M;じゃあ、佐久間さんと山戸さんと付き合うのはどうしたらいいですか?
山:「一流クリエーターと恋愛するには」というクエスチョンには、二つ解があると思いますね。一つ目は、「自分が超一流クリエーターになること」。そうすれば、一流クリエーターと付き合うのは簡単です。みなさん、静寂ですね(笑) 二つ目は、「その人を超一流クリエーターにしてあげようと動くこと」ではないでしょうか。代替の効かない恋愛を望むには、その二つしか、道がない気がしますね。
佐:いや、僕も全く同じです。そう思いますね。僕は大体、映画が好きな人とか趣味が合う人とは長く続かなかったんですよ。それはなんでかっていうと、同じ映画とか漫画が好きな人って、最終的に価値観の決裂が訪れるんですよね。唯一結婚できたのは、好きなものはちゃんとあるんだけど、別々で映画観に行くとか、意見は言わないとか、そういうことの出来る相手で、だから結婚できたんですけど。
山:すごい勉強になりますね。結婚、面白そうですね。
佐:ぼくは12年結婚してるから一概に言えないけど、身を削るときもよかったなって思う時もある。人と一緒に暮らすっていうのは、おもしろいです。
山:恋愛って言語化できないんですけど、だから一生語らなくてもいいものだと思うんですが、結婚って言葉として社会化されるじゃないですか。普通の夫婦はこうというように規定もされるし、その問いもきっとスリリングですよね。
佐:ホントに普通の夫婦ってないじゃないですか。それぞれそれなりに地獄を抱えてるっていうか…夫婦とか家族っていうのは全部が幸せじゃないですからね。それぞれの零れ落ちちゃう地獄みたいなものを持っていると思います。

【会場の質問:恋愛相談】
M:会場の皆さんからたくさん質問をいただいています。恋愛相談もきています。
佐:僕、じゃあ読みますね。「現在29歳です。高校生の頃から一人の人とお付き合いしています。恋愛は作品にも影響すると思いますが経験豊富な方と私のように一人の人としかお付き合いしたことない人とでは作品からそんな違いを感じますか?ないものねだりかもしれませんが、たくさんの方といろんな恋愛をされてきた方と作品が魅力的にみえてきてしまったりします」
山:この方は、今の彼氏と真剣に付き合いつつ、いろんな恋をした方がいいと思います。はい、じゃあ次!
会場(爆笑)
山:必ず、そうしてください。
佐:「恋愛相談です。今一回りくらい上の人に片想いしています。何度か二人で出かけて、向こうも好きでなかろうかと思うのですが、付き合うとかはできないといわれています。酔っぱらって手をつないだときとか、いくつだっけ?と聞かれて、やっぱり年齢差がネックなのかと思っています。年の差恋愛は両方にとって確かにリスキーだと思いますがどうしたらその壁を乗り超えようと言えるのでしょうか。ちなみに二十代前半と三十代後半です」
山:これ、佐久間さんにお聞きしたいですね。
佐:でもこの三十代後半の方のほうが、ものすごくいいやつじゃないですか?きちんと二十代前半の子との恋愛を考えてて、飛び越えられないって言ってるって。
山:そうなのかな? でも私からこの方に言えることは、相手が本当にスイッチ入るまでは良い具合に温めておいて、他の沢山の人と恋愛をした方が良さそうですね。
会場(爆笑)
山:だって、ほんとにそうだから(笑) 絶対にそれが真実だから。
佐:次の質問。「齢22年、彼氏ができたことがありません。告白されてもタイプじゃないので断り、告白してもタイプじゃないからと断られ、恋愛を成就させる秘訣はなんでようか? お二人は自分と相手の需要すんなりマッチすることが多いですか? 」でも告白をされてるわけだからね。とりあえず付き合うってことができないってことですよね。
山:自分と相手の需要がすんなりマッチすること、か…。
佐:こんなことってめったになくないですか? 需要がマッチすることなんて。
山:やっぱり、どっちかの欲望が駆動してから、反射するのですかね。
佐:どうですか? 山戸さん、一刀両断してください。
山:この方おそらく、魅力的な方だと思うので、でも成就されないのは、まず告白の仕方に問題があるのではないでしょうか。「こんなこと言われたら絶対に断れないよ」「好きになっちゃうよ」という告白をしたらどうですか。クリエイションに恋愛が必要なのではなく、恋愛自体がクリエイションなので。もしも異性からこんな愛の告白をされたら、こんな出会い方をしちゃったら、好きになるしかないっていう岐路はあるじゃなですか。それはこの世に現然と存在しているわけですよね。ご自分が、全然好きじゃない人からどう告白されたら、「あ、でもこの人と付き合ったら夢の世界が広がってるかもしれない…」と思えるのか。そんな、面白い告白空間を創造する方向でぜひ。相手がYESって言うしかない、その道を照らし出すような告白をしてみたらどうでしょうか。

【会場質問:お二人の恋愛観について聞きたいこと】
佐:質問「恋愛すると何か自分に変化は起きますか? 今までそのような経験はありますか? 」
山:どうですか? 女の子に囲まれて立教に落ちた佐久間さんですが、なにか変化はありましたか? 
佐:僕の作るものでいうと、変わらないですね。彼女ができると、おもしろくなくなる芸人とかいるんですよ。彼女にそんな下ネタいうのやめてって言われて。別れたほうが面白くなる芸人とか絶対いて。実は僕もそうなんですよ。結婚して、他の女性がなんとも思わなくなって、モテようと思わなくなってから、面白い番組を作るようになりました。色気がなくなったというか。奥さんは僕の番組を見ないので、誰かに好かれようと思って作らなくていいから、BPOに怒られないレベルまで攻めて大丈夫だなとか。もし彼女が僕の作るような番組が苦手な人だったら、ちょっと気にしたと思うので。
山:その感じすごくわかりますね。いま映画を見てくれてる方は、女性のお客さんが多くて、『溺れるナイフ』も女性向けの作品なんですけど。最初のインディーズの映画の世界には男性の監督が多い中、男性にはどう見られるのかという意識を捨てないと強い作品を作れないなと思いました。
佐:山戸さん。「初恋はいつですか」っていうのが来てますよ。
山:次の恋を、初恋にする予定です。
佐:おぉ〜。山戸さんとラジオやりたいですね(笑)
山:じゃあ、テレビ東京でラジオやりますか。テレビ画面を真っ暗にして(笑) 
佐:その企画書書いたら、僕気が触れたと思われますよ(笑) 「山戸さん、佐久間さんこんばんわ。早速質問です。忘れられない恋愛はしたことありますか?出会った瞬間に、あ、この日と一緒になるなとか第六感が働くような運命の恋ってしたことありますか?」 ペンネーム、えみさんから。
山:佐久間さん、どうですか?
佐:結局運命の恋じゃなかったんですけど。19か20くらいの時に付き合ってた子がいて、その子は第一回目のフジロックでハイロウズの時に将棋倒しになって救護室に運んだ子だったんですよ。台風が来てみんな死にそうになってた伝説の回。
山:佐久間さんのようにトラブルシューティング能力の高い男性は往々にして、女性に、「こんな窮地から私を救ってくれるなんて、これが運命の恋なんだ」って思わせますね。
佐:彼女を救護室に運んだら、お名前だけでも…って言われて(笑)
山:完全にロミオですね(笑)
佐:「今の仕事をしていて、大学時代にやっておいたほうがいいってことはありますか? 恋愛も必要ですか?」 クリエーターを目指してるんでしょうね。
山:きっとね、大学生だったら、恋愛より夢を目指して具体的に努力したほうが早い気がしますよ。
佐:そうですよね。恋愛が必要だから恋愛をするのではなく。大学時代に夢をかなえるために好ぬほど努力したほうがいいと思います。そっちのほうが早いですよ絶対。
山:テレビプロデューサーになっている自分に、映画監督になっている自分に恋をするみたいな感じで。そういう気持ちで頑張っていけば、その途中で自然と、いま「恋愛が必要だから」って思ってする恋愛よりも、良い恋愛ができるんじゃないですかね。一挙両得で、進まれてください。
佐:「夢をかなえるために必要なものは何だと思いますか? 」難しいですよね。
山:佐久間さん、夢は叶っていますか?
佐:うーん。夢が叶ってるかって言われたら難しいですね。その都度目標はできているけど、作れば作るほど、今ある自分は自分が憧れていた番組への道に続いてるような気もするけど、遠ざかってる気もするというか…足りないものがどんどん見えてくると思うと、夢がかなってると思ったことはないですね。
山:でもずーっと夢を見続けて、どんどん大きいほうに行くって感じですものね。どんどん遠くに行くというか。
佐:そう、具体化するほど。近づいて遠ざかっての繰り返し。
山:恋愛って、「恋に落ちる」とか、「心を奪われる」っていうじゃないですか、でもきっと、その状態では夢は叶わなくて。自分の心の輪郭を知ると、きっと夢は叶います。芸術は心の発露だから。夢を叶える恋っていうのは、心奪われる恋ではない。そうではなくて、自分の心が自分の心のままで、好きな人が自分の心に触った時、「あ、そんなところに私の心の形あったんだね」って、心の形の輪郭を教えてくれるような恋。そういう恋があるんだと思いますね。そういう恋は必ず芸術に姿を変えてゆくと思うので、心を奪われずに、自分の心のままで相手を見つめるということで、頑張ってほしいですね。