映画『秘密 THE TOP SECRET』千明×大友啓史監督、公開後3連続舞台挨拶
生田斗真主演×『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督最新作にして、今夏いちばんの話題作『秘密 THE TOP SECRET』。
8月6日に公開初日を迎え、手に汗握るスリリングな展開と、明かされる<秘密>の真実に心揺さぶられる観客が続出している本作。
この度、本作の<秘密>をより多くの方に知っていただきたいという思いから、大友啓史監督とキャスト陣による舞台挨拶を3連続で開催。
1日目となる8月18日は、監察医として第九のメンバーを支える三好雪子を演じた栗山千明さんを迎え、大友監督とともに本作の<秘密>について、公開後だからこそ語れる本作の裏側を語りつくしました。
【『秘密 THE TOP SECRET』公開後舞台挨拶 概要】
■実施日:8月18日(木)21:10〜
■場所:新宿ピカデリー スクリーン3
(新宿区新宿3丁目15番15号)
■登壇者
栗山千明 大友啓史監督
【イベント実施レポート】
<ご挨拶>
●栗山千明さん:
本日はありがとうございます。
観ていただいた皆さんと同じ空気を吸いながら楽しみたいと思います。
よろしくお願いいたします。
●大友啓史監督:
本日はありがとうございました。
こういう映画なので、観ていただいた皆さまにどうにか御礼を申し上げたく、
今回このように、直接みなさんとお話をする機会を設けて下さいというのをお願いして、
こうした場をいただきました。栗山さんとは「ハゲタカ」からの古い付き合いなので、
時間が許す限り、皆さんと会話をしながらフランクできればと思います。
●MC:ありがとうございました。さて、本日の舞台挨拶は、公開後記念ということで
公式Twitterでご覧になった全国の方々より、「秘密のヒミツを教えて!」と題して、
質問を募集しておりました。早速お答えいただきましょう。
<公式twitterに寄せられた質問より>
●MC:「雪子は薪さんのことをどう思っているのでしょうか?
鈴木を失う原因となった薪室長を恨まなかったのは、仲間以上の想いがあったから?
また、もし栗山さんが雪子の立場だったら、あの仕事を続けられますか?」という質問をいただきました。
●栗山千明さん:
私だったら、逃げてしまいそうな気がします。
仕事をやめるのか、他の場所に移るとか…。
受け止められないというよりも、そこにいる限り思い出して辛くなってしまう気がいたしました。
でも、雪子の場合は見守りたいというか、
見続けないといけないという使命感があったんじゃないかと思います。
「第九」という組織についても、鈴木くんと共に「第九」を立ち上げた薪さんに対しても
そう思っているのかなと思っています。
●大友啓史監督:
栗山さんの撮影初日が、まさに薪が鈴木の記憶を見るというシーンでした。
雪子にとっては、恋人である鈴木を自分から奪った薪に対する憎しみも最初はあったんだと思いますが、
薪が鈴木のことをよく知り、様々なことを共有していたことも知ってたから、憎みきれなかったのだと思います。
●MC:栗山さん、かつての恋人の記憶を見るというのはいかがですか?
●栗山千明さん:
鈴木くんの脳の解剖をするシーンは、胸が苦しいというか複雑な心境でした。
なのですごく丁寧に撮っていただいて嬉しかったです。
●大友啓史監督:
グロいシーンですいません(笑)
だけど、あの行為の中に、彼女が乗り越えなくてはいけないことがあるし、
人間の生死を見つめて、実感して、そこで何かを感じていくんじゃないかと思います
●MC:そのシーンの質問もいただきました。
「手術のシーンはとてもショッキングな映像でしたが、
栗山さんが撮影で苦労された点はありましたか?」ということですが、いかがですか?
●栗山千明さん:
大変なのは解剖される方ですよね。
あのシーンは、実際にご本人に特殊メイクをして撮影しているんです。
ベットも固いものですし、大変そうでした。
●大友啓史監督:
鈴木の死体から涙がこぼれるシーン。
あのシーンこそが僕が撮りたかったものだし、この映画のロマンがあると思っています。
鈴木役の桃李くんが「自分でやる!泣いてみせる!」っていうんですよ。
死んでいるので、呼吸せずに涙を流さないといけない。カメラでずっと回したんですけど、なかなか出ない(笑)
●MC:そのシーンについても質問が来ていました。
「鈴木捜査官の遺体の目じりから涙が一筋流れていました。その意図は?」ということですが、いかがですか?
●大友啓史監督:
死者の中に残っていた感情なのか、ただの水滴だったのか、生きている人間と死んでいる人間が、
ある共通の想いで通じ合ったときに何が起こるか、マグダラのマリアをモチーフにしてやりたいなと思ったんです。
脚本にも書いてあるんですが、あれを成立させるには雪子が薪と鈴木の2人にどういう感情をもっているのかが大事で、
栗山さんは、そこをしっかり演じてくれました。
●MC:次に大友さんへ質問です。
「他の映画に比べて「静と動」の対比が強調されていたように感じましたが、意図して作られたのですか?
そのおかげで、最初から最後まで映画の世界に入っていけました」ということですが…。
●大友啓史監督:
原作の設定は2060年なんですが、世界観はある種、非常にアナログなんです。
でも、その中で脳を取り出すという行為が日常の延長線上にある、
そんな世界を描いている、なかなか手ごわい原作なんですよね。
2060年というのは、現代と違って、熱帯化が進んでいき、気候も変わり、
人間のストレスというのもどんどん増えていく…というのを前提に映画の世界観を作っていきました。
一歩間違うと気が触れてしまう人や、様々なストレスを抱えて生きている人たちの話なので、
高めのテンションの芝居を心がけて頂きました。ただ、命を扱う映画、死者の魂に触れる映画でもあるので、
そこは死んだ人間の魂に触れる静粛な部分を大事にして、緩急は意識したところですね。
●MC:栗山さんは初めて本作をご覧になった時の感想はいかがでしたか?
●栗山千明さん:
今まで出演した映画は、自分の出演シーンや自分の演技を観てしまうことが多くて、
作品として観れることがなかなかなかったんですが、この作品は入り込んでしまいました。
なので、皆さんと同じように客観的にショックを受けたり、ストーリーに感動したり素直に受け止めることができました。
自分の出演映画で泣いたのは、この作品が初めてです。
●大友啓史監督:
お客さんを映画の物語の外に置いて、一歩引いた目で観て頂くというよりも、映画の中に巻き込んでしまいたい。
自分の持っている主観と他者の感情や周りの世界で起きていることが混乱してくる。
起承転結がはっきりしたストーリーよりも、その混沌の渦の中にお客さんを引き込めないかなと思って作りました。
<会場のお客様より質問>
●お客様:青木が最初に脳内捜査を行うシーンについて。
「客観的に、客観的に、客観的に」という薪のセリフは、脚本で最初から書かれていたのですか?
●大友啓史監督:
脚本の段階から書いていました。
映画で描いたMRIスキャナーのシステムは、原作とはちょっと違う、この映画独特のものを作り上げていて、
原作では脳そのものを取り出してスキャニングする。
しかし、撮影するにあたっていろいろ調べていくと、脳というのは脊髄から取り出すと、ただの臓器になってしまうんですね。
では、そこに残っている記憶をどうやって見るか。であれば、生きている人間の脳細胞の力を借りて補てんしていく、
という考え方に行きついたわけです。ここを説明し始めると、あと5時間くらいかかります(会場笑)
生きている人間と、死んだ人間の脳をつなげる、ということは、他人の感情が自分の脳になだれ込んでくるということ。
そうなると重要なのは個人の属性。他人の感情とつながることはとても怖いことです。
そこで薪が唯一言えることは「客観的に見ること、あの世界に取り込まれるなよ」ということなんです。