日本人として初めてヴェネツィア・ビエンナーレ&ヴェネツィア国際映画祭の全額出資を得た長谷井宏紀(ハセイコウキ)監督がフィリピンを舞台に撮影し、世界中の映画祭で高い評価を得た話題作であり長編デビュー作の『ブランカとギター弾き』が、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次大好評ロードショー中です。

本作は、カラフルでエネルギーに溢れたマニラのスラムを舞台に、母親を買うことを思いついた孤児の少女ブランカと、盲目のギター弾きピーターの“幸せを探す旅”をつづった心温まる感動作です。主人公ブランカを YouTube の歌姫として国内外で人気を集めていたサイデル・ガブテロが演じ、演技初挑戦ながら、美しい歌声と演技力で観る者を強く惹きつけます。

このたび本作の大ヒットを記念し、本作の長谷井宏紀監督と長年にわたり交友のある歌手の UA さん、そしてその長男であり俳優の村上虹郎さんが<親子>で登壇する豪華トークイベントを開催いたしました。

日時:8 月 7 日(月)20:10~20:40(※映画上映後のイベントです)
会場:シネスイッチ銀座(中央区銀座4丁目4−5 旗ビル)
ゲスト:UA(歌手)、村上虹郎(俳優)、長谷井宏紀監督

荒天にも関わらず多くの観客でにぎわった場内は、歌手の UA、彼女の長男であり現在大人気の俳優・村上虹郎、そして二人の友人であり『ブランカとギター弾き』監督の長谷井宏紀が現れると大きな拍手で包まれた。

公開に先駆けて『ブランカとギター弾き』を観た UA と村上は、親子で色々と本作について語り合ったと言う。感想を尋ねられると、UA は「最近は子供と一緒に観られないような映画に対してアンチになっていた」と、4 人の子の母親である彼女らしい視点から話を始めた。「“何でそこで殺すねん”、“何でそこでエロいねん”、って思ってしまう、そういう映画が多い。だから、『ブランカとギター弾き』みたいな映画に大賛成。時代を越えているね」と絶賛した。さらに、「今時の映画はたくさんあるけど、私は本当の名作に出会いたい。『ブランカとギター弾き』には、(長谷井監督が)今後名作を生むことができるっていう可能性を感じた」と、本作が長編デビュー作である長谷井に確かな才能を見出したことを告白した。

また、海外生活を送るゆえに飛行機に乗ることが多いという UA は「機内で色んな映画が観られるけど、もうすぐ 2 歳になる末っ子や、その上にいる 5 歳や 8 歳の子を連れていると、見せたくないようなシーンが乗客の席の画面に映っている。これってどうなんだろう?っていつも思っていた」と、日ごろ感じていたわだかまりを吐露。「そういう意味で、『ブランカとギター弾き』は家族と一緒に、皆で安心して観られる」と語った。UA の感想を大きくうなずきながら聞いていた長谷井が、「これまでにもらった映画の感想で特に嬉しかったのは、この映画には悪い人は出てくるけど、絶対的な悪じゃない、っていう感想だった」と伝えると、UA も「そうだよね。根源的な悪は、この星には存在しないはず」と、希望にあふれた世界の見方を明かした。

続けて海外での生活について話が広がると、高校時代にカナダのモントリオールに留学していた村上は「今は母と仲良くしているけど、カナダ留学を決めた頃は、自分の家に帰りたくない、別々に暮らしたいという気持ちがあった」と思春期に抱いた母への反抗心について語った。「ただ、カナダに行ってから、実は僕はそんなに英語が上手くならなかった。
英語を勉強するにも、英語によって何を学ぶのかとか、何がしたいのか、誰と話したいのかとか、そういうことがしっかり固まってないとなかなか伸びない。カナダにいた時は、日本の映画やアニメを一番たくさん観ていた時期でもあるんだよね、部屋に引きこもって。母がいるところで言うことじゃないけど(笑)」と話した。

長年にわたり交流を続けている UA と長谷井。村上のことも、長谷井は彼がまだ幼い頃から知っており、最初の出会いがいつだったかという話になると UA が「この子はまだ小さかった。(長谷井監督は)どういうわけか、顔中にフェイスペインティングをしていた」と振り返った。しかしそれを全く覚えていない様子の息子・村上に「この人は幼少の記憶がほとんどないの。今を生きる男なんだね!」と言って会場の笑いを誘った。長い付き合いによるものか、三人の話にはゆったりとした和やかな空気が流れ、最後に長谷井が「いつか一緒に映画をやってみたいね。(UA と村上がかつて暮らしていた)沖縄の映画もちょっと考えているよ」と村上に声をかけると、「沖縄顔ですよ、僕!」と村上はやる気満々の姿勢を見せた。そして UA も「沖縄の映画、楽しみにしてるよ!」と言葉をかけ、長谷井監督の次なる新作に場内の誰もが期待を膨らませるなか、トークは幕を閉じた。