この度、JIMCA(日本国際映画著作権協会)主催の、SNSなどを幅広く活用する大学生・専門学校生を対象に、知的財産権について考える「Summer Cinema Workshop 2016」を開催いたしました。

JIMCA(日本国際映画著作権協会)とは、モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)の全面的支援を得て、映画の著作物に係わる著作権侵害行為の防止活動、著作権思想の普及を目的に、調査・警告・指導、及び広報活動を行っている法人企業です。

今年の4/26(火)“世界知的所有権の日”にはアカデミー賞で監督賞他多数を受賞した『レヴェナント:蘇えりし者』の上映会を開催するなど、知的所有権保護の重要性を発信する活動に力を注いでいます。

当日は、事前に応募し集められた映画業界、著作権保護に興味のある学生約100名が、新作映画『スーサイド・スクワッド』(9月10日公開、配給:ワーナー・ブラザース映画)の特別試写会に参加。その後、映画著作権保護思想の普及を目的とした講演会や映画業界で活躍する面々をアドバイザーと迎え、同作の広報文・コピーを作成、SNS上にて投稿してもらうなどのワークショップが行われました。

JIMCA主催「Summer Cinema Workshop 2016」

日時:8月9日(火)
場所:六本木ヒルズクラブ the club roomⅠ

登壇者:デール・クライシャー(米国大使館、文化・交流担当官)
    糸井恵(米国大使館、広報・文化交流部/デジタルメディアコーディネーター)
     今村哲也(明治大学教授)
     小杉陵(ワーナー・ブラザース映画、宣伝部長/マーケティングディレクター)   

アドバイザー:奥田誠治(日本テレビ) 
      水足貴治(ワーナー・ブラザース映画 『スーサイド・スクワッド』宣伝担当者)
      菅野陽介(映画宣伝会社マンハッタンピープル代表)     
      近藤雅一(映画WEB宣伝会社ガイエ 共同代表)
      小山晃弘(映画WEB宣伝会社ガイエ ソーシャルプランナー)

米国大使館のデール・クライシャー氏が登壇すると、広報に関しての話を披露。
「自らがメッセージを作り出すというよりは、むしろ決められたことを正しく外に伝えていくことが大事だと感じています。広報の仕事というのは、魅力的にみせるのと同時に時にはみなさんがみたくないものをみせてしまうこともあります。お客様が買いに来た車を売るのではなくて、あなたが売りたい車をどのように売るか考えることが大事です。
それは、ターゲットとしているお客様に嘘をつくのではなく、全く逆のことなのです。
あなたが売ろうとしているモノであったり、伝えようとしているメッセージそのものの価値を自ら理解しながら伝えることが、宣伝においては非常に大事なことだと考えます。」
また、その特徴を掴まずに仕掛けようとすると逆効果になる可能性もあると説明しました。

続けて、アメリカと日本との文化を共有し長く友好な関係を築く為に、今回のようなワークショップを行うことで
文化交流も務めているというデール氏は「安部首相とオバマ大統領が首脳会議の中で発表した、2020年までに日本からアメリカへアメリカから日本へに向かう学生を倍増させるという計画がありますが、それは日米が深い友好関係をつくっていく上で非常に重要なことだと認識しています。」とコメント、そのミッションの為につくられたのが、大使館初のゆるキャラである豆夢(とむ)くんだといいます。
アメリカの有名なお菓子であるジェリービーンズを象徴するように、色んな形、色で多様性を象徴しているそうで
「留学に関するプローモーションをしていく上で、ターゲットとなるのは主に学生さんとなりますが、そういった方々に向けて非常に有効なアピール方法だと考えています。全世界にある大使館の中で、日本の大使館しかこういったゆるキャラは開発していません!」と明かし、この日本独自につくりだしたキャラクターが日本とアメリカの架け橋となることをアピールしました。

また、宣伝においての懸念点についても言及。広報が一番やってはいけないことは、利益だけの為に嘘をつくことだと指摘します。
「一時的にお客さんは増えるとしても、それが自分が思っていたものでなかったとすれば、いずれは離れてしまいます。
誇大広告はそれだけ失望感を煽る可能性が高いのです。わたしたちはそこも意識して仕事しています。
お客さんのみたいもの聞きたいものをみせることだけではなく、彼らがみたいものをつくっていくという作業も重要だと思います。
しかしそれをどこまでリミットをかけながら挑発的になれるかというのが日々の課題であると感じています。」

デール氏は、「1台の車を10名に売るのではなく、10台の中の1台を売るという意識をもつこと。」と再び車のディーラーの話に例え、「私たちがしていることは、例えば、アメリカを代表する文化、価値観、政策などを様々な観点からお見せしていくことです。
結局は、伝えるべき方々にアメリカがどのようなイメージであるかを個々で作っていただく、というところも含めて戦略を練っています。
それが正しく実行されれば、USAというブランドそのものが、世界中の皆様にご理解いただけて、ファンになっていただけると信じています」
と締めくくりました。

続いてアメリカ大使館でソーシャルメディアを担当している糸井氏は、登壇して早々に豆夢(とむ)くんをアピールし
会場の笑いを誘うと、米国大使館の公式SNSでの展開を紹介。豆夢(とむ)くんを活用した投稿や写真好きだという大使の投稿なども紹介し、会場にいる学生の興味をひきました。
日々様々なニュースが流れている中で、ニュースのソース(源)をどこに求めるかについて以前より選択肢が増えているという糸井氏は、情報を受ける側の変化を指摘。
「例えば、レストラン選びの際、新聞やTVよりソーシャルメディアで書かれている評価をみて購入したりすることの方が今は身近に感じる方が多いと感じています。それと同じことで、我々は大使館に関するニュース、大使館側で提供したいと思っているサービスについて皆さんがソーシャルメディアで見ることで、より身近に感じていただきたいと思っています。」

公式SNSの中で、様々なアカウントをクロスさせることで、相乗効果を生み出すと説明する糸井氏は、
「”野菜とお菓子”という言い方を大使館ではよくするのですが、楽しいコンテンツをつくることで親しみをもってもらい、私たちが掲げるポリシーや伝えたい内容をより多くの人に伝えていきたい。このような施策により、
普段あまり興味をもたれにくい真面目な声明なども読まれるようになっているのではと感じています」
と締めくくりました。

その後、明治大学今村氏より、知的財産権の重要性についての講演を実施。
映画コンテンツの特徴として、①製作に莫大な費用がかかる、②多様な収益ソースがある、③プレーヤーが多い、の3つを挙げて説明しました。
①に関して「面白い映画を作るには莫大な資金が必要。かといってそれが必ずしもうまくいくわけではない、リスクが高い問題点がある」②に関して「興行収入以外に、キャラクターでノベライゼーションしたり、使った音楽をCDにしたりなど、色んな収益ソースがある。ビジネス展開をしていくときに何の権利もないのにビジネスを展開できるわけではない。映画の場合は知的財産権だったり、著作権がコアとなってビジネス展開がされていきます」③に関して「映画だと多くの人が関わるということで、それぞれの人が自分のルールを持っているわけです。そのルールというものをこの分野で明確にしていく必要があるんですね。その1つとして、著作権法だったり、契約だったりがあるわけです」

その後登壇した小杉氏からは、映画宣伝のトレンドとターゲティングについての講演を実施。
日本においてアメコミ映画が近年興行収入を伸ばしている背景に10代、20代の若い層から支持を受けていことを示唆。
そこには「楽しい、意外性がある、共感しやすい」の3つのポイントが絡んでいると分析。
また、『スーサイド・スクワッド』におけるアメリカと日本での宣伝手法を比較し、「本国の宣伝戦略では、まさにタイトルにもなっているスーサイド・スクワッド=自殺にも匹敵するような任務を任された犯罪者集団ということを、一番のセールスポイントとしています」と説明、一方の日本の宣伝戦略として「ハーレー・クイーンをキーパーソンとして、プロモーションの中心に置きました。彼女を言い当てるキーワードとして、型破りで自由奔放、おバカで凶暴、恋に一途であることを挙げて、史上最強の悪くて可愛い”悪かわヒロイン”ということでターゲティングの設定をしています」と明かしました。

以上4名の講演を受けた上で、学生に映画『スーサイド・スクワッド』の広報文・コピーを作成、SNS上にて投稿してもらう、ワークショップを実施。アドバイザーの奥田氏、水足氏、菅野氏、近藤氏、小山氏が各テーブルを回り、学生と一緒になってSNSを使っての効果的な宣伝を模索しました。

最後に、アドバイザーを代表して奥田氏より「宣伝はすごく大切で、どんなに作品が良くても、宣伝が悪ければお客さんは来ません。映画が好きで今日集まっていただいた皆さんにはどんな形でもいいから是非、映画の仕事に進んでいっていただけたらと思います。本当に楽しいですよ、映画は!僕は本当にこの仕事をして良かったです」とこれから映画業界を担っていく若い世代にエールを送られ、本日のイベントは終了となりました。