『さよなら歌舞伎町』、『ヴァイブレータ』など、自分の居場所を探し求める大人たちの衝突や愛を、時に鋭く時に温かく描いてきた廣木隆一監督。どうしても描きたかったという自身の処女小説の映画化であり、文芸作品の映像化に定評がある廣木監督の真骨頂ともいえる新作映画『彼女の人生は間違いじゃない』が、7月15日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館他にて全国順次公開となりました。

週末になると高速バスで渋谷に向かい、円山町でデリヘルのアルバイトをする主人公みゆき。週末が終わって彼女が戻る先は、父と二人で暮らす福島の仮設住宅だ。ふたつの都市を行き来する日々に、彼女が求めたものとは─?
物語の舞台は、震災から5年後の、廣木監督の出身地福島。みゆきという体当たりの難しい役どころに全力で挑んだのは、『日本で一番悪い奴ら』の瀧内公美。亡き妻を今も慕うみゆきの父親には、多くの名匠に愛され、最近では『恋人たち』、『共喰い』での好演も記憶に新しい光石研。素性を隠すデリヘルの従業員には主演映画『横道世之介』で数々の映画賞を受賞、月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』主演など、今や人気、実力ともに兼ね備えた高良健吾。みゆきの同僚で市役所職員には、『聖の青春』でのプロ棋士役など、独特の存在感で異彩を放つ柄本時生と、物語に深みを与える実力派俳優が揃いました。

本日、初日舞台挨拶を実施。主演の瀧内公美をはじめ、光石研、高良健吾、廣木隆一監督、そして主題歌を歌うジャスシンガーmegが登壇しました。

日付:7月15日(土) 場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター
登壇者:瀧内公美(27)、光石研(55)、高良健吾(29)、廣木隆一監督(63)、meg(主題歌)


満席の中、瀧内は「暑い中、ありがとうございます。宜しくお願いいたします。」と観客に感謝の思いを伝え、光石も「今日は本当にお暑い中ありがとうございます。何かを見て感じて、どうぞ宣伝してください!」と挨拶。高良は「この映画が原作として生まれる時から話を聞いていたので、映画の公開まで立ち会えて嬉しいです。」と万感の思いを伝える。廣木監督も「今ここに居れることが嬉しく、興奮しています。」とようやく公開初日を迎え、笑顔を見せた。

本作の撮影を振り返り、瀧内は「経験したことのない感覚だけど、実際に起きたことでもあるから、(そういった感情を)表現しないといけないことは難しかったけれど、廣木監督とスタッフの皆さんに助けてもらいました。」主人公のみゆきに共感する部分はあるかと尋ねられ、「みゆきは前に進む力がある、自分の失った居場所を探す力があって、すごく強い人だなと思いました。」と振り返った。

オーディションで瀧内を抜擢した廣木監督は「最初にあった時に、この人しかいないと思った。瀧内の抱えている悩みが、主人公に通じるなと。でも現場ではなかなか手強かったね(笑)」と現場での様子を語った。
瀧内は「廣木さんは怖い部分もあるけれど、ちゃんと現場で、(みゆきの)感情が出てくるまで待ってくれる、優しい人。温かく見守ってくれる監督には、今まで出会ったことがなかったです。」と監督との出会いに感謝。
光石は「70年代に映画の世界に入った時の匂いを残している現場。映画の現場という感じ。瀧内さんが全身全霊でぶつかっている姿を見て、一生懸命やらないといけないと思わされましたね。」と振り返った。
廣木監督作品に数多く出演している高良は「今まで大切にしてきたものを現場で出し切った。普段、ご飯はよく食べに行くけど、仕事の現場は久しぶりだったので、今の自分はこれですいう感じを全て出しました。」と語ると、廣木監督も「とても成長したなと思った。とても助けられましたね。」と高良を讃えた。高良は「出会って12~3年経ってるんで、成長していないとね(笑)」と笑顔を見せた。

福島を舞台にしていることについて尋ねられた廣木監督は「福島のというより日本のどこかにある風景だと思って撮った。原作ものの映画もよく撮っているが、原作と映画はそれぞれのものと思ってやってきた。映画で感じたことをそのままやれれば良いと考えている。」と話した。

映画のタイトルにちなみ、各々の「私の○○は間違いじゃない」を発表。瀧内は「この仕事を選んだことは間違いじゃない」と掲げ、「作品を通して、お世話になった人たちに自分の成長を見せられるのはこの仕事ならではと思うんです。実は今日、両親が来ているんです!」と話すと、会場から大きな拍手が起こり、客席の両親に手を振った。
光石は「もう梅雨明けは間違いない」と断言。
高良は「“こうら”は間違いじゃない」と、自身の苗字のイントネーションが「こうら(語尾上げ)」でも「こうら(語尾下げ)」でも気にならなくなったと告白。
そして、廣木監督は「ボクの女好きは間違いじゃない」とぶっちゃけ、会場からは笑いが起こった。高良からも「10代の頃からずっと知っているけど、ご飯に行く度に毎回連れてくる女の人が違うんですよ。」と暴露された。

また、本作の主題歌を担当したmegさんが花束プレゼンターとして登場。主演の瀧内からは「作品すべてを包むような主題歌で、とても助けられました。」と主題歌への思いを語り、megも「廣木監督のふるさとへの思いを強く感じ、出演者のお芝居に心掴まれました。登場人物に少しでも寄り添えるようにと思って歌いました。」と語った。

11月に開催されるフランス最大の日本映画祭「KINOTAYO(キノタヨ)現代日本映画祭」のコンペティション部門に出品されることが発表されると、瀧内や廣木監督らは「嬉しいです、行きたい!」と喜んだ。

最後に、瀧内は「ここにいるキャストと廣木監督とみんなで真摯に、思いを込めて作った作品。どうやって伝わるかは分からないし、否定されるかもしれないけど、すべてを肯定してくれる映画だと思います。」と思いの丈を語り、光石は「しっかりと見ていただき、宣伝してやってください。」高良も「映画の表現で福島の今、残された人や残った人々を優しい眼差しで描いている作品だと思います。ぜひ多くの方に観てもらいたい。」と本作への思いを語った。そして廣木監督が「現地のスタッフがたくさん協力してくれた映画。皆さんに応援してもらえると嬉しいです。」と締めくくり、舞台衣装は終了した。