6/24(土)に、 LAを拠点に国内外で活躍する唯一無の俳優・桃井かおりと、世界の巨匠から熱いラブコールを受ける個性派俳優・イッセー尾形の、『太陽』(06)以来2度目となる豪華共演が実現した日本とラトビアの初共同製作映画『ふたりの旅路』(原題:Magic Kimono)の初日舞台挨拶が渋谷・ユーロスペースにて行われ、主演の桃井かおり、イッセー尾形、そしてラトビアから来日したマーリス・マルティンソーンス監督が登壇致しました。
上映後に行われた舞台挨拶では、桃井かおり、イッセー尾形、マーリス監督がお客さんからの質問に直接答えるティーチインを行い、客席は大いに盛り上がりを見せました。

■日程:6月24日(土) 15:20ー15:45(13:35〜の上映後)
■会場:渋谷・ユーロスペース スクリーン2 (145席) (東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 3階)
■登壇者(敬称略):桃井かおり(66)、イッセー尾形(65)、マーリス・マルティンソーンス監督 (56)

震災ですべてを失くした女性・ケイコ役の主演・桃井かおり、一言挨拶
桃井:ラトビアの街の中で、ものすごく大事な人をいっぱい失くしてきたラトビア人のマリス監督と、大自然と不条理な津波とか地震にやっつけられている私たち日本人と、失った人たちの思い出ごと育てるようなおとぎ話が作れるんじゃないかというのが映画のはじまりでした。とにかく、「死んでてもいいから、そばにいてくればいい」という、夫婦のいい話になったと思います。

ケイコの夫を演じるイッセー尾形、一言挨拶
イッセー ;マリス監督と、桃井さんに連れられて、ラトビアのリガという初めての街でお芝居をしたのですが、物語の設定とか自分の役割とか色々ありますが、それらを全部差し引いて、最終的に残るのは、”かおりさんと見知らぬ街の石畳の上で芝居ができる喜び”。これに勝るものはないなと今もつくづく実感しています。今日は、みなさんのご質問にお答えします(笑)
ラトビアから来日した、マーリス監督、一言挨拶
監督:ラブディエン!(ラトビア後で「こんにちは」と挨拶)
桃井:今、「おでん」っていったよね(笑)?
監督:9年前にとても素晴らしい出会いがありました。桃井かおりさんとの出会いです。桃井かおりさんに、映画の制作の過程でも、ずっと支え、信頼、そしてアドバイスをもらいました。感謝しています。同じように、イッセー尾形さんとも信頼し合って一緒に仕事ができたことを嬉しく思います。

MC:ここからは会場の皆さんからの質問を受け付けたいと思います。
観客:素敵な映画をありがとうございました。ちょっと泣いてしまいました。今回は、台本は最初にしっかりしたものはあったのでしょうか?
桃井:台本は勿論あったんですね。でも、ラトビアから英語に直して、英語から日本語に直しているから、もう、わけわからないの(笑)もう想像して、こういう映画になるといいなって、それぞれが違った違った方向に走った結果、こういう映画になったって、そういうところありますよね(笑)
イッセー :僕は、台本というか、紙(笑)よりも、かおりさんの言葉でここはこんなシーンなんだと感じました。(自分が演じる)男がべらべらしゃべる料理の話、あそこのシーンは大事だから、あれは”紙”をみましたね(笑)
桃井:セリフは言ってもいいし、言わなくてもいいの(笑)。それはね、大きな信頼ですよね。動きも何回もリハーサルするんじゃなくて、やってもみようってところでやってみて監督にみてもらいました。
イッセー :台本通りやりました、監督さんもそうだね、台本通りだね、と。でも、それでは何かが足りないね、とずっと言われる映画だと最初は思っていたんです。なので、きっちり台本通りやるよりは、例えるなら、サッカーで練習は一生懸命やったけど本番で負けちゃったらしょうがない、みたいな。アスリートのような本番への感覚、その感覚がとても大事な映画だと思いました。
桃井:監督は、「こいつらが勝手にしゃべるんだ、本当に困るんだ」って言ってる?(笑)
監督:お二人の俳優が自由に演技なさるのを、見守っていました。編集するのは自分だから、最後はどうにでもなると思っていました。(笑)
桃井、イッセー:本音ですね(笑)
桃井:ラトビアって綺麗な街なんですね。全部街を使わせていただいて、役者もラトビアで映画賞をとった俳優だし、市長にも助けてもらったし、大使館も協力してくれて。日本映画がここでロケをするからではなく、マリス監督がラトビアの方から尊敬されている芸術家なので、みなさんにご尽力いただけたんですね。で、日本に帰ってきたら神戸の方に助けてもらうんだけど、いまひとつ日本人の方は協力の力が弱く、桃井かおりとしては残念だった(笑)。AKBの一人でもいれとくべきだったかって(笑)。でも本当にいい撮影ができて、私たちの年齢のいい夫婦の話ができたような気がします。
イッセー:かおりさんは、どのシーンが一番印象に残っている?
桃井:一番最初の道、二人で喧嘩している夜道のシーンですね。
イッセー:あそこはラトビア・リガの旧市街で、昼間は観光客の方がいっぱいいて、夜は若者たちで賑わっていて、すごく活気があるんですけど、街が暴力的じゃない、ひっそりした路地を選んで撮影したんですよね。
桃井:イッセーさんも、(台本のセリフを)言ったり言わなかったりなので、途中でそこのセリフを入れてくる!?ってところがあったので、私自身、本当によくイッセーさんのセリフの内容に聞きいったシーンでした。
イッセー:あれは、マリス(監督)が編集でセリフいれたんじゃない(笑)?
客席:画が左から右に流れてる印象がありました。そういうところは意識して立ち位置として立ったのですか?
桃井:カメラ的なプラン設計は照明も含めてとてもきっちり出来ていて、無駄がなく、大きなハリウッド映画のシステムと同じくらいかっちりしていました。監督とカメラマンで作り上げられていたカット割りなので、その枠を壊さない程度に自由に動くというのが最低ルールでしたね。
イッセー:左から右へ動いてた?気づかなかった(笑)。怒るんですよ,カメラマンが。それ以上動くんじゃない!その線よりこっちに来るんじゃないって(笑)
桃井:普通俳優が想定される速度とは違う速度で私たちが歩くから(笑)「かおり、ここで止まってセリフ言えないの?」って。「ここで言わないと、(撮影ができる)ノーチャンスだから)ってカメラマンに怒られるんです(笑)
反対に、おにぎりのセリフのシーンは、あのセリフをいれたいなとマリスと言っていたんですけど、ちょっと質問がずれていってしまって。それが面白いっていうシーンだったんですけど、質問がずれていることすら、もうわからなくなっちゃう現場だったので(笑)
イッセー:今みたいな感じね(笑)
桃井:この映画にとっては大事なことを言ってるんだけど、カメラマンはただのカメラ中継の動きをしているんで、「おいおい、今いいこと言うのに、(カメラ)いっちゃうんかい!」って(笑)。で、言い終わった頃にカメラが戻ってきたりして(笑)
イッセー:こっちの気持ちと一致していないのね、カメラが。
桃井:なので、よくあるパターンにはまらない映画になったかなって。日本で封切りになれるなんて本当に嬉しくて。ここ何年か私が出た映画、映画祭でしかみれないっていう、本当にレアでしょ(笑)?
イッセー:日本の皆さんにみてもらえて、今度は、ラトビアのリガでも9月に公開するんですよね。
桃井:みなさんも、その頃リガに旅行に来て!琥珀もお安く売っています(笑)
桃井かおりさんと、イッセー尾形さんの絶妙な掛け合いが、劇中の長年連れ添った夫婦のような阿吽の呼吸で場内を沸かせ、大いに盛り上がった初日舞台挨拶となりました。