第9回したまちコメディ映画祭in台東:シネマ歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』舞台挨拶、中村七之助 「歌舞伎座では攻めた作品」
文化芸術の街「上野」と喜劇発祥の地「浅草」を舞台に繰り広げられるコメディ映画の祭典「したまちコメディ映画祭in台東」(略称したコメ)。今年も2016年9月16日(金)〜19日(月・祝)に「第9回したまちコメディ映画祭in台東」を開催致します。「したコメ」は、東京随一の下町(したまち)の魅力をコメディ映画を通じて存分に味わっていただく、いとうせいこう総合プロデュースのコメディ映画祭です。
本日9月18日(日)、浅草公会堂にて、宮藤官九郎さん、中村七之助さん、片岡亀蔵さんをお迎えし、「シネマ歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』」の上映とトークショーを行いました。トークショーでは、故・中村勘三郎さんのお話や当時の稽古の様子など、当時を振り返りながら楽しいエピソードが披露されました。
●実施日時:9月18日(日)
●場所:浅草公会堂
●ゲスト:宮藤官九郎、中村七之助、片岡亀蔵、冨士滋美(浅草観光連盟会長)
■宮藤官九郎
パルコで三谷さんのお芝居を見てて、その日替わりゲストで勘三郎さんがいらっしゃる日で、たまたま端っこの席に座ってたら、近くの扉から勘三郎さんが出てきて、「俺はこいつに書いてもらうからな」って、言われて。「え!」っと驚いたんですが、そこから、(歌舞伎で)具体的にやらなきゃいけないな、と思ったのを覚えています。そのきっかけから、2年くらいかかったかな。
何も考えていかないのもいけないなと思って、勘三郎さんに、「歌舞伎にゾンビの歌舞伎ってありますか?」って聞いたら、「ないね。でも、《らくだ》ってのはあるけどね」ということだったんですが、そしたら、「じゃ、それやろう。」って。(笑)
その時は、ちょうど「さよなら歌舞伎座」の公演時期だったんですが、ロビーを見たら、おじいちゃんとおばあちゃんばっかりで、「あ、俺、ぜんぜん客層のこと考えてなかった」って思いました。(笑)
後になって、プロットを書いた時に、みなさんからバンバンアイディアをいただきました。
お話としては落語の要素をいくつか入れているんです。「死神」「らくだ」「品川心中」と、実際にあった永代橋のお話。今、見ても思うんですが、意外とちゃんと考えて作ったな、と思ってます。
ただ、本番になって、俺の前に2本(野田さん)公演があって、しっかり古典を見て楽しんだ人、おじいちゃんおばあちゃんは、これ(ゾンビ)が始まってしばらくすると、もうね、ゆっくり立って、そーっと帰っていくんです。舞台は舞台でゆっくり歩いてて、客席は客席でゆっくり歩いてるから、もうどっちがどっちかみたいな感じで(笑)。それが、毎回同じところくらいから帰り始めるんですよ。後になって、勘三郎さんには「面白かったよ」って褒めていただいただんですが、あの時お客さんが帰っていったのは忘れてないので、こっちはそれなりに傷ついてまして。
だから、(実現しなかったが)一緒にやろうというお話の時には、「今度リベンジさせてください」って言ったら、勘三郎さんから「何言ってるんだ。俺はあれはあれで、最高だと思ってるんだよ。」っておっしゃっていただいていて。
■中村七之助
七之助:あの時の稽古、楽しかったですね。変なスイッチが入ってましたね。
もともと父は、いろんな人に歌舞伎を見て欲しいと思う人で、古典は古典で素晴らしい作品がありますが、こういう作品をやることによって、こういうのを100人中10人でも面白いと思う人がいるなら、やってみたい、と思う人なんです。なので、普段大人計画で宮藤さんの作品を見て面白いな、と思っている方が、少しでも歌舞伎を見て「面白い」と思ってくれるなら、と思う人なです。なので、(公演本番の)12月は、うちの父にとって最高の12月で、ずっと機嫌がよかったのを覚えてます。
最初に台本が来た時に、「くさやがしゃべってる。」とト書きに書いてあって、くさやがしゃべる?ん?映像がでてこないんですよ(笑)どうなるんだ?と。でも、宮藤さんだったので、ぜんぜん不安じゃなかったんですよ。絶対面白くなりそうだな、と思いました。
今じゃワンピース歌舞伎とかやってますが、この作品くらいの頃からだんだんと、現代劇の俳優さんの笹野(高史)さんや佐々木蔵之介さんがお出になるようになって、だいぶ垣根を越えられるようになりました。また、歌舞伎の方では若手が現代劇もやり、古典もやってどんどん勉強していってます。和が広がってきました。そういう意味では、この『大江戸りびんぐでっど』は、歌舞伎座始まって以来、攻めた作品じゃないかな。
■片岡亀蔵
私は、特にホラー映画が好きで、よく見てるんです。だから、このお話を聞いた時、「これは俺が演出しなきゃいけない」と思って、稽古が始まる前に、台本全部覚えなきゃって、ちゃんと覚えて行きましたよ。(笑)
稽古の初日に、ゾンビの動きで、「基本的なゾンビの動き方はですね・・・」って、説明したら、全員ドン引きしてた(笑) 今でも、残念なのは、はやごしらえでメイクをしなくちゃいけなかったから、(ゾンビ)メイクに凝れなくて。
本当はいろいろ(目玉を飛び出して、ぶら下げたり)やりたかったです。
本番の時は、宮藤さんのと野田(秀樹)さんとお2人の公演が一緒に見られるという、すごかったですね。普通なら、野田さんなら野田さんのお芝居で1公演なのに、宮藤さんのも見られる。すごい公演でした。
もし、今後続編で『大江戸りびんぐでっど2』ができるようになったら、それはもう『〜2』の方が面白いはずですね。