この度9月23日(金)(現地時間)、美食の街として知られるスペインのサンセバスチャンに開催されたサンセバスチャン国際映画祭のキュリナリー・シネマ部門にて本作がクロージング作品として上映されました!会場は満席で、エンドロール直後から大きな拍手が沸き起こりました。

日本からは遠藤尚太郎監督と、奥田プロデューサーが登壇し、舞台挨拶では遠藤監督が撮影当時からこのサンセバスチャン国際映画祭での上映を目標にしていたことや、
その目標が叶った心境を語りました。終演後は、何人もの観客が監督のもとにき、感想や質問を熱心にしており、Q&Aでは司会者や作品を鑑賞したばかりの観客からの質問に対し、本作に込めた思いや、制作時の裏話などを語りました。

また、上映後にはマドリードで絶大な人気を誇り、ミシュランの一つ星を獲得した日本料理店「KABUKI」からシェフのリカルド・サンツ氏が
本作『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』をイメージして考案したスペシャルディナーが振舞われ、美食の街の国際映画祭のクロージングを彩る豪華絢爛なイベントとなりました。

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サンセバスチャン国際映画祭
開催日程:開催日程:9月16日(金)〜24日(土)
開催場所:スペイン サンセバスチャン
上映部門:キュリナリー・シネマ部門(コンペティション作品)
上映日:9月23日(金)キュリナリー・シネマ部門クロージング上映
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【サンセバスチャン国際映画祭イベントレポート】

【遠藤尚太郎監督 舞台挨拶】
エスケリカスコ(バスク語で「ありがとうございます」)この映画は作るのに3年以上の歳月がかかりました。その最中からこの映画祭に出すのが目標でした。食では世界中で注目され、かつ歴史ある映画祭に出るのが一つの目標でした。喜びを多くの人と分かち合いたいのと、鑑賞後、感想後伺いたいので声をかけてください。今日はありがとうございます。

【ディナー内容】
ミシュランの一つ星を獲得した日本料理店「KABUKI」のシェフであるリカルド・サンツ氏が本作『TSUKIJI WONDERLAND』をイメージして考案した、地中海料理と和食のフージョン。ガルシア産の鯛と、地中海のマグロが用意され、ライブキッチンショーという、バスク・キュリナリー・センターらしい演出で振舞われました。スタッフとして働いているキュリナリーセンターたちの生徒たちも、興味津々で注目し、キュリナリーセンターのジェネラル・マネージャーのホセ・マリ・アイセーラは「友人であるリカルドにとって新鮮な鯛やマグロを調理し、提供するすることはいつもの仕事ですが、そんな彼を今回招いたことで、我々の生徒たちにとっても非常に良い経験になったと思います」と語りました。

【遠藤尚太郎監督 ディナーの感想】
本当に美味しかったです。皆さんが映画に対しても、日本の食に対しても真正面からぶつかってきて来てくれたのが嬉しかったです。今日のメニューも、お刺身とか直球で勝負してくれた。こういう機会を提供してくれた事に感謝したいし、この体験を持って帰って、ぜひ築地の人たちに伝えて共有していきたい

【観客の感想】
●バスク・キュリナリー・センターのパティストリーとベイカリー部門の教師
エドソルド・ヒメネス・コルテス(39)
「私はメキシコ出身で、アイルランドで育ったのですが、市場でも働いた経験があるので、非常に興味深く映画を拝見しました。現在、私は教師をしているのですが、料理界というのはシェフになりたい人は多く、この映画はそんなシェフを目指す人たちの良い教材になると思います。自分たちが扱っている食材がどのような工程を得て市場に並び、消費者の元へと届けられるか。厨房に立っているだけではわからない、多くのイマジネーションをこの映画は私たちに与えてくれます。学校でぜひ生徒たちにもこの映画の事を伝えたいと思います」

●サンセバスチャンのレストラン「NARRU」のシェフ セルヒオ・カンポス(27) 
「ちょうど半年前に日本へ行き、築地市場へ行ったばかりだったので、非常に懐かしい思いで見ました。あの活気、市場で働く人たちの、観光客である私たちにも気軽に接してくれるフレンドリーさ、場外で食べた寿司の味まで蘇ってきそうです」

●バルセロナから来た会社員のネウス・マルティネス(48)
「バルセロナにも大きな市場はありますが、築地は扱っている魚の種類も違いますし、とても神聖な場所のように思えました。今日提供されたこのメニューについては、普段はあまり生魚を食べることはないのですが、非常に新鮮で大変満足しています」

●作品の感想を監督に直接話しにきたカップル(20代)
感動した。日本もスペインも、食文化を守るということは同じように重要なこと。学校給食のシーンがとても印象に残っている。

●作品の感想を監督に直接話しにきた観客
東京をサンセバスチャンに連れてきてくれてありがとう。映画を見ているとまずたくさんのことが同時に起きていて膨大な情報量が入ってくる。それが築地市場の姿をとてもよく表していると思った。そしてその大きな流れの中に一本通った人間の物語を感じることができた。

●作品の感想を監督に直接話しにきた観客
人間同士の物語が築地という市場を背景に繰り広げられる。料理人達が仲卸たちに絶大の信頼と尊敬を寄せていることが驚きであり素晴らしかった。

【ディナー後のQ &A】
◆司会者からのQ&A
Q:素晴らしい食事を提供してくださったリカルドに、ミシュランの星を持っていますが、どうやってここまで腕を磨いたのですか? 日本には何回も行ったことあるのでしょうか? 
リカルド・サンツ:
腕を磨くには、ただ料理を作ることが好きだということだと思います。また運もあるでしょう。日本は昔ながらのことも近代的なことも何でもある国です。築地には5、6回行きましたが、自分の欲しい食材の、ベストなものを手にすることが出来る市場でしょう。日本から持ってきたいほどです。

Q:人間関係を非常に大切にしているように思いました。
リカルド:
それが一番重要です。食だけでなく、たとえば靴を一足買うことを取っても、人間関係が大事だと思います。スーパーだったら悪いモノを売りつけられても文句も言えませんからね。

Q:遠藤監督に伺います。東京の人たちは築地のことを理解しているのでしょうか?
遠藤監督:
いや、分かっているかと言われると、ほとんど知らないでしょう。築地はブランドです。記号化されていて、店名でもよく見かけますが、その中で何が行われているのかは一般の僕らにはわかりません。それは築地が中央卸売市場というプロが買いにいくところで、僕らがいくところではないからです。今回の映画もいろんな映像がありますが、本当に初めて撮影が許される場所がいっぱいありました。映画をみた時に、驚くことはいっぱいあると思います。

Q:東京は大きな街ですが、築地はアナログな人間関係ですね。テクノロジーやデジタルも入っていないように思うのですが、どのように見せたいと思ったのでしょうか?
遠藤監督:
答えはみなさん、映画を見てくださったので分かるかと思いますが、映画というのは情報を提供しているだけではない。市場を記録するのは当然ですが、そこで働く人たちの日常、そういう人たちの生の言葉、息遣い、表情を積み重ねることで見せたいと思いました。

奥田P:
築地の仕事というのはかなりの重労働ですが、そこには食への感謝と、お客さんに食事を楽しんでいただきたいという願いが込められています。今日のリカルドのデモンストレーションも素晴らしいものでしたが、そこで私たちは美味しい食事を提供するまでのプロセスと努力を見ることができたと思います。そうしたメッセージを、映画を見た人にも受け取っていただきたいと私たちはこの映画を作りました。

◆観客席からの質問
Q:3年半かかった作品ですが、何が一番苦労しましたか?
遠藤監督:
良い質問ですね。大変だったことはたくさんありますが、本来、食材を日本中、世界中に供給している市場で撮影申請の許可が下りるまでが大変でした。築地は広いので、深夜から翌日の夕方まで重いカメラや機材を持って、少ない時はスタッフ2人で僕もカメラをもっていたのですが、万歩計で40キロぐらい歩いていたこともありました。
でも肉体的な苦労は大したことなくて、築地は混雑しているし、殺気だっているし、活気がある。その中で何かを記録する行為は非常に大変で、すごく念密な時間割があるんです。側からみていると混沌としているのですが。せりの開始や、客が来る時間も。1個1個のピークタイムが短い中で、意図しないことも同時多発的に起こっている。だいたいきょう、何をテーマに撮ろうと撮影に入るのですが、その通りにとれることはない。意図しないこともとれますが。結局600時間撮影し、映画は2時間ないので、598時間は使われなかったということです。築地を撮るプレッシャーもありましたし、自然の中で入荷がない日もありました。