7月25日、テレビ東京ビジネスオンデマンド・日経W倶楽部共同開催の特別試写会が開催され、上映前のトークイベントにジャーナリストの池上彰氏が登壇。登壇するなり、挨拶もそこそこ、さっそく本作の主人公、マイケル・キートン演じるレイ・クロックについて話が及んだ。

―本作の感想

池上は 20 年ほど前に本でレイの存在を知り、本作を観て久しぶりに思い出したという。「(レイは)非常にアグレッシブな人物。ここまでやらなければならないのか、もしくはこれだけやったからこそ帝国(マクドナルド)を築くことができたのか―。映画を観た人がそれぞれ判断を任されるそんな作品です。個人的には<ルート 66(道路)>を東から西へ横断するシーンが出てきますが、私くらいの世代には、テレビドラマの影響でこれが大変懐かしくてたまらなかった。1950 年代のアメリカってこうだよね、と思える。あの時代の雰囲気や車などそういう見方も楽しいかもしれません。」

―人生の転機について

52歳でマクドナルド兄弟と出会ったレイ。池上の転機といえば NHKの退職時とも言えるのでは?
と共通点について投げかけると「確かに辞めていますけどレイと一緒にしないでください!(彼と一緒なんて)ありえないですね、マクドナルド兄弟側になっていた可能性はあるかもしれないですけどね(笑)。兄弟の品質へのこだわりに共感をしました。たしかにとても実直で、もう少し融通がきけばレイとの衝突もここまでにはならなかったと思わない所もあります。どちらの側にも共感ができました。レイは兄弟が気付かなかったチャンスに気付き、その説得力はなかなかなものでした。一方で兄弟は FC 展開をすることで自分たちの手にはおえないほど大きくなり、このままではいけないのではないかと葛藤する。販売するモノへのこだわりです。これは現代版の「集中と選択」ですよね。」と現代に通じる会社を甦らせるために必要な成長戦略に紐づけて解説。劇中のミルクシェイクのエピソードでは、牛丼のFC店「吉野家」が一時使用したという粉末のタレ問題を思い出したと語り、画期的なシステムを構築し、発見した人間が成功者になりえたゆえんをマイクロソフト、ユニクロ、Amazon などを例に出し、場内多くの観客を唸らせていた。

―タイトル「ファウンダー」の真意とは

「映画のタイトル「ファウンダー」はものすごい皮肉です。はたして創業者は誰か、という問題に行き着きます。この30秒でハンバーガーを提供するシステムのファウンダーはマクドナルド兄弟。
マクドナルドの店を帝国にしたのはレイですから。今の時代だったら、どこかの国がすぐやりますけどパクっちゃえばいいことなんです。でもレイはこの<マクドナルド>に固執したんですね。なぜか?それが映画の最後に明かされるんですよ。ネタばれになるからここまで・・!
アメリカの資本主義はこういう人達がいるから発展したんですね。日本人はマクドナルド兄弟へ共感を得る人が多いと思います。だから日米の経済の違いが出てくる。
日本がデフレを突破できないのは、そういう見方できるんじゃないでしょうか。観たくたるでしょう?観たら観たで、知らない誰かに教えたくなる、そんな映画なんです!」と池上節が炸裂。自著の告知も交えながら、がっちり観客を掴み場内を沸かせつつ、トークイベントは終了となった。