6年の制作期間をかけて、半世紀以上続く「捕鯨論争」に新たな光をあてるドキュメンタリー映画、『おクジラさま ふたつの正義の物語』(9月9日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開)。本作は、2010 年に公開し、東京で 25 週間のロングランヒットを記録したドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』の佐々木芽生監督による、最新ドキュメンタリー映画です。
この度、映画の舞台となった和歌山県 太地町のクジラ浜(夏の間、実際にクジラが入り江を遊泳して、クジラと一緒に泳げる海水浴場としても有名。)の海岸にスクリーンを設置して、撮影でお世話になった町民の皆様への映画完成報告を兼ねた、特別な上映会を開催いたしました。 佐々木芽生監督も、現地へかけつけて、地元の方々との対話集会を実施しました。

【日時】 8 月19 日(土)
【場所】 和歌山県太地町 クジラ浜海水浴場 砂浜(〒649-5171, 和歌山県 東牟婁郡 太地町 太地3767-1)]
【映写設備】 200 インチ/大音響スピーカー(映写プロデュース:WAWACINEMA)
【登壇者】 佐々木芽生(監督)バーナディーン・コーリッシュ(Bernadine Colish/編集)折笠 貴(撮影)杉岡太樹(撮影)
【来場者】 約200 名

【イベント詳細】
上映前に佐々木監督から挨拶がありました。 胸を詰まらせながら、「やっとこの太地町の皆様に観ていただけるまで辿り着くことができました。皆様、ほんとうにありがとうございます。」と、感謝の意を表明し、本編の上映が始まりました。
満天の星空の下、海岸から20メートル沖合に設置された生け簀の中にクジラが泳ぐ海岸で、200インチのスクリーンに映し出された映画に、地元の方々は大満足した様子で、上映後は大きな拍手が起きました。 そして佐々木監督、アメリカからかけつけた編集のバーナディーン・コリッシュ、撮影の折笠貴、杉岡太樹 が 紹介され、それぞれが一言ずつ挨拶。
そして、佐々木監督と、地元の皆様との対話集会がはじまりました。※地元の方の感想や意見を以下、記述いたします。
堀端さん (前太地町小学校校長):「太地町の美しさを感じた。ツイッター等は駆使できないけど此処で生きている漁師の“思い” “文化、生活。共同体としての生活”をきちんと描いてくれていたと思う。佐々木監督、お疲れ様でした。」
久世滋子さん(ペンション経営者): 「シーシェパードが言う「倫理に反する。」ということが、どういう事なのかを彼らに具体的に説明して欲しい。やはり理解できない。」
脊古輝人(元漁師/漁協組合長)さん。 : 「6年前、コーヴ(映画『ザ・コーヴ』)で大変な状況の中、佐々木さんがやってきてくれた。両方の立場の映像を制作し、我々の文化を世界に発信していただけるのは とてもありがたい。佐々木監督ありがとうございます。」
太地町で観光の語り部の仕事をされている女性 : 「仕事上、捕鯨反対派からいやがらせもあるが、映画の中で太地町の漁師さんが、外部の意見を気にするな。という発言されているのを観て勇気づけられた。」
貝さん(漁協参事): 「映画中に鯨肉がおいしくないという方がいたが、私は鯨肉大好きです。ほんとうに美味しいと思う。我々漁師は、メディア使いが苦手であるが、そればかりではいけない。 情報発信については、今後、考えていかなければいけないと思った。捕鯨に関しては、今後もやめるつもりはない。 これはずっと子供たちへ引き継いでいくものだと考えています。」

記者からの質問:この映画を撮ろうと思ったきっかけは?
佐々木監督:「『ザ・コーヴ』 をNYで見ました。 映画としてはよく出来ていると思いました。 ただあの映画に対して、日本側からの発信が全くないことに驚きを感じました。
発信ということに関して、この映画は、捕鯨の是非を問うだけではなく、現代の社会は、グローバリズムがこんな平和な地(和歌山県太地町)にまで押し寄せてきている現状があり、そこに問題が潜んでいることにも注目したい。
トランプが大統領に当選してしまう事が象徴しているように、ツイッターなどを駆使して大きな声を発信することが、あたかも正しいことのように受け取られてしまう危うい一面があると思います。」
最後に佐々木監督から以下のコメントが伝えられた。
「畠尻湾は、映画 『ザ・コーヴ」』以降、多くの衝突と憎しみの象徴となってしまいました。
私たちもここで多くのシーンを撮影しました。
全国での劇場公開に向けて「おクジラさま」 を太地町民のみなさまに、ここで初めてお披露目できて良かったです。
町民の方からお褒めの言葉と厳しい指摘もありましたが、この上映会をきっかけに新しい対話が始まることを願っています。」