9月の声と共に毎年スタートするオスカー・レース。その行方を占う映画祭として近年脚光を浴びているのがトロント国際映画祭。過去10年で観客賞を獲得した主な作品には『スラムドッグ$ミリオネア』『英国王のスピーチ』『世界にひとつのプレイブック』『それでも夜は明ける』『ルーム』など、オスカー戦線をにぎわした話題作が揃っている。トロント映画祭のオープニング作品に選ばれるということは、オスカー・レースの本命と認められたということでもある。

そして、現地時間9月8日にスタートした北米最大の映画祭である第41回トロント映画祭で『マグニフィセント・セブン』がオープニング作品としてワールド・プレミア上映された。
黒澤明監督の映画史に燦然と輝く名作、『七人の侍』と、その翻案作品であるジョン・スタージェス監督の傑作ウェスタン『荒野の七人』を原案とするこの作品の監督は『トレーニング デイ』『イコライザー』『サウスポー』など、重厚な男たちのドラマを描いてきたアントワーン・フークア監督。 主演には『トレーニング デイ』『イコライザー』のデンゼル・ワシントン、『ジュラシック・ワールド』のクリス・プラット、 『6才のボクが、大人になるまで。』のイーサン・ホーク、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のイ・ビョンホンなど、国際色豊かな豪華キャストが集結!
アカデミーの行方を占う映画祭だけあって、カナダ、アメリカのみならず、世界中のマスコミが集結。同日に行われた記者会見には、デンゼル・ワシントン、クリス・プラットら“七人の侍”をはじめとするメイン・キャストと監督が勢ぞろい。「『七人の侍』も『荒野の七人』も普遍的な作品だ。他人の正義のために全力を尽くす話だ。格差社会など現代に通じる要素も持っている。今の時代に合ったウェスタンを創った」というアントワーン・フークア監督の黒澤明監督への賛辞から始まった会見では、様々な人種や国籍の“七人”とあって、世界各国から各キャストや監督に対して活発な質問が飛んだ。デンゼル・ワシントンは『七人の侍』も『荒野の七人』も観ずに撮影に参加した理由を「他の俳優がどう演じたか気にせず、自由に演じることが出来るから」と明かし、現在のハリウッドNo.1スターであるクリス・プラットは、監督の「この映画にはユーモアもたっぷりあるが、それはまさにクリス・プラットのおかげだ。クリスは凄い」という言葉に対して「監督にはいろんなことを自由にやらせてもらえた。上手くいかなかったらカットされるだけさ」と、監督とキャストとの信頼関係を語った。
オスカーへの直接的な言葉こそ出てこなかったものの、映画史に燦然と輝く2本の名作のDNAを受け継ぎ、国際的なオールスター・キャストで描いた現代のウェスタンの新たな傑作、『マグニフィセント・セブン』は、現在開催中あである黒澤明監督ゆかりのヴェネチア映画祭でクロージング作品として9月10日にヨーロッパに凱旋。9月23日に全米公開となる。待望の日本公開は2017年1月27日。

アントワーン・フークア監督:
黒澤は師(マスター)だ。シェークスピアみたいな人だ。彼がもし生きていたら、この作品を観るのをたのしみにしてくれたはずと僕は信じている。『七人の侍』も『荒野の七人』もキャラクター重視の映画で、多彩な登場人物たちが他人のために力を合わせるところに意味がある。そこが一番大事だ。
もう一つ一番大事なのは『七人の侍』のDNAを守ること。7人の男が集まって正しいことをする。今回は過去の2本に比べ、もっと過激かもしれないが、今の時代の人が共感できる部分もあると思う。昔のウェスタンも時代につれて変化したが、僕らが今の生きている時代のウェスタンを創ったんだ。

デンゼル・ワシントン:
『荒野の七人』を観るのを避けていたわけではないが、演じる上でプラスになるとも思わなかった。他の人がどう演じたかを気にせず、自分が演じたいことを自由にできることが重要だった。
今回はストーリーも脚本も良かったが、出演を決めたのはアントワーン・フークア監督だからだ。

クリス・プラット:
今回の役は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のピーター・クィルよりずっと深い。アウトローが魂の中に何を抱えているかを描いていて、とてもリアルなキャラクターだ。
世の中に何本映画があるか判らないが、過去の映画に似ているものもあるだろう。僕らは、(過去にあった)タイトルを使い、ストーリーを使い、この7人を使い、そして違った映画を創った。

イ・ビョンホン:
(共演の)イーサン・ホークとは仲が良いという設定もあり、セットでよく話した。イーサンから彼の書いた3冊の本をプレゼントしてもらった。僕の妻が彼の大ファンで、セットに来たんだが、あんな幸せそうな顔を観たことはなかった。だから僕はイーサンが大好きだし、大嫌いでもある(笑い)。