『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』の西川美和監督が、『おくりびと』以来7年ぶりの映画主演となる本木雅弘を迎え、直木賞候補となった自らの小説を映画化する最新作『永い言い訳』(アスミック・エース配給)が10月14日(金)より公開になります。

人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)は、妻・夏子(深津絵里)が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。まさにその時、不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。そんなある日、妻の親友の遺族——トラック運転手の夫・陽一(竹原ピストル)とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。子供を持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝きだすのだが・・・
主人公の津村こと衣笠幸夫役に『日本のいちばん長い日』『天空の蜂』での演技が高い評価を得て、昨年度日本アカデミー賞最優秀助演男優賞等を受賞した本木雅弘。その他ミュージシャンの竹原ピストル、池松壮亮、黒木華、山田真歩、堀内敬子、深津絵里など、屈指の実力派俳優が脇を固め、ひとときも見逃したくない緊張感と豊かさにあふれた映画空間を創り上げます。

 この度、映画『永い言い訳』公開を記念して、西川美和監督、そして西川監督との映画づくりを長年手掛けてきたバンダイビジュアルの西川朝子氏、分福の北原栄治氏の両プロデューサーが、トークイベントMeet the Filmmaker(*)に登場。映画の見どころ、制作の裏話など、3人だからこそ知る制作秘話がたっぷりと語られました。本ニュースのご掲載、ご検討の程、どうぞ、よろしくお願いいたします。
* Meet the Filmmakerは第一線で活躍する映画作家の生の声が聞ける人気のイベントです。

立ち見も大勢出るほど満員の会場。まずは本作の制作のきっかけについて、『夢売るふたり』(2011年)の制作中にすでにアイディアを考案しはじめていたという西川監督。その年の3月の震災を受け、「どうしようもない後悔の気持ちを持ちながら周りの人との関係性を築いていかなければいけない人」を描きたいと思い始めたことを語った。
また、今回の映画の制作はこれまでにない新しいチャレンジがいくつかあったと明かした西川監督。ひとつは、時間をかけて作ること。まずは先述のアイディアをもとにした小説を書くことから始め、その後、映画の撮影を、四季を通じてゆっくり時間をかけて撮った。そしてもうひとつのチャレンジは、初めて子供を撮ったこと。自然な子供らしさを追求するために、なるべく演技経験の少ない子役をキャスティングしたが、子供たちの個性を尊重しながら、のびのびとした様子を撮るために、うまくいかず思い悩むこともあったと語った。
キャスティングに関しては、完成した小説を是枝裕和監督にも読んでもらった際、もともと本木雅弘さんと面識のあった是枝監督から「主人公の幸夫は本木さんの人柄によく似ている」と話になり、以前よりいつか本木さんと一緒に仕事をしたいと考えていた西川監督は、その言葉がきっかけでオファーすることを決めたそう。そのあとすぐに行われた本木さんとの打ち合わせでは「監督、本当は私なんかと映画やりたくないでしょ」「本当に私でいいのか」など3時間にも渡り話し、その語り方や考えにまさしく幸夫役は本木雅弘しかいない、と確信したと話した。観客から、ポスタービジュアルの撮影エピソードについて聞かれると、本作で初めてクリエイティブディレクターをつけ、広告物のアートワークにも力を入れたことを語った。中でも一番の自慢の一品と語るポスタービジュアル。せっかくであれば一番上を目指したいと、写真家の上田義彦氏にビジュアル撮影を依頼。撮影当日は悪天候の中、わずかにあった晴れ間で撮影を決行し、本編にはない、二つの家族が揃う幻想的な写真が完成。
 最後に西川監督は観客に向け、「しっかり時間をかけ、練りに練ったこれまでとはスタイルも後味も違う作品になったので、ぜひ劇場で観て欲しい」とメッセージを送った。