『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』の西川美和監督が、『おくりびと』以来7年ぶりの映画主演となる本木雅弘を迎え、直木賞候補となった自らの小説を映画化する最新作『永い言い訳』(アスミック・エース配給)が10月14日(金)より公開になります。

人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(きぬがささちお)(本木雅弘)は、妻・夏子(深津絵里)が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。まさにその時、不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。そんなある日、妻の親友の遺族——トラック運転手の夫・陽一(竹原ピストル)とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。子供を持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝きだすのだが・・・
主人公の幸夫役に『日本のいちばん長い日』『天空の蜂』での演技が高い評価を得て、昨年度日本アカデミー賞最優秀助演男優賞等を受賞した本木雅弘。その他ミュージシャンの竹原ピストル、池松壮亮、黒木華、山田真歩、堀内敬子、深津絵里など、屈指の実力派俳優が脇を固め、ひとときも見逃したくない緊張感と豊かさにあふれた映画空間を創り上げます。

この度、ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー エノテカ・ミレで行われた、おいしいワインを飲みながら作家の話を聞く文学ワインイベント、『本の音 夜話』第10回ゲストに西川美和監督が登場。普段よりワインはもちろん、お酒ならなんでも嗜むと語る西川監督。監督と共にワインを楽しみながら、監督の創作の源や表現方法についてじっくりと語られた。
本作では、ほんの些細な小道具に関しても監督の細かい設定と、丁寧な演出を観ることができる。
例えば映画に登場するワインについて。本木雅弘演じる主人公・幸夫が大宮一家とビストロで食事をするシーンで飲まれるワインには、ブルゴーニュ産の赤ワインをチョイスした。ワイン好きな幸夫のこだわりが見えるセレクト。プロのソムリエと相談を重ね、ええかっこしいな幸夫が選びそうな高価なワインをイメージしたという。他にもテーブルに並ぶ料理や使う食器など細部にまでこだわりを持って演出をしたという。
また、小説を書くことと映画を撮ることの違いについても語った。小説は、時間の制約がない中で比較的自由に書くことができるのに対し、監督である自分以外の人に苦労をさせ、物を無駄にし、ありとあらゆることを散々やった後で、そのシーンが不採用になることだってある映画制作の厳しさを語った。小説で表現していることを実際に映像でやってみようとすると、現実には思うようにいかない。書くことと撮ることでは、様々な観点から自由度が異なると、映画監督でありながら執筆もこなす西川監督は話す。
また、これまでの作品を含め、一緒に仕事をする役者たちには恵まれてきたと自負する監督。今回、本作で初めてタッグを組んだ主演の本木雅弘に関しても、それまで抱いていた印象とは打って変わった、本木の常に葛藤し悩む、人間味溢れる姿が、彼のチャーミングな魅力であり、そこが不思議と憎めないんですよね、と絶賛した。

ひとを愛することの「素晴らしさと歯がゆさ」を描ききった。
観る者すべての感情をかきみだす、かつてないラブストーリー。