この度、ドキュメンタリー映画『すばらしき映画音楽たち』(配給:アンプラグド)が8月5日よりカリコレ2017にて公開致しました。

映画『すばらしき映画音楽たち』上映後トークイベント
■日時:8月6日(日) ■場所:新宿シネマカリテ
■登壇者:宇野維正さん(映画・音楽ジャーナリスト)

本作は、『ロッキー』や『E.T.』、『スター・ウォーズ』、『タイタニック』など、世界中の人々の心に残る名作映画たちを支えてきた映画音楽たちが、どのようにして生まれたかを紐解く音楽ドキュメンタリー。
まず本作の感想について聞かれると、「監督が純粋に映画音楽を好きな方なんだなと伝わってきて、オーソドックスな作りですけど純粋に楽しめました。劇中にも登場する『ダークナイト』などの作曲を手掛けているハンス・ジマーはデジタル以降の映画音楽家の代表格だと思うのですが、彼が劇中で『オーケストラを維持することは映画音楽にとって生命線』という風に言っていて、映画音楽にオーケストラを起用してきた人たちが言うのは分かるんですけど、ハンス・ジマーが言うことにすごく説得力を感じましたね」と語る。さらに、「オーケストラが入れるレコーディングスタジオは今すごく無くなってきているんです。それに対し、映画音楽においてオーケストラをなくしてはいけないという監督の思いがすごく伝わってきた作品でした」と本作を振り返った。
本作ではハンス・ジマーとジョン・ウィリアムズという映画音楽の歴史を変えた人物がそれぞれ登場する。それに関して宇野さんは「ハンス・ジマーは現代の映画音楽の代表だと思うんですけど、ジョン・ウィリアムズが劇中で“神”と言われているのも分かります。今の映画音楽は必ずと言っていいほどデジタルの音楽が入っているのに、『スター・ウォーズ』に関しては生のオーケストラだけを起用していますし、シリーズものなのにレベルが全く下がらないので彼は特別な作曲家なんだなと思いましたね」と改めてジョン・ウィリアムズの凄さを説明。また、作曲家たちが劇中でプレッシャーに押しつぶされそうになる本音を語っていたことについては「今のハリウッドの大きな作品の音楽は5、6人の作曲家に仕事が集中している。代表的な人物を挙げると、ハンス・ジマーや『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』などを手掛けたジャンキーXL、どうして出てこなかったのかと思ったけれど『スパイダーマン ホームカミング』を手掛けたマイケル・ジアッチーノ。どうして彼らに仕事が行くかというと、彼らは何百億という制作費のプレッシャーにも負けず、納期を必ず守るという“特殊技能”を持っているからなんですよね。これは才能だけでは出来ないと思います」と語る。しかし劇中で『アルマゲドン』の作曲を手掛けたトレヴァー・ラビンが、納期を守るためにカレンダーが用意されていたと語るシーンについて「あれはひどかったですよね!!」と同情し、観客からも笑いが溢れた。
今後の映画音楽について聞かれると、「今は映画がネットで配信されていて、簡単に映画が見れる時代になっていて、それでも映画館へお客さんを呼び寄せるために3DやIMAXなどが出来てきたと思うんですよ。でも、実はみんな無意識に気づいているかと思うんですけど、あの音量・音圧を感じることが、映画館で映画を観ることの1番の理由なんじゃないかと思うんですよね。そして聴きたいと思わせる、それに相応する音楽を作るのがハンス・ジマーやジャンキーXLらだと思います」と映画・音楽ジャーナリストならではの考えを述べた。
最後に来年のアカデミー賞作曲賞に輝く作曲家を予想してもらうと、「『ブレードランナー2049』の作曲を手掛けたヨハン・ヨハンソンに注目していたら、なんと『ダンケルク』のハンス・ジマーがこれまでのさらに上のレベルに達した“異次元ハンス・ジマー”になっていました!お楽しみに(笑)」と映画ファンにはとても気になるメッセージを残した。
映画『すばらしき映画音楽たち』は8月5日(土)よりカリコレ2017他全国順次公開中。