この度、『ヨコハマメリー』の中村高寛監督 11 年ぶりの長編ドキュメンタリー『禅と骨』(配給:トランスフォーマー)が9月2日(土)よりポレポレ東中野、キネカ大森、横浜ニューテアトル他全国にて順次公開いたします。公開を記念して 7 月 23 日(日)に横浜市開港記念会館にてジャーナリスト・田原総一朗さん、映画監督、作家・森達也さんをゲストにお迎えしたシンポジウム付きの完成披露プレミア上映会を実施いたしました。作品の感想から、本作の製作に至った秘話、ドキュメンタリーと劇映画における“リアリティ”の違いとは何か、この作品だからこそ語られる非常に濃密な議論がなされました。

7 月 23 日(日)、先日 7 月 1 日に開館 100 周年を迎えた横浜市開港記念会館にて『禅と骨』のシンポジウム付きの完成披露プレミア上映会が開催され、ジャーナリスト・田原総一朗さんと映画監督、作家・森達也さんがゲストとして登壇した。本作は 2006 年に公開され大ヒットを記録したドキュメンタリー『ヨコハマメリー』の中村高寛監督が 11 年ぶりに放つ最新作で、横浜生まれの“青い目の禅僧”ヘンリ・ミトワを追ったドキュメンタリーである。ドキュメンタリーの手法のみならず、ドラマ、アニメなど、様々なジャンルを駆け巡りながら、ヘンリ・ミトワという人間に迫っていく作品に仕上がっている。

大きな拍手で迎えられた中村高寛監督は「『ヨコハマメリー』から月日が経ち“あの人は今”状態になっていたけれど、ちゃんとやっていました。(笑)」と挨拶し、会場の笑いを誘った。次いで感想を求められた森達也さんは、多くの人がつめかけた会場を見渡し、「ひとの映画、特にドキュメンタリー系はまずは嫉妬から入るので、この会場にこれだけの人が入っていることが羨ましい。」とコメント。最後に感想を求められた田原総一朗さんは、「とても面白い映画でした。」と感想もそこそこに、「ミトワ氏とはどう出会ったのか」と早速監督に質問を投げかけ、田原節をさく裂。終始、監督を質問攻めに。本作のプロデューサー・林海象にミトワさんを紹介され『ヨコハマメリー』の上映会で会ったが、初めてにも関わらずすごく怒られて嫌な第一印象を受けたといいうエピソードを監督が語ると、森さんが「原一男監督の『ゆきゆきて、神軍』の始まりが、今村昌平監督が原さんに面白い人がいると紹介したことから、というエピソードを彷彿とさせる」
とコメント。すると監督も「最初にとても怒られたこともあって、この人を撮ったら『ゆきゆきて、神軍』みたいになるな。」と思ったと語った。

またドキュメンタリーという手法だけではなく、ドラマパートを盛り込んだことについて話が及ぶと、森さんは「ドキュメンタリーにドラマパートがある作品は失敗すると思っていたけれど、この作品には違和感を全く抱かなかった。逆になぜこの手法を?」と問いかけると、「あまのじゃくだから、あえてやってやろうと思った。やるなら“接着剤”としての役割のドラマではなく、一つの劇映画として成立する物語のある作品を作ろうと思った。」と語った。ドキュメンタリーの第一線で活躍している者たちの熱き議論に、会場も大満足。盛大な拍手をもってシンポジウムは幕を閉じた。