8月27日(土)より、映画『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』がヒューマントラストシネマ有楽町、ユーロスペースほか全国順次公開となりますのに先駆けまして、本日8月14日(日)舞台挨拶付きの一般試写会が行われました。
舞台挨拶には、第二次世界大戦を体験し、戦場に赴いた兄の帰りを待ちわびた経験のある作家でありよい子に読み聞かせ隊隊長の志茂田景樹氏をお招きし、ご自身の戦争体験をはじめ、ペッパー少年のように自分らしい生き方についてなどのお話を伺い終戦記念日を明日にこのタイミング相応しいイベント内容となりました。

<イベントについて>
日時:2016年8月14日(日) 16:20-16:50 (上映後舞台挨拶)
場所:秋葉原UDXシアター(東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDX 4F)
登壇者:志茂田景樹(作家・よい子に読み聞かせ隊隊長/76歳)、(聞き手・森直人(映画ライター))※敬称略

<レポート>
森:まずざっくりした映画の感想からお聞かせください。

志茂田:戦時下のアメリカを舞台にしていますけど、改めて戦争というものは色々なことを引き裂くんだなと思いました。国と国、民族と民族、妻と夫、親と子、親友同士も引き裂く。人々は不条理な戦争で引き裂かれるけど、本当の愛と信念の力が生まれる。敬虔な信仰者は紙の御業、無神論者は信念の力と思うわけですね。いずれもそこから生まれるものは人にとって一番大切なものになるのだと思います。

森:劇中で司祭さまが主人公のペッパー少年に憎しみの目をしていちゃだめだ、というセリフがありますね。

志茂田:僕は人間が持っている愛が1%あれば99%の憎しみは消えると思っています。

森:志茂田さんご自身も戦争を体験されていらっしゃいますね。戦地に行ったお兄さんのお話しを伺いましたが、その間の心の支えは何だったのでしょうか?

志茂田:僕には15歳離れた兄がいました。昭和20年、僕が5歳なる年に二十歳になる兄です。まだ兄が戦争に行く前に窓ガラスの曇りを使って僕にカタカナを教えてくれていました。その後ひらがなをすべて覚えきらないうちに兄は兵隊として満州へいきました。
軍事郵便は遅れることがなかったため、父、母、姉2人には手紙が来ていたので、僕は習ったカタカナで手紙を書いたら兄から葉書が届いたのです。本日現物をもってきたので読み上げます。
「忠男(※本名:下田忠男)、兄ちゃんは忠男の書いたカタカナを読みましたよ。満州に行くときお酒に酔って忠男に敬礼をしたね。忠男は飛行機乗りになりなさい。早く兵隊さんになって敵のB29を落しなさい。お母さんとお父さんのいうことをよく聞きなさい」
勇ましいこと言っているが本心ではないのです。本当は戦地から早く帰りたいのです。検閲があるため、都合の良くない内容は墨で消されてしまいます。B29について勇ましいことを綴った後に、お父さんお母さんのことを綴ったことで僕にはわかりました。
その年の8月15日から夜半にかけて兄は戦死しました。ソ連軍が入ってきてあっという間に蹴散らされたのです。逃げながらの中で8月15日戦争が終わったこと知らなかったのです。この映画を観ながら僕は兄が戦死したのは幻想ではないか…と思ってしまいました。

森:「よい子に読み聞かせ隊」の活動をされるきっかけはなんですか?

志茂田:1999年8月結成して、今年で17年になります。当時僕は児童書や絵本は書いてなかったのですが、「よい子に読み聞かせ隊」の活動をしている中であるお母さんから、絵本は書いていないのですか?と聞かれて書き始めました。1996年に小さな出版社を立ち上げて宣伝のつもりで全国の書店でサイン会を催したのです。書店はショッピングモールに入っていることが多いから、親子連れが多いのです。官能小説を書いていたから子供たちには不自然だったのですね。立ち寄っても1,2分で去ってしまう。あるときにあの親子たちに絵本を読み聞かせできたら良いなと思ったんですね。大人向けの小説・エッセイを書くのと違い、子供向けの絵本を書くのはイメージなんです。構想はなくて。イメージが広がらないと書けないんですよ。

森:今作も監督によるオリジナルの脚本ですね。児童書の原作があるような内容ですよね。

志茂田:日本的だなと思いました。甲冑が登場するシーンがあるけど黒澤明映画に影響されているなと。
家族愛が濃密に、でも嫌味でなく描かれている。普通戦争映画で引き裂かれるのは恋をしている男女という物語が多いですが、この作品は男女が出てこないから新鮮ですよね。この映画はハードルは低いけれど、観ている途中で考えさせられる。泣くべきところではないけど涙が出てきました。不思議な演出効果が出ていますよね。絵で示されるイメージをうまく処理している監督だな、と思いました。

森:それでは最後にメッセージをどうぞ。

ただただ観てほしい。観ればわかるということです。こういった映画はヒットしてほしいです。僕も今日は「ヤーーーーー」(劇中の主人公ペッパー少年と同じ両手で構えるポーズで)っと念を送ります。