この度、大ヒットを記念して、急遽トークイベントを開催いたしました。会場は満席。ゲストは、本作の優しさに心をうたれた、DJ・作家のロバート・ハリスさん。「乗り越えられない悲しみだってあるし、過去の苦しみから逃れられないことだってある。
でも、そんな人間にも生きていく権利があるし、人を思いやる気持ちだってある。そう訴える」「この映画には嘘っぽいドラマやカタルシスはない。あるのは人々の心の機微を誠実に捉えていこうとする静謐な眼差しだ」(Pen5/1発売号、ロバート・ハリスさんの本作紹介文より)
世界中を旅し、人生経験豊富なハリスさんならではの視点で、映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を語っていただきました。

日時:6月10日(土)
トークイベント 15:55~16:15予定 (13:20の回上映終了後)
場所:シネスイッチ銀座 (〒104-0061 東京都中央区銀座4丁目4−5 旗ビル3F シネスイッチ2)
登壇者:ロバート・ハリスさん(DJ・作家)

「素晴らしい!ものすごく感動した!」
アメリカのご友人から本作の噂を聞きつけマスコミ試写で一度目のご鑑賞を、そして本日二度目の鑑賞をされたロバート・ハリスさん。ご感想を伺うと「一度見て、ものすごく感動しました。二度目も、やはり素晴らしかった。リーの心の機微やディテールを読み解くことができて、だからこそ彼の最後の台詞「I can’t beat it.」(僕は乗り越えられないんだ)がより心にしみました。
きっと、リーがこの言葉を言えたことに、この映画の救いがあったと思う」と始まりから、本作への熱い想いを語ったハリスさん。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』は 今までのハリウッド映画にない人間ドラマを描いている!
ハリスさんは、「今までのハリウッド映画は「悲しみは乗り越えられる」というメッセージが込められているものばかり。しかし本作は「乗り越えられない悲しみもある。それでも人は生きていける」ということを教えてくれました。だからリーは空っぽな状態でも、お兄さんのことを愛したし、甥への愛情を持てた。そこが美しかった。今まではこんなハリウッド映画はありませんでした。
「こんな企画が、ハリウッドでよく通ったな!」と思いましたよ(笑)。でもそれはプロデューサーのマット・デイモンのおかげもあるでしょう。彼はこの映画の原案から携わっていたけれど、脚本を見て、監督のケネス・ロナーガンに「君がふさわしい」と監督を譲り、全面協力したというのですから。」と、今までのハリウッド映画にはない美しい物語だからこそ、本作に強く胸を打たれたのだそう!

マット・デイモンじゃなくて、ケイシー・アフレックが演じて正解?!
「ケイシー・アフレック過去作も観ていて、彼は怒りと、その奥の孤独を秘めている俳優だと思っていました。だから見ていて、恐ろしさと同時に悲しみを感じる。そんな彼がリーを演じていて、ものすごく自然だと感じました。きっとマット・デイモンじゃ出来なかったことでしょう。ケイシーは、昔やんちゃをして干されていたことがありましたが、本作で復活を遂げて、アカデミー賞のときに、実兄のベン・アフレックも泣いて喜んでいて、非常に良かったな、と。そして、お兄さんよりいい役者だと思います。(笑)」と、ハリスさんは本作にはケイシー・アフレックが必要不可欠だったと、彼の演技も絶賛!

小津安二郎を彷彿!監督ケネス・ロナーガンの手腕とは。
「この映画には、悲劇の中にも、監督の優しさや思いやりの目線が詰まっているように思える。昔、日本映画の字幕翻訳をやっていたことがあるのですが、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を見ていて感じたのは小津安二郎の映画。派手なドラマチックさはないけれど、人々の言葉の裏に感情が見えますよね。劇中、リーが大事に持っている3つの写真がある。誰の写真が画面には映らないけれど、想像できるのです。そのような細部への配慮が、この映画にはすごく感じる。だから、何度見ても楽しめるのではないでしょうか。」と、作家ならではの視点で鋭い考察をされたハリスさん。「小津を意識したのか、ケネスに会ったら聞いてみますね」
と冗談も。

そして最後に日本での大ヒットをうけて「この映画が多くの人を魅了するのはなぜなのか?」という問いに「“悲しみをどうやって乗り越えるのか”という普遍的なテーマに多くの人が共感するのだと思う」と答えられたロバート・ハリスさん。
「本作で感動された方?」という質問には満席の客席からほぼ全員の手があがり、「二度目以上の鑑賞の方?」という質問にも幾つか客席から手があがっていました。その様子をみて「多く方にこの映画が愛されていて本当に嬉しいです。ぜひこの感動を、周りの友人にも伝えてくださいね。」と締めくくり、大きな拍手の中、トークイベントは終了しました。