。5/27(土)に、第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品、河瀨直美監督作『光』の初日舞台挨拶が新宿バルト9にて行われ、音声ガイドのナレーションとして本作に登場する樹木希林のほか、初日舞台挨拶のためにカンヌから戻ったヒロインの水崎綾女、神野三鈴、藤竜也が登壇致しました。
初日を楽しみにしていた満席の会場の中、現地時間28日(日)のカンヌ国際映画祭の結果発表直前に公開初日を迎えた本作。カンヌで結果発表を待つ河瀨直美監督と永瀬正敏の2人と、リアルタイムでやり取りを行い、日本とカンヌで映画公開をお祝いしました。

映画『光』 初日舞台挨拶概要
■日程:5月27日(土) 14:20ー14:50(上映後) 15:00-15:10(囲み取材)
■会場:新宿バルト9 スクリーン8(251席+車いす2席) (東京都新宿区新宿3丁目1-26新宿三丁目イーストビル13階)
■登壇者(敬称略):水崎綾女(28)、神野三鈴(51) 、樹木希林(74)、藤竜也(75)
Skypeでの参加:河瀨直美監督(47)、永瀬正敏(50)

本作は視力を失いゆくカメラマン・雅哉(まさや)と、単調な日々を送っていた美佐子(みさこ)が、ある仕事をきっかけに出会い、最初は反発するものの次第に惹かれ合うという、河瀨(かわせ)監督が挑む珠玉のラブストーリー。雅哉がやがて見えなくなる事を知りながらも、互いの心を見つめようとする、切なくも希望を感じさせてくれる物語です。
映画公開初日、カンヌで賞の受賞を待つ、河瀨直美監督、永瀬正敏さんに樹木希林さん、藤竜也さんなど登壇者がエールを送りました。

ヒロイン・尾崎美佐子(おざきみさこ)役の水崎綾女(みさきあやめ)、一言挨拶
水崎:すごく素敵な皆さんと一緒にこの作品を撮ることができてとても嬉しく思っています。楽しんでいってください。

美佐子の上司・佐野智子(さのともこ)役の神野三鈴(かんのみすず)、一言挨拶
神野;『光』をやっとみなさんにお届けることができて心より嬉しく思っています。

劇中映画の主人公であり、その映画の監督でもある北林(きたばやし)役の藤竜也(ふじたつや)、一言挨拶
藤:映画中の映画の『その砂の行方』ですが、もう少しすると本編と同時上映されるようなので、そちらも楽しみにしてほしいです。

カンヌ国際映画祭への参加のため、残念ながら初日舞台挨拶に参加できなかった河瀨直美監督、永瀬正敏の代わりに、音声ガイドのナレーションを務めた樹木希林が駆けつける
樹木希林、登場するなり、本日の登壇に至る経緯を、河瀨監督の関西弁のモノマネを交えながら、一人二役で再現。
<監督風に>「あのね〜河瀨直美なんやけど。カンヌのコンペに選ばれたんやて。でな、最後まで永瀬くんとカンヌにおりたいから、東京の舞台挨拶に行かれへんねん。それで代わりに行ってくれへん? 」と言われ、<樹木>「なんで私が行くんですか?よっぽどもの好きなおばあさんだと思われるでしょ」と言いました。すると<監督風に>「でもな、『光』で (音声ガイドの)声やってるやろ?」<樹木>「あれはタダじゃないですか。これで最後だからと。もう困った時の樹木希林というのはナシよ」とお伝えしお断りしましたが、強引な宣伝部に言われて来ました、結局!」

サプライズゲストとして、カンヌにいる河瀨監督と永瀬も登場。 満席の会場、大拍手!!!!
藤:永瀬さん、元気?飲んでる?直美さん、明日(受賞式)ですね。永瀬さんもそうですけど、もういっぺん上映後に見せたときより、さらに大きな涙と笑顔をもう1回みられることを期待しています。

樹木:確かにね、コンペに登場するわけだから、カンヌの賞はいただければ、そんな幸せなことはないんでしょうけど。何か作っている時はすごく綺麗な心を持って作るんですけど、脚光を浴びた瞬間に人の心は一変するんですよ。変わることによって潰れる人もいるし、花開く人もいる。その人の器量なのよね。永瀬さんはまあ大丈夫ね。河瀬さんはもともとちょっとね、勘違いしているところがありますから(笑)。
どの女優よりも、素敵な洋服着てね(笑)そのへこたれなさがあれば、大丈夫ね。これからもいい映画を作ってもらえれば。私は賞はどっちでもいいと思っています。

監督:街を歩いていても、「すごくよかったです」「すごくあたたかい気持ちになりました」「私のパルムよ」と言って頂けることがあって。映画を観終わった人たちと一体感になれる瞬間、それがすごく嬉しくて。映画っていうのは一体感なんですよ。人と人が繋がっていく瞬間の出会いを作ってくれるものであって、エンタテインメントの要素もあるけど、生きる上での力になる要素もあって。カンヌであの瞬間を迎えた時にそう感じました。
樹木さんに「賞が問題じゃないんだよ」と言って頂けることによって、すごくぐっとくるものがあります。私たち映画人はその思いを繋ぎながら、日本人としても自分としても真摯に映画を作り続けていく先に、『光』があるんだなって実感できました。

樹木:河瀨さんはなんでこんなにカンヌに可愛わいがられるのかしら?

監督:映画を好きな人がいます、カンヌの中には。その人たちが、私がまっすぐに映画を作っていることを大事にしてくれる。自分たちがみたことのない日本の風景とか心模様を抱きしめようとしてくれる。デコボコしている作品でも、その先を見つけようとしてくれている。

樹木:永瀬さん、今回の手応えはどうですか?

永瀬:樹木さん、今日もノーギャラでありがとうございます(笑)。できれば毎回共演させて頂きたいと思っています。上映の後、インターナショナルの取材がいきなりものすごい増えて。「すべての人々に対してのラブレターだ」とスペインの記者に言って頂いたり。人種は違うんだけど、皆さん理解されていて。希林さんにも、皆さんにも直接言葉を聞いて頂きたかったくらいあたたかい言葉を沢山頂いています。

樹木:希林さんはいいのよ。音声ガイドの声しかやっていないので。

永瀬:希林さんの声で「雅哉」は救われて、『光』に連れて行ってもらったので、感謝です。

樹木:うまいこと言うわね〜。この手でぜひ、再婚をよろしく!

監督から一言挨拶:インターナショナルの取材も60媒体以上受けたんですけど。皆さん映画を愛していると思うんですね。映画ってなんだろうって、光ってなんだろうって思います。カンヌの一番メインの会場が、ルミエールっていう「光」という名前がついているですけど、長い歴史のあるこの映画祭が人類を救うのかなって、大きなことを言っているようなんですけど、実は身近なところで、映画を愛して、それを見た人たちも心を豊かにしていることがとても素晴らしいことなんだなって思います。
カンヌは人を他の世界に連れて行ってしまうようなところだけど、常に色んな変化がある。カンヌは留まっているわけではなく、いつも進化している。その映画祭のコンペティションの19本に選ばれて、今この瞬間にここにいることがすごく嬉しいですし、映画をまた好きになったな、と思いました。『光』を届けようとしてくれるすべての人たちに感謝しています。

永瀬正敏から最後に一言挨拶:監督は本当に今回ご苦労なさいました。撮影に入る前、撮影の寸前も。でも、そういうところを人にあまり見せないで映画を作って、しかも僕をカンヌに連れてきてくれました。本当に感謝です。僕も、「役者ってなんだ。人ってなんだ」を学ばせて頂いた現場でした。みなさんに『光』が届きますうに!

日本時間29日(月)未明に発表される、カンヌ国際映画祭の各賞への期待が高まる中、カンヌ現地での冷めやら䛼熱気が、初日を迎えた日本の観客にも伝わって来るような初日舞台挨拶となりました。