黒沢清監督の最新作『散歩する侵略者』が、現在開催中の第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、フランス現地時間5月21日(日)16:30(日本時間23:30)、ワールドプレミア上映が行われました。
映画『散歩する侵略者』は劇作家・前川知大率いる劇団イキウメの人気舞台「散歩する侵略者」を映画化。数日間の行方不明の後、夫が「侵略者」に乗っ取られて帰ってくるという大胆なアイディアをもとに、日常が異変に巻き込まれていく世界を描く—サスペンス、アクション、そして究極のラブストーリーと、一つのジャンルには収まらない唯一無二の魅力を持つ本作。
長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己ほか高杉真宙、恒松祐里と日本映画界を代表する豪華キャストを迎え、黒沢清監督が新たなエンターテインメントに挑戦しています。
今回の公式上映には黒沢清監督と出演者の松田龍平さん、長谷川博己さんが参加。松田龍平さんはデビュー作『御法度』以来17年ぶりのカンヌ、長谷川さんはカンヌ初参加となります。

上映前のレッドカーペットでは、3人がタキシード姿で登場。世界各国のメディアと各地から訪れた多くの観客の声援に、笑顔で応えながら、会場に向かいました。
公式上映時の挨拶では、黒沢監督は「本当に嬉しいです。この2人の大好きな俳優とこの舞台に立てたことがまるで夢のようです。カンヌ映画祭がこの映画の「個性」のようなものを目ざとく発見して選んでくれたのだと思っています。「個性」を発見されることが映画にとって一番名誉なことだと僕は考えています」とスピーチ。次に松田龍平さんが一言目に「緊張しています」と話すと、観客からは温かい拍手が起こり、会場は一気に和やかなムードとなりました。続けて「黒沢監督と一緒に撮影ができて、この作品の中で沢山の影響を受けました。黒沢監督と長谷川さんと3人で、ここでみなさんとお会いできたことをとても幸せに思います」と挨拶。長谷川博己さんは「ボンジュール。コモサバ? ジュマペール、イロキ アセガワ。ですが、本当の名前はヒロキ ハセガワです。「H」(アッシュ)を発音して下さい」とフランス語でジョークを交えて自己紹介。続けて「この場に立てて本当に嬉しいです。憧れの黒沢監督の作品に出演させていただいて、とても楽しい、刺激的な日々でした」と挨拶しました。その後、3人は超満員の観客とともにワールドプレミアを鑑賞。場内では何度も笑い声や歓声が起こり、上映後のスタンディングオベーションでは「ブラボー!」という声が飛び交うなど大きな盛り上がりを見せました。

2001年 『回路』で国際批評家連盟賞受賞、2008年『トウキョウソナタ』で「ある視点」部門審査員賞受賞、 2015年 『岸辺の旅』で「ある視点」部門監督賞受賞と、過去、カンヌ国際映画祭で3度の栄冠に輝く黒沢清監督。本作の受賞にも期待がかかっております。授賞式はフランス現地時間5月27日(土)19:00(日本時間28日(日)AM2:00)から行われる予定です。

●黒沢清監督
(公式上映時ご挨拶)「本当に嬉しいです。この2人の大好きな俳優とこの舞台に立てたことがまるで夢のようです。これから観ていただくのは日本の典型的な娯楽映画で、笑いもあり、涙もあり、サスペンスもあり、という楽しい作品に仕上がっています。その中にある「個性」のようなものをカンヌ映画祭が目ざとく発見して選んでくれたのだと思っています。映画は俳優やスタッフ、時代などがたった一回だけ出会って、その時限りで創られる芸術です。ですから、その中で「個性」を発見されるのが、映画にとって一番名誉なことだと僕は考えています。お客様の一人ひとりがこの映画の中の特別な何かを少しでも感じてくれたら嬉しいです。ありがとうございました」

●松田龍平(加瀬真治役)
(公式上映時ご挨拶)「緊張しています。メルシー(ありがとう)。黒沢監督と一緒に撮影ができて、この作品の中で沢山の影響を受けました。黒沢監督と長谷川さんと3人で、ここでみなさんとお会いできたことをとても幸せに思います。ありがとうございます」
(上映後の合同会見時・コメント)「前回から17年ぶりで、当時はまだ子供だったので、実はあまり覚えていないのですが、あの時からカンヌも自分も変わりましたね。公式上映では、お客さんの反応を感じながら、いろいろなことを考えながら観ていました。ものすごいプレッシャーでもあるのですが、妙な高揚感や心地の良さもあって、映画ってやっぱりいいなと改めて思いました。(「またカンヌにきたいか?」という問いに)また来たいに決まってるじゃないですか(笑)。ただ、呼んでいただく身なのでそれに恥じない仕事をしないといけないと思います」

●長谷川博己(ジャーナリスト 桜井役)
(公式上映時ご挨拶)「この場に立てて本当に嬉しいです。憧れの黒沢監督の作品に出演させていただいて、とても楽しい、刺激的な日々でした。それだけではなく、こうやってカンヌ映画祭というご褒美まで貰えること自体が物凄いことだなあと改めて感じています。是非楽しんでください」
(上映後の合同会見時・コメント)「実際に公式上映を観て、映画って劇場でお客さんが入って、一つまた変わるんだなと感じました。特に今回は海外のお客さんだったということもあり、その変化を肌で感じられたのは、すごくいい経験だったと思います。自分自身、もっとしっかりやらないとなって、改めて思いました」