む観客で会場は満席に。
まずはじめに黒沢監督は「音楽についてお話するイベントはあまりないので、どんな話が出るのか楽しみです。スリリングな時間になるのではないかと思います」と挨拶し、続く林さんは「今日は黒沢監督と対談させていただけるということで、とても楽しみにしていました。短い時間ですがよろしくお願いします」と期待に満ちたコメント。

約10年前に原作と出会ったことをきっかけに、侵略SFを日本で映画化したいと決意した黒沢監督。そんな黒沢監督と林さんは、2003年の『ドッペルゲンガー』以降、本作を入れて4作目のタッグとなります。旧知の仲とも言える黒沢監督と林さんですが、初めて仕事を依頼された時の感想について、林さんは「初めて取り組んだ映画音楽が黒沢監督の作品で、とても緊張しましたが、やりがいを感じましたね。頑張るしかなかったです」と本音を明かしました。

本作を監督する上で、新たにチャレンジしたことについて問われると、黒沢監督は「物語の軸でもある鳴海(長澤まさみ)と真治(松田龍平)の夫婦の関係がどのように変化していくのか、というありふれた日常と、いったい世界がどうなってしまうのか、ということを同時に描くことがチャレンジでした」と語りました。

映画音楽とは物語の最後に解釈するもの、と断言する黒沢監督。音楽を依頼する時は、キャラクターの感情に添うものではなく、物語に添った音楽をオーダーするそう。今回はクラシカルな中にもSFらしさがある音楽を、と林さんに依頼しました。
林さんはこの要望に応えるべく、普段の楽曲制作ではあまり使うことのない珍しい楽器を採用したことを明かしました。“オンド・マルトノ”と呼ばれる繊細な音階のコントロールができる電子楽器や、ホラー映画らしい音色が出る“ウォーターフォン”、黒沢監督作品では欠かせない、低音が特徴的な民族楽器など、見たことのない楽器の数々に黒沢監督も「初めて知りました。びっくりです」と興味津々。

また、実際に劇中で使用されている劇伴を聴きながら、そのシーンの狙いや作曲面で苦労したエピソードもお伺いしました。
真治が散歩するシーンに何度も使用されている、一度聴いたら耳から離れないコミカルなテンポな「散歩する侵略者」という楽曲に関して、黒沢監督は「耳に残るようなフレーズの曲を何曲か入れて欲しいと林さんにお願いしました。この曲はその一曲で、このシーンは怖くないんです、可笑しいんです!とはっきりわかる曲ですよね」と解説。
林さんは「宇宙人が散歩するというブラックユーモアを、オーボエやミュートしたトランペットで表現しました。実は、劇中で真治が散歩するシーンの真治の歩調に合わせて曲調を考えたんです」と意外なエピソードを明かしました。

また、本作のメインテーマ曲でもある「愛のテーマ」について、黒沢監督は、「僕としてはめずらしく、わかりやすくて観た後に心に残るようなメロディの曲を作ってほしいとお願いしました。『シザーハンズ』や『夕陽のギャングたち』などのサントラや、エンニオ・モリコーネの曲をイメージで聴いてもらったり、女性のスキャットを入れてほしいなど、色々と難しい注文をしました。でも、林さんから出来あがった曲を聴かせていただいた時に、これだ!と思いました」

林さんによるキーボード演奏を交えながら楽曲に彩られた印象的なシーンの数々を振り返る中、ここで林さんに本作の楽曲を本日だけ特別にメドレー形式で演奏いただきました。ここでしか聞けない貴重な機会に、会場の観客も大いに聞き入りました。
演奏後は拍手が沸き起こり、黒沢監督は「林さんってピアノが上手いんですね(笑)」とジョークを交えながらも、貴重な生演奏に大感激の様子でした。

最後に、黒沢監督と林さんから観客の皆さんへメッセージをいただきました。

林さん:是非『散歩する侵略者』をご鑑賞いただき、サントラで余韻に浸っていただければと思います。そして何かを感じ取っていただければ嬉しいです」

黒沢監督:この映画は今日聴いた音楽のように、あらゆる要素がつまっています。観ていて戸惑うこともあるかもしれませんが、最後には非常にわかりやすいメッセージが込められているはずです。それが何なのか、是非劇場で確かめてください。

本作を語る上で欠かせない劇中音楽の制作秘話が明かされると共に、観客が「散歩する侵略者」の世界観にたっぷり浸った大満足のイベントとなりました。

以上