映画『聖の青春』公開記念 先崎学九段×森義隆監督トークイベント 「盟友が語る村山聖九段の思い出」
東の羽生、西の村山と称されながら29歳にして亡くなった実在の棋士・村山聖の一生を描いた話題の映画『聖の青春』(KADOKAWA配給)。
この度、本作の公開を記念し、先崎学九段と森義隆監督のトークイベントを実施いたしました!
主人公・村山聖を演じるのは、俳優・松山ケンイチ。
かつてない驚異的な役作りで精神面、肉体面の両方から村山聖にアプローチし、熱演。
聖の最大のライバルであり、松山自身が本作の“ヒロイン”であると語る羽生善治を演じるのは、東出昌大。
聖を支えた師匠・森信雄役にはリリー・フランキー。 母・村山トミ子役に竹下景子。
弟弟子・江川役に 染谷将太。そして安田顕、柄本時生、鶴見辰吾、北見敏之、筒井道隆ら豪華キャスト陣が脇を固め、人間の知の限界に挑戦し続けた伝説の将棋指しの人生を、師匠、ライバルほか周囲から愛された記憶と共に、愛情豊かに描き出します。
映画「聖の青春」公開記念 先崎学九段×森義隆監督トークイベント
「盟友が語る村山聖九段の思い出」
■日程:9月6日(火)
場所:日本経済新聞社東京本社 SPACE NIO
主催:日本経済新聞社
■登壇者
先崎学九段、森義隆監督
第64期王座戦五番勝負の第1局大盤解説会と共に
開催された本トークイベント。
会場に用意された200席は開場とともにすぐさま埋まり、
立ち見が出るほどの大盛況。
先崎学九段と森義隆監督がステージに登壇すると、
会場は大きな拍手に包まれました。
まず、生前から村山さんと親交の深かった先崎さんがご挨拶。
本作について「対局シーンの松山さんと東出さんがかっこよくて、
まさに村山vs羽生の雰囲気がでていました。二人の役作りに関心しきりでしたね」とコメントしました。
続いて森監督がご挨拶。実在した村山聖さんを描くにあたってのアプロ−チについて
「8年前に映画化のお話をいただいたのですが、その当時は将棋もルールを知っているぐらいで
将棋会館の将棋道場に通いながら、棋士とはどのようなものなのかを知るところからスタートしました。
毎日、将棋道場で子どもにコテンパンに負けるというところからのスタートだったんです(笑)。
その中で感じたのが、棋士たちは毎日勝ち負けを一人で背負い込んで生きているということ。
すごく孤独な職業だなと感じました」と述べました。
生前、親交の深かった先崎さんは村山さんを「面白い人間だった」と振り返ります。
「愛嬌があってユーモラスがあって、でも毒舌家でちょっぴり酒乱で(笑)。
映画で描かれている通り、ほんとうに将棋に人生をかけている人物でした。体が悪かったのが本当に残念でね」
フィクションではなく、実在した人物について描くことはとても不思議な感覚だったと語る森監督。
ご両親や師匠、棋士仲間に会って取材していく中で、村山聖という人物像を作っていったといいます。
「取材や撮影をする中で村山さんの一貫していたキーワードが”孤独”だったなと感じています。
ご両親に見せる顔、先崎さんに見せる顔、羽生さんに見せる顔、それぞれ違って
多面性のある人物だなと感じたんです」と村山さんの人柄を分析しました。
すると村山さんとの思い出を明かす先崎さん。
「私の前では気楽だったんじゃないですか(笑)。映画でも出てきますが、
地元から東京に出てきて知り合いもいない中、孤独な彼は毎日朝10時に将棋会館に来るんです(笑)。
私も暇なときは、朝から将棋の話をしたりしていました。ただ、それがだんだん将棋から離れて
麻雀やったりお酒を飲んだり(笑)。お酒が強くないのに無茶な飲み方して
救急車に運ばれたり、彼とはそんな思い出があります」
劇中では、羽生さんに並々ならぬライバル心を見せる村山さんですが、
実は同世代の森内俊之さん、佐藤康光さんにも対抗心を燃やしていたそう。
「彼は毒舌だったりするので、少々合わなかったのかもしれません(笑)
羽生さんはもちろんですが、彼らが一番燃える相手だったかも知れないですね」
と先崎さんは当時を振り返っています。
そんな毒舌な一面を持つ村山さんに対し森監督は
「人生に対する皮肉の言葉がすごく胸をさすんですよね」と、
村山さんのセリフが作中でも印象的に使われていることを明かしました。
続いて撮影についての話に及ぶと、今までにない役作りをして撮影に臨んだ松山さんについて
「松山さんが原作と出会って、『自分の役者人生をかけてやりたい』と言ってくれたんです。
今までにない役作りをし撮影に臨んだのですが、休憩中もポテトチップスを食べコーラを飲んだりと
徹底した役作りでしたね。実際に太ったことによって、村山さんのゆっりくとした動作であったり、
体型からくる性格をつかんでましたね」と絶賛。
先崎さんも松山さんの役作りには「ロバート・デニーロみたいですよね」と賞賛しきりでした。
そして実際の棋譜を松山さんと東出さんに覚えてもらい、全て再現したという対局シーン。
「棋士が“潜る”という感覚を表現したくて、対局シーンにはすごくこだわりました。
彼らは将棋が分かるので、村山さんと羽生さんの一手一手が台本なんです。
対局の戦況が実際のストーリーとリンクしていて、
将棋の詳しい方に本作を観ていただくと2倍楽しんでもらえると思います」
と森監督がこだわりの対局シーンを語れば、
「局面にあわせて、二人の表情が変わるんです。そこに棋士として胸を打たれましたね。
コアなファンはそこも楽しめますよね」と、先崎さんも対局シーンを絶賛しました。
この対局シーンの参考にしたのが、棋士の姿を撮った写真家・中野英伴さんの
「棋神」という写真集だと明かす森監督。
「将棋でしか出てこない表情だなと参考になりました。
そういった豊かな表情を役者さんにも出して欲しくて、表情にはかなりこだわりましたね」
最後に会場に訪れた方に向け、作品をPRしたお二人。
先崎さんは「村山さんは将棋界の素晴らしいところをギュッとつめたような人物。
彼の生き様を多くの人に観てもらい」とコメント。
森監督は「将棋ファンには必ず観ていただきたい。観て後悔はさせない作品ですし
サポーターだと思って映画を応援してほしい」と、自信を持って作品をアピールしました。
森監督・キャスト陣の本作への熱い想いが垣間見え
村山さんの人柄が伝わってくるトーク内容で、
映画への期待が高まる大盛り上がりのイベントとなりました。
以上