『私の男』の熊切和嘉監督最新作、『そこのみにて光輝く』の綾野剛主演の『武曲 MUKOKU』が、本日6月3日より全国公開いたしました!

本作は矢田部研吾(綾野)と村上虹郎演じる天衣無縫の高校生・羽田融(村上)との宿命の対決を軸に、“父と子”“師匠と弟子”の闘いと絆を描く、激しくも熱い感動の物語です。本日、下記の概要で初日舞台挨拶を実施いたしました。

綾野剛は、登壇して客席を見渡し「武蔵野館・・・やっぱりいいですね、この雰囲気」と満席の様子に満足げな表情で挨拶。
村上虹郎は、「この日を迎えることができてとても幸せです」と挨拶。
熊切監督は、「上映後の舞台挨拶は、どういう反応があるかいつも不安なんですが、皆さんの表情を見てほっとしました。今日は本当に感謝しかありません」と挨拶。

熊切監督と再びのタッグとなった本作に臨むにあたっての心境について、綾野は「熊切監督とは5年前に『夏の終り』でご一緒したんですが、その時は熊切組に入れるという喜びばかりで地に足がついていなくて、すごく心残りがありました。でも監督は、その後も“必ずまたやろうね”とずっと言ってくださって、その言葉を信じながら今日まで来て本当によかったなと思います。主役として現場に立ちましたが、監督に自分の身を委ねて、“チーム武曲”の一員として現場に臨んでいました」と振り返る。

念願の熊切組参加となった村上は、「最高でした!」と語り、「監督とは現場に入ってからはほとんど会話した記憶がないんです。でも、誰よりも、僕らなんかよりキラッキラした目で僕らをずーっと見つめてくれていました。タオルを頭にまいて武士のような恰好でカメラの横で見守ってくれるんです。それで、“いいっすねー”と言ってくれるんです」と監督のふたりへの信頼を振り返ると、監督は「そうですね・・・」と照れながら同意。綾野も、「カットがかからず“いいっすねー”って・・・OKなのかどうなのか分からない時もありました(笑) でも、あの“いいっすねー”を言われるとホッとしたよね・・・」と村上に語りかけ、現場の独特な雰囲気を振り返る。

監督は、脚本の0稿を読んだ時の感想として、「セリフに頼らず、肉体表現で見せる映画だと思い、ハードルが高いんだけど、挑戦したいと思いました」と語り、「このふたりを撮っていると自分の運動神経がよくなったような錯覚に陥れるんです(笑)」と振り返った。

原作の藤沢周氏による映画を観ての「すごい迫力だった。僕が研吾という人物、融という人物について、こんな人だったんだと逆に教えられた」というコメントが紹介されると、綾野は「本当に恐縮です。原作がいいから映画もここまでたどり着けたと思います。全く救いがなく、自分の役をかわいそうと思ったのはこれが初めてですが、同時に、ここまで生きている実感を得られる役というのもほとんど初めてで、体内に入ってくるものを感じていたので、それに浸食されてもいいと思いながら演じていました」と語る。村上は、「僕は原作を先に読んでいたのが助けになりました。融は剣道を知らない初心者なんですが、運動神経抜群というイメージを持っていて、古武術のような構えも自分の考えでやってるんです。誰とも話さずこういう感じかな・・とやったのも、原作からもらったインスピレーションによるものです」と振り返る。

続いて、熊切監督の映画人生を変えた世界的巨匠のジョン・ウー監督からの「いろんな面で人を勇気付ける素晴らしい映画。剣道という日本古来の武術を題材としながら、現代を生きる若い世代に希望を伝えている。」という絶賛のコメントが紹介されると、綾野も村上も、あまりのことに驚きを隠せない様子だった。(コメントの全文は公式サイトよりご覧いただけます)
映画のクライマックスである台風の中の決闘シーンについて、監督は、「このシーンは3日かけて撮影していて、色々仕掛けもあってふたりは本当に大変だったと思います。僕はすごく楽しかったです(笑)」とふたりをねぎらうと、綾野は「疲弊していく様子をちゃんと撮ってくれる監督なので、ひたすら疲弊していけばいいと思いながらやっていました。楽しくて仕方なかったです。“殺してやるから早くかかってこい!”みたいな(笑)」と、劇中の自身のセリフを交えつつ、撮影の様子を振り返った。一方村上は、「このシーンは後日アフレコを撮ったんですが、本当に面白かったです。ふたりで回りに何もないのにマイクの前で“ワー!”“ウオー!”ってやって(笑) この時の綾野さんのラスボス感はすごかった・・・」と振り返った。
続いて、映画の設定にちなんで、<最近何かと戦った>エピソードを披露することに。
綾野は、「最近、自分と向き合うことをやめると自分は役者としてやっていけないんだな・・・と思ったんです。肉体的にも精神的にも自分と向き合っていない作品はお客さんの心にも届かないと思うし、どんなジャンルの作品でもまずは自分と向き合って役を演じているから。」と熱く語る。村上は、「この間、車の教習所を卒業したんです。そこで応急救護の訓練って芝居をするんですけど、どうも数人に“あいつは役者だ”ってバレていたんです。役者が本業なので、これも芝居だ、ちゃんと声を出していこう!と思った」と、大きな声を出しながら訓練の演技に臨んだことを明かすと、会場はクスクスと微笑ましい笑いに包まれた。

最後に、綾野から「映画のキャッチコピーは“破滅か、救いか――”になっていますが、愛に渇望した男たちが地獄に魅せられて、その中から光を手繰り寄せる作品です。この映画を観た時に皆さんの中に小さな希望や光が見つけられるといいなと思います。撮影の時は相当激しく重い作品になるだろうと思ってたんですが、出来上がった映画には熊切監督の映画への愛や、村上くんの瑞々しさが映っていて、確かな希望と光がそれを求めた人間たちにちゃんと注がれていました。」とメッセージが寄せられた。