■血飛沫と笑いのコンビニ劇場!殺人サイトVS殺人カラテ!
オールナイト明けの7/24(日)。朝風呂でさっぱりしてから、現代百貨店にあるCGV U-PLEXの9時のオープンまで隣にある公園にてコンビニで買ったオニギリの朝ご飯。キムチ系の具が食欲をそそる。オープン早々にCGV U-PLEXのロビーに行くと、朝の9時からブチョンファンタのチケットを買うお客さんが列をなしている。壁に貼られたスケジュール表を見ると本日の『クリーピー 偽りの隣人』と『ヒメアノール』はONLINE SOLD OUTシールが貼られている。ロビーで、初めてブチョンファンタに来た時にチケットトレードをしてからの友人とめでたく再会。

現代百貨店前のバス停からシャトルバスにて今年初めての会場となるCGVブチョンステーションに移動。途中経由するアートホールも初めての会場で、このルートは意外に所要時間が長く30分近くかかった。25日に高麗ホテルで行われる西村喜廣監督が講師を務める‘NAFF’企画のファンタスティックフィルム・ワークショップからソンネ・オウルマダン・ソラン・アートホール上映の『Re・Born』(監督:下村勇二/’16)の移動はタクシーにした方が良いかもしれない。
40分ほど早めに着いたのでCGVブチョンステーション向かいのお店でムル冷麺と焼肉のセットを注文。さっぱりした冷麺のスープと甘めの味付けの焼肉が美味しかった。

7/24 12:40『Robbery/荒らし』
(監督:ファイヤー・リー/香港/’15)

劇場:CGVブチョンステーション

今年の大阪アジアン映画祭でも上映された「荒らし」。デレク・ツァン演じる不運過ぎる男がひょんな事からコンビニのレジ係になるが、強盗に押入られ客と共に人質になる。ピンポン状態で凶器と主導権が移動する中、生き残るのは誰か!?コメディタッチながら出血多量な作品。ラム・シューの絶妙な演技に爆笑しながら、日常のあらゆる瞬間を無為に無邪気に過ごしている傲慢さを思い知らされる。

7/24 15:20 『Karate Kill/カラテキル』
(監督:光武蔵人/日本/’16)

劇場:CGVブチョンステーション

光武蔵人監督の最新作。妹を拉致された兄が単身でアメリカに渡り悪の組織に戦いを挑む。初主演ハヤテの台詞回しはまだまだ生堅いが、独特な空手アクションとパルクールを駆使したスピード感溢れる身のこなしで魅せる。前作『女体銃』で大怪演の鎌田規昭が今回もフルスロットルで画面をさらい観客に大ウケ。妹役の紗倉まなは被虐的演技が光る。
特訓オタクの光武監督ならではの理論を駆使した特訓シーンは、呼吸をするように銃を扱う亜紗美が美しい。
70年代のリベンジ物が好きな観客には堪らない作品。

■『Karate Kill/カラテキル』と『ダーティハリー』『コブラ』の関係とは

「カラテキル」上映後はGV。7/22の上映では主演のハヤテさん、亜紗美さんの登壇もあったがスケジュールの都合で昨日帰国したとのことで、光武蔵人監督とエグゼクティブ・プロデューサーの久保直樹さんが登壇。
韓国の観客は積極的でどんどん手が上がる。

一人目の観客は作品が気に入った様子だ。
「とても面白く拝見しました。ストーリーがとてもシンプルで、メッセージ性は重視されておらず昔のアクション映画の雰囲気でした」

光武「アクション映画なのであまり話は複雑なものにせずに、分かりやすく70年代風の猪突猛進型の頭のおかしい男がひとつの目的を達成する話にしました」

別の観客はハヤテさん演じるケンジのキャラクターに絡めて、
「面白かったです。映画の主人のように監督が守りたいものはなんですか?影響受けた映画はありますか?」

光武「僕の子供と妻は守りたいですけどね。こんな映画を撮ってますけど、意外とまともな人間なんで(笑)。影響された映画は70年代の例えば『ダーティーハリー』を目指しました。『ダーティーハリー』の44マグナムがケンジの空手になったという感じのアプローチをしてみました」

悪役が気に入った様子の観客も。
「『ダーティーハリー』のスコルピオを意識しましたか?ヒヒヒという笑い方から連想しました」

英語の質問に英語で答える光武監督。悪役のキャラに関しては、背が低い俳優を考えていたという。
「イメージしたのは肉体的に圧倒するような悪役ではなくて、サイコパスでマッチョ。スコルピオのようなキャラクターで、『コブラ』に出てくるようなナイトストーカーズ・ナイフを使います。『コブラ』は『ダーティーハリー』へのオマージュであるし、ご指摘の通り僕はこの2作にダブルでオマージュを捧げました」

客席にいた『春子超常現象研究所』の竹葉リサ監督からも質問が。
「監督の映画はギャグが秀逸で、トラックの中の戦いでは○○○○○○○○○が出て来て大爆笑しました。あれは狙いなんですか?」

光武「ジャンル映画だと笑いに逃げる事が多いじゃないですか。それはあまりやりたくなくて、わかる人は笑ってくださいじゃないけど、ギャグにもシリアスにも取れるという綱渡りをいつもやってるつもりです。僕的に一番笑ってほしいのはケイコ(亜紗美)とケンジ(ハヤテ)の手がベッドシーンで触れ合うところなんです」
光武監督お勧めのシーンは9/3の日本公開時にぜひ観てほしい。

司会者から質問を受けて、プロデューサーの久保さんがこの作品に関わった経緯を語った。
「前作の『ガンウーマン』という作品がありまして、ゆうばりの映画祭に他の映画の上映で行ったんですけど、彼の映画を観た瞬間に、次回はこの人とやろうと。決めて9ヶ月くらいでこの作品が出来ました」

敵側の黒眼帯の女性キャラに対して「『キル・ビル』のオマージュ的なものはありますか?」と興味津々の様子の観客も。

光武「全く無いですね。『キル・ビル』はきらいです。『Thriller / 血まみれの天使』というスウェーデン映画に眼帯をしてショットガンを持った女性が出てくるんですけど、タランティーノ監督も僕もその映画にオマージュを捧げていると思います」

アクション映画の演技指導についての質問も。
「キャラクターが複雑じゃないので細かい演技指導はしないのでしょうか?」

光武「それは逆なんじゃないですかね。シンプルなストーリーだから役を演じるために彼らが宿題をやって来ないといけないというか。彼らなりの役作りをした上でキャラクターを3D、立体的にしていく作業が必要だと思います。俳優さんとは、どんなキャラクターかということを大分話しましたね。特にケンジ役のハヤテは初主演なので、2人で三ヶ月くらい朝昼晩ずっとやり取りをしてケンジのキャラクターを作りました」

最後に光武監督は、
「本当に来ていただいてありがとうございました。この中にプロデューサーかいたら、ぜひ『テコンドー・キル』を作らせてください(笑)。それでまた韓国に戻って来たいと思います。よろしくお願いします。カムサハムニダ」
と、アピールし観客から大きな拍手を受けた。

GV後に光武監督に伺うと、ハヤテさんの空手は沖縄武術という古武術の一種だという。拳銃や刃に立ち向かうのが古からの武術なのは、ケンジを動かす本能の源流と呼応するようで面白い。

18:20からCGV U-PLEXにてタイのアクション映画『Monkey Twins』を見るためにシャトルバスへ飛び乗る。

(Report:デューイ松田)