国内外、数々の映画賞を受賞し、大ヒットした『悪人』から6年。その『悪人』製作チームで新たに挑戦した意欲作『怒り』。豪華キャスト陣が出演し、早くも今年NO.1の話題作となっております『怒り』は、9月17日(土)全国324スクリーンにて公開され、公開から6日間(9月22日まで)で観客動員数43万人、興行収入5億6千万円を記録するヒットスタートをきっています。

そんな本作がこの度、第64回サン・セバスティアン国際映画祭、邦画で唯一選出されたコンペティション部門に出品され、主演の渡辺謙、李相日監督が招待を受け、現地時間9月23日(金)にプレミア上映を行いました。

サン・セバスティアン国際映画祭は今回で64回目を迎えるスペイン最大の国際映画祭で、9月16日(金)〜9月24日(土)まで開催されています。ヨーロッパにおいてカンヌ、ベルリン、ヴェネチアに次いで重要な映画祭とされており、国際映画製作者連盟公認のコンペティション映画祭です。同映画祭は「映画祭を通して映画業界や芸術文化の発展に寄与すること」を目的とし、世界各地から集められた最新作が上映されます。毎年多くの映画監督や著名人がゲストとして訪れ、国内外のメディアからの注目度も高いことから、映画製作者にとって海外映画ファンの獲得や国際展開を考える上で重要な映画祭となっています。
今年もまた、リチャード・ギア、シガニー・ウィーバー、ジェニファー・コネリー、イーサン・ホーク、ユアン・マクレガー、ジョセフ・ゴードン=レヴィットなど、数多くのハリウッドスターが訪れました。

9月23日(現地時間)の公式上映にあわせて、主演の渡辺謙と李相日監督はスペイン入りし、上映に先駆けてサン・セバスティアンの名所であるウルグル山を訪れました。
サン・セバスティアンの印象について渡辺は、「サン・セバスティアンがあるバスク地方はスペインの中でも言語体系や意識が違ったりと、ある種独立している感じ。そういう意味では、文化を受け止める土壌もまた一つインディペンデントな雰囲気があるのかなという気もします。宿泊しているホテルの周りは映画祭一色で、地元の方々が手作りでずっと64年間作られてきた映画祭なのかなという印象です。」とコメント。
初めてサン・セバスティアンを訪れた李監督は「(先日訪れた)トロント国際映画祭はいろいろな場所から人が集まっている感じがしましたが、ここは地元の人に愛されている映画祭という雰囲気。自分の作品にスペイン語がつくのは初めてなので新鮮ですね。スペインは「情熱」というイメージを思い浮かべるので、パッションの強い『怒り』は相性が良いのかなと想像しています。」と、感想を語りました。

また上映を前にして渡辺は、
「サン・セバスティアンの人たちは、何か日本人と合う気がします。食べ物もすごく近い感じがするし、文化的な感じや伝統の感じも、日本人が親しみやすい環境がある気がするので、おそらく心情の部分をもっと深いところで受け止めてもらえるのではないかな。」と期待を膨らませていました。

ウルグル山を訪れた後、
14:30からKursaal Congress Centre(クルサールコングレスセンター)で行われた公式会見に参加。
冒頭に渡辺が「Kaixo Donostia!(カイショ ドノスティア!【訳:こんにちはドノスティア!(ドノスティアとはサン・セバスティアン通称名です)】」とバスク語で挨拶し、続けて「ここサン・セバスチャン映画祭にこの映画を持って来られて、大変うれしく、誇りに思っております。人生と同じく複雑でなやましい作品ですが必ず心のどこかに響く作品だと思っています。みなさんにどんな風に受け止めてもらえるかとても興味があります。エスケリック アスコ!(どうもありがとう!)」と流暢なスペイン語でコメント。
海外メディアからの質疑応答に答えました。

映画を見た周りからの反応についての質問に対し渡辺は「映画をご覧になって頂いた方々が、役の気持ちだけでなく、全部自分自身に一回置き換えてご覧いただけるような描き方になっているので、どう自分の中で制御していいのかわからない、この映画に対する気持ちを分析したらよいのかわからないという声を多く聞きます。自分が人を信じられないという気持ちと同じようなことをこの映画で体験しているのだと思います。李監督は、何かを表現するということを求めるのではなく、その先にある彼らが何に苦しんで、何に悩んでいるのかということを求めていて、僕も役を作ることに悩むというよりは、そのシュチエーションの中で自分は今何に苦しんでいるんだろうということに対面しなければいけなかった。自分自身も撮影中は役と同期して苦しい部分が多くありました。」とコメント。
続いて李監督が「映画の中で出てくるセリフでも「本気はなかなか人には伝わらない」という言葉があるのですが、自分が本気で誰かに理解してほしいことをなかなか伝えることが出来ないもどかしさであったり、人はすぐ自分と何かが違うということで排除してしまうところがあるので、映画を観た人が、作品の中のキャラクターたちが本気で抱えている問題が、自分のように感じられるにはどうしたら良いか、悲しみの奥の根っこには何があるのかを観ている人に感じ取ってもらいたいと思って表現を選んでいます。」と思いを語りました。

18:15からKursaal Congress Centre前で行われた上映前のカーペットアライバルには、10代からシニア層まで幅広い層の観客が劇場前に詰めかけ、渡辺は大きな声援に包まれながら、サインや写真の求めに応じていました。
18:30から行われた上映は映画祭最大級のキャパシティを誇る劇場を埋め尽くす1800人もの観客が来場。場内満席の大盛況の中、上映されました。

本編上映後、観客総立ちの拍手喝采に。さらに劇場ロビーでも映画を鑑賞した観客による盛大なお見送りを受けた渡辺と李監督。興奮した1800名もの観客の拍手と歓声は、広いロビーを埋めつくし感動的。その中央を歩く渡辺と李監督もまた、観客の思いに胸を打たれながら会場を後にしました。

上映終了後のコメント
渡辺謙コメント
映画を観たお客様が感じたものというのは、我々は推し量るしかないのですが、上映後、見送られながら階段を降りて振り返った時に、監督と僕とで映画にかかわったスタッフ・キャストの熱い想いを背負って拍手を受けている気持ちがすごくしました。ものすごい力で我々の思いを受け止められ、胸をうちました。
サン・セバスティアンは、観客が観客のために祭りを作っている感じがします。そこに一緒にいられたことが心から嬉しいです。また来たいというモチベーションになります。

李相日監督コメント
トロント国際映画祭の上映以上に、お客様は映画を集中して観ていました。冒頭のあいさつの頃は、お客様がざわざわしていたのですが、映画開始のワンカットめから水を打ったように静かでした。(上映後の見送りでは、)観た直後の人たちの気持ちというか、何かを僕らに返そうとする気持ちにやられました。