日本人として初めてヴェネツィア・ビエンナーレ&ヴェネツィア国際映画祭の全額出資を得た長谷井宏紀(ハセイコウキ)監督がフィリピンを舞台に撮影し、世界中の映画祭で高い評価を得た話題作『ブランカとギター弾き』がシネスイッチ銀座ほかにて7月29日(土)より全国順次ロードショーされます。舞台はカラフルでエネルギーに溢れたマニラのスラム。YouTubeの歌姫として国内外で人気を集めていたブランカ役のサイデル・ガブデロは演技初挑戦ながら、美しい歌声と演技力で観る者を強く惹きつけます。彼女に生きる術を教える盲目のギター弾きには、生涯を通して実際にフィリピンの街角で流しの音楽家として活躍していたピーター・ミラリ。その他、出演者のほとんどは路上でキャスティングされています。そして劇中、演奏されるスペインをルーツにした素朴で温かいフィリピン民謡「カリノサ」は必聴。母親を買うことを思いついた孤児の少女ブランカと、盲目のギター弾きの“幸せを探す旅”。本作はどんな人生にも勇気を持って、立ち向かう価値があることを教えてくれる、心温まる感動作です。
この度、主人公ブランカの音声ガイド吹き替えキャストである、大人気アニメ『ラブライブ!』で主人公・高坂穂乃果の声優を務めた新田恵海さんと視覚障害のある人も当たり前に映画館に行けるようUDCastアプリの開発にも携わっている松田高加子さんによるトークショーが開催されました。

【日時】8月1日(火)
【場所】シネスイッチ銀座(東京都中央区銀座4-4-5 旗ビル)
【登壇者】新田恵海/松田高加子

上映を待つ観客の元に新田さんと松田さんが登壇。UDCastアプリの開発にも携わっている松田さんから説明を受け、UDCast上映の準備を観客と一緒に行った。新田さんも「私も公開初日に観たが、起動にもたついて最初の部分を見逃してしまいました。今日は観客の皆さんの準備が終わるまで待ちます!」と話し、観客一人一人の動作の準備を待って上映はスタートした。

そして上映後、盛大な拍手の中、新田さんと松田さんが再度登場。公開初日にプライベートでUDCast上映を体験していた新田さん。「今回はアプリの準備が万端だったので、最初からきちんと聞くことができました。劇場で観ると作品の世界により入りこめました。」と鑑賞直後の感想を述べた。今回初めて音声ガイドの吹き替えを務めた感想を聞かれると、「初めて務めて、本当に光栄でした。」と話した。また、UDCastのシステムも今回初めて知ったという新田さんは「知らなかったことでしたが、こういうやり方で視覚障害者の方でも作品を楽しむことができるんだと、知って新鮮な驚きがありました。同時に、すごく責任のあることだな、とも思いました。率直に難しかったです。普段映像に頼りきっている部分があり、挑戦するにあたり色々考えたのですが、『自然に。声を作らないで。』とディレクションをしていただく中で、私がブランカに寄り添えばいいんだ、と思いました。」と音声の収録も振り返った。また、松田さんに新田さんの吹き替えについて聞くと、「今回初めて頭から観たんですが、いつも、観ている側がブランカの言葉を理解できるように、ということを目指して作るんですが、まさに途中から、新田さんが声をやっていた、というのを忘れるくらいでした。」と話した。松田さんに今回のような新田さんが起点となってUDCastの吹き替えを観ていただける人が増えたことについて尋ねると、「音声ガイドというのは映像の説明をする、というものなのですが、洋画の場合はまずはセリフを教えてくれ、というのが視覚障害者の方の要望としてあります。大きな洋画の作品の場合ですと、完全吹き替えがあるので、その上で映像の説明を入れる、というのがあるんですが、ミニシアターとなると映画好きな方がオリジナルな音声を聞きつつ知りたい、というのが主流ではあるんですが、そうなってくると、一緒に楽しむのがなかなか難しくなります。ですが、今回のように新田さんにブランカちゃんの声を吹き替えてもらいながら、情景も説明していただく、となるととても良いな、と思います。UDCastだと大作も含め、いろんな作品も見られますので、もっともっと広まっていくといいな、と思います。」と話すと、新田さんも「本当に素敵な作品は世の中にたくさんあるので、垣根なく、たくさんの人に届けられたら素敵だな、と思います。」とUDcastの未来を期待した。
続いて、初めて本作を見たときの感想を新田さんに聞くと、「誤解を恐れず言うとすごくショッキングな作品でした。日本にいてストリートチルドレンってなかなか会えないと思うのですが、世界にはこういう場所があって、こういう生き方をしている人がいるんだ、というのがショッキングでした。作られた世界ではない、というのが、また衝撃でした。その中で自分がブランカの声を務める、となって、あまりに想像のつかない世界で、最初はブランカちゃんを可哀想だと思ったけど、彼女の美しさ、力強さを伝えたいと思いました。映画を見る中でいろいろなことを感じて、私も成長させていただきました。この映画を観る人に向けて、「今回ブランカの声をやらせていただきましたが、私自身この作品のファンになりました。ブランカの言葉では表現できない歌声、本当に感動で震えます。とにかく観て、聞いて、何かを感じていただければと思います。私にとっても大きな出会いの作品になりました。みなさんの心にも何か残るといいな、と思います。」と話し、松田さんも「目が見えない人の楽しさが自然に描かれていたので、目の見えない友達とも作品を観たいな、と思いました。」と話し、イベントは幕を閉じた。

*UDCast方式による音声ガイド付き上映とは「見えない」「見えにくい」方が、いつでもどこでも映画が楽しめるよう、携帯機器(スマートフォン・タブレット端末)とイヤホンを使って音声ガイド付きで映画を鑑賞して頂けるシステムです。