2017年7月15日(土)よりBunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほかにて公開中の『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』。
公開初日より連日満席が続出するなど、大反響をいただいております。
本作の公開を記念し、女優の草刈民代さんと舞踊評論家の乗越たかおさんが登壇、満席のBunkamuraル・シネマにてトークが繰り広げられました。

【イベント概要】

■日時:2017年7月17日(月・祝)10:30の回上映後 
■会場:Bunkamura ル・シネマ(東京都渋谷区道玄坂2丁目24−1)​
■ゲスト:草刈民代(女優) [聞き手]:乗越たかお(舞踊評論家)

女優の草刈民代が17日、都内・Bunkamura ル・シネマで行なわれた映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』の公開記念イベントに出席。「こんな天才ダンサーが現れたことがあっただろうか」と熱いコメントを寄せた草刈が、自身のバレリーナ時代の経験を重ねながら、ポルーニンへの思いを語った。なお、この日は、舞踊評論家の乗越たかおが聞き手を務めた。

本作は、孤高の天才ダンサー、ポルーニンの知られざる素顔に迫るドキュメンタリー。19歳で名門・英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルに選ばれるが、人気絶頂期に電撃退団。果たしてその真意とは?全身にタトゥーを纏い、決して型にはまらないバレエ界きっての異端児ポルーニンの生き様を、本人や家族、友人、関係者らのインタビューを交えながらひも解いていく。

映画の予告編でポルーニンの美しい舞に魅せられ、YouTubeで彼のパフォーマンスを何度も観たという草刈。「小さい画面で観てもその凄さがわかった。若いダンサーで素晴らしい人はたくさんいますが、その中で群を抜いている。ミハイル・バリシニコフやルドルフ・ヌレエフに次ぐ才能」と絶賛し、本作を観てさらにその思いは確信へと変わったという。

ポルーニンに才能を持て余す危うさがあるのでは?という指摘に対して草刈は、「危ういというよりも、出来上がるのが早過ぎたのでは?もともとのポテンシャルが高い上に、努力も群を抜いていたので、スタートラインが全く違う。だから、子供の頃からバレエだけをやってきた彼が、『踊ることに何の意味があるのだろう?』とふと気付いたところから、自分自身の模索が始まったのだと思う」と分析。

中でも印象に残っているのが、本番前、楽屋で大量の薬を飲むシーンを挙げる。「痛み止めの薬を飲むとか、注射をするとか、栄養剤で気合いを入れるとか、私も何度も経験がありますが、心臓の薬まで飲んでいるのには驚きました。普通、怖さが先に立つものですが、彼は、そこまでやらないと自分の納得した踊りができないから平気で飲める。現在は危険だからやめたそうですが、踊りと身体のバランスを取るために自問自答する時間が必要なんでしょうね。モーツァルトと同じ、あまりにも早熟過ぎたがゆえの悩みですね」

また、時代の違いにも触れた草刈は、「昔のダンサーは、国を背負って踊っていたので、『やめる』という選択肢はなかったと思う。ところが、ポルーニンの時代はロシアも自由になり、才能があれば中学生や高校生でもロイヤル・バレエ団に留学することもできる。彼の苦悩は、自由の中で育ってきたからこその模索のように思います。私の時代もそうでしたが、身体が衰えて、本当に踊れなくなる時期が来て、初めて踏ん切りがつく。それが普通だと思うんですよね」

「僕はダンサーであるよりは、1人のアー ティストでありたい」とポルーニンは語っているが、早くも12月公開の映画『オリエント急行殺人事件』に出演し、俳優としての活動をスタートさせている。現役時代、『Shall we ダンス?』で映画デビューを果たした草刈にとって、そんな彼の活動はどう映っているのだろうか?「『Shall we ダンス?』に出演する前は、バレエ以外のお仕事はノイズでしかなかったけれど、主人(周防正行監督)に、『たくさんの人に知ってもらうことの大切さ』を教えられ、考え方が180度変わりました。ただ、私の場合、現役時代はあくまでもバレリーナを貫きましたが」と述懐する。

ダンサーとして、あるいはアーティストとして、10年後のポルーニンが楽しみだと言う草刈。「1度映画に出たからといって芝居がわかるわけでもない。映画を経験して、そこに何を見出だして、何を目指していくのか。あるいは芝居ではなく、やはり自分には踊りしかないと思って、バレエをさらに深めていかもしれない。10年後、彼がどの立ち位置にいるのかをぜひ見届けたい」と、最後は期待を込めて締めくくった。