平素よりお世話になっております。世界3大映画祭を制覇し、長い間新作を熱望されていた映画監督エミール・クストリッツァの最新作『ON THE MILKY ROAD』(原題)が、現在開催中の第73回ベネチア国際映画祭の公式上映・記者会見が、行われました。『パパは、出張中!』(85)、『アンダーグラウンド』(95)でカンヌ国際映画祭の最高賞・パルムドールを、『アリゾナ・ドリーム』(92)でベルリン国際映画祭 銀熊賞、『黒猫・白猫』(98)でベネチア国際映画祭 銀獅子賞を受賞と、世界三大映画祭を制覇した天才エミール・クストリッツア。発表する作品、その全てが世界中の映画人に影響を与え、世界中の映画ファンを熱狂させ、日本でも定期的に特集上映が組まれるなど、今もなお注目される天才監督。

カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『ウェディング・ベルを鳴らせ!』(07)以来、9年ぶりの長編映画となる本作は、監督・脚本にくわえ自身が主演もつとめ、昨年公開され全世界で大ヒットを記録した『007 スペクター』でボンドガールに抜擢されたモニカ・ベルッチがヒロインにすることが話題に。そして今回のワールドプレミア上映では、エンドロールが始まる前から「ブラボー!」と声が鳴り響き、12分ものスタンディングオベーションとなり、大いに盛り上がりました。

本作は、ある男(エミール・クストリッツァ)の人生を描くもので、村の女性に愛されて牛乳配達人として働いている戦時中、謎の美しき女性(モニカ・ベルッチ)と恋に落ちて、2人で逃亡を図る時代、そして、主人公の男が、年老いて修道僧になった時代を描いた作品。

【レポート記事】
「場所や時代はまったく架空の設定で、名も無い土地で起こっている戦争を描くが、敵や味方が誰かは特定していない。詩的で、同時に力強いものを作ろうとした」、というクストリッツア監督は、記者会見で、「この作品は戦争が終わるところから始まっている。誰に聞いても分かるが、戦争において最もドラマティックなのは、戦争が終わった時からだと思っている。3年かけて、小説を手がけるように作り上げていった。長い旅”であれば色々と試せる。突っ走ったら、決していいものはできない。ベストなものを見つけるのは本当に苦労した」と、長期にわたる制作の苦悩を、達成感溢れる表情で言及しました。

ヒロインのモニカ・ベルッチの起用について、「ヒロインをイタリア人の設定にしたのは、モニカに合わせてのこと。男性が恋をしそうな役を書くのが一番楽しいね」と語り、モニカ・ベルッチは、監督について、「チャレンジングな監督よ。脚本はあるけど即興ばかり。監督だけでなく、役者、書き手、ビジネスマン、アーティストでもあるから多くのことを学んだわ。役もフェミニンで母性にあふれているし、今までで最も成熟した役かもしれない」と監督の出会いを熱く語りました。物語について、「戦争中の話だけど何の戦争かは特定していない。美も苦痛も多い世の中を、政治的視点ではなく人間的視点で描いているの。戦争を描いているけど詩的だし、現実とイマジネーションの両方がある作品。希望、愛、セクシュアリティも伝えようとしてる。性欲や官能性は、その人のエネルギーから来るもの。年齢は関係ないわ。現代の人はもっと愛を信じるべきだと思う」と、言及。また、公式上映では、10分間のスタンディングオベーション、そして、レッドカーペットを歩く、モニカ・ベルッチに対して「モニカコール」が起きるなど、会場は盛り上がりました。