映画「ライオット・クラブ」のトークイベントが8月7日(日)に行われました。

—ご挨拶をお願いします

Ladies and Gentleman good afternoon!
ハリー杉山です。どうぞ宜しくお願いいたします。

どうでしたかみなさん?楽しめました?結構パンチある映画ですよね。とにかく将来のイギリスの映画界を背負っていくような役者たちが集まっている、大注目作ですよね。

—私も初めて見た時は、とてもきらびやかで・・・。ただ、なんというか後味が・・・。

はい。正直に言いますが、後味最悪です(笑)。

—レビューにも散々「ムナクソ悪い」と散々書かれました。

でも、気持ちよく終わる映画がすべてではないし、ブリティッシュできれいな上流階級の英語を話しながら、中身は腐ってる、という。ギャップ感がたまらないという人もいますね。この映画の半分は本当のことだと思います。みなさんパブリック・スクールってご存知でしょうか?イギリスにはパブリック・スクールと、ステイト・スクールがあって、どちらかといとステイト・スクールの方が学費などもお手ごろ。ケース・バイ・ケースなのですが、政府によって学費が助成される場合もある。わかりやすく言うと、パブリック・スクールは日本で言うところの私立ですね。

—実際に映画を見る前にこの映画の「ムナクソ悪い」感じ、想像されていました?ご自身のご体験からもしかして、内容を想像できたのではないかなと思いまして。

終わり方としては、「セブン」という映画の終わり方と同じくらいムナクソ悪い感じですよね。イギリスでは今でも階級制度があることは無視できなくて、父はイギリス人でパブリック・スクールのウィンチェスター・カレッジからオックスフォード大学へ行きました。おじいちゃんもそう。僕の家系のほとんどがオックスフォード大学かケンブリッジ大学に行っているんですが、この200年の歴史の中で僕が初めて落ちてしまうわけです(笑)。こんなビジュアルなので日本では外国人扱いを受けますが、僕が11歳でイギリスに行った時には、僕はオリエンタルとしての扱いを受けました。階級制度や人種の壁がどうしてもあります。

—映画でいうと(ギリシャ出身の)ディミトリの立ち位置ですよね。

おっしゃる通り。ただ、本当のイギリス人って何?といったら難しいですよね。ウィリアム1世もそもそもフランスから入って来ているわけだし、バイキングも来ているわけだし。だからすごくこういう人種差別はくだらないんですよ。

—ただ、実際にこういった人種差別はあるわけですよね。

うーん。ハリー・ポッターでのマッド・ブラッド的な考えでは、(差別が)あったと思う。イギリスで僕が自分を出せるようになったのも父の教えのおかげなんです。常に自問自答することと、疑問に感じたら人に聞いてみること。自分の考えをきちんと人に伝えるようにしないと、潰されてしまうんですよ。最近友人たちが、彼らの子どもたちをイギリスに留学させたいという相談を受けるのですが、その場合に中学や高校のタイミングではなく、小学校から行くということも考えたほうがいいよとアドバイスしているんです。日本人はイギリスでもリスペクトされる存在ではあるのですが、日本人ならではのコミュニケーションの仕方や、自分の出し方は、イギリスとは全然違う。コミュニケーションのとり方において、躊躇があると「で、結局お前は何考えてるの?」と思われてしまうことが、自分の経験上、多々あったので。

—映画の中で「儀式」がありましたが、ハリーさんも似たような洗礼を受けたそうですが。

具体的な内容は18禁ですよね(笑)。11歳で渡英した時行った学校がヒル・ハウスという、チャールズ皇太子も行ったロンドンのデイスクールでした。パブリック・スクールに入るためのプレップ・スクールなんですが。このヒル・ハウスからほとんどの人がイートンやウェストミンスターに行くわけです。ちなみにこの映画の中でみんなイートンか、ウェストミンスターか、せいぜいハロー出身ということになっていますが、(母校である)ウィンチェスターが入ってないじゃん!!どういうことよ!!っていう(笑)。ほんとはもっと他にもいろいろ名門スクールがあるんですよ。で、儀式の話ですよね。ヒル・ハウスではそういった儀式はなかったです。ウィンチェスターに入ってからは、ありました。全寮制での生活になると、夜は生徒たちのものですからね。1382年に創立された学校なので、そういう伝統があると先生たちもわかっているんですよね。サーネームのアルファベット順にその儀式が行われるんですが、上級生たちが夜やってきて、目隠しされ、拉致られ、引きずられ、暗い部屋に入れられて、質問をされるんです。その質問というのが、「寮のCハウスの寮長の先生のニックネームは何だ?」というとてもマニアックな質問(笑)。わかるはずがない質問なんです。適当に答えますが当然違って、儀式が始まるわけです。口のなかに「いろんな液体」を入れられて飲まなければいけないっていう、ほぼほぼ「ライオット・クラブ」と変わらないですよね(笑)映画の中ほどえげつないものではないですが、飲んじゃいけないもの、入ってました(笑)イギリスで有名なシャンプーとか、イギリスで有名なグミとか。グレープ味でしたから、今でもよく覚えてます。さらに2問目の質問にも間違えると、今度はいろんなものが入ってるお風呂に服を脱がされて、入れられるんです。

—衝撃的ですね。言葉を失ってしまいます。

ただ、僕は父やおじいちゃんが通ったウィンチェスター・カレッジにずっと憧れがあり、いつかは父のような立派な人間になるためのほんの一歩なのだな、と。僕、スーパーポジティブなんですよ。

—日本だったらいじめですよね。

でも僕はもう、喜んで(笑)。おそらくそこから僕のドM気質が始まったのかなと思います。

—映画の中では代々血筋のよい本当のセレブと、成金といろんなキャラクターがいましたが。

正直、最近ウィンチェスターでも海外の億万長者たちの子息たちが入ってきている。けれど寄付金を出せば入れるというものではなくて、ウィンチェスター独自の試験があり、あくまで入学には点数が必要です。だから、彼らは全員抜群に頭がいいですよ。

—映画の最後で彼らは事なきを得ますが。

映画の最後、彼らがやったことは半殺しですよね。ただ彼らの頭脳・カリスマ性はかわれていて、ある程度彼らの将来は約束されている。ただ、ご安心ください。(彼らの悪事は)ザ・サンとかデイリー・メールとか、そういうゲスい週刊誌が暴くので(笑)映画の中で描かれる儀式については実際に行われてる感じに近いかなあと思いますが、実際に事件化するようなことが頻繁に起きているということはないと思います。

—「ブリンドン・クラブ」はご存知でしたか?

もちろん、有名です。
ブリンドン・クラブだけではなく、各学校にこういったクラブが存在します。

—洗礼の儀式も含めてイギリスの学校は日本よりも「大人の扱い」を受けるという印象ですが。

そうですね。ただ、先生たちもこの儀式についてはTOO MUCHだと考えたのか、僕が在学中にその儀式が廃止されました。

—映画の撮影がウィンチェスター・カレッジで行われていますね。

(ポスターを見ながら)知らなかったのですが、これを見て怪しいなと思っていました。この建造物は天才学生だけが入れる寮エックスハウスの隣にありました。この建造物にはエックスハウス出身の著名人たちの名前が刻まれているんです。さらにチラシに出てくるこの芝生は僕が日常的にクリケットをやっていたクリケット・フィールドです。後ろに見えるのは大聖堂。このウィンチェスターという学校のおかげで、僕ができあがったといっても過言ではないのです。伝統や愛国心はここで学びました。映画に出てくる腐った人間たちばかりではないですよ。

—少しお時間があるので、観客の方からご質問をいただきます。
—生徒会長や寮長の特権はなんでしょうか?

生徒たちからの圧倒的なリスペクトを受けることですね。あとは生徒たちを取りまとめ、先生とのパイプ的な役を担うので、先生たちからの信頼も得られる。今でもウィンチェスターに帰ると、先生たちに挨拶に行きますし、人生の岐路に立ったとき、僕の大好きな歴史の先生に教えを請います。先生が父のような存在になるんですよね。そして自分の名前が壁に刻まれます。何代かさかのぼると父の名前もあります。うるっときますね。僕は伝統が大好きなんです。イギリスの伝統も好きだし日本の杉山家の伝統も大好き。このブレスレットもおじいちゃんが第一次世界大戦に行った時にしていた、身元証明のためのブレスレット。伝統に対する愛着心をウィンチェスターは僕の中に育ててくれました。日本とイギリスはそういった伝統に対する考え方が近いですよね。その話をすると、長くなりますが。

—最後にひとこと、この映画をこういう観点から見ると面白い、というポイントを教えてください。

ショッキングなシーンやイギリスの階級制度について赤裸々に語るような映画ではあるのですが、僕としては美しいイギリスの名門オックスフォードの知られざる雰囲気、服装や建造物、音楽なんかも楽しんでもらいたい。批判的でありながらこの映画の監督さんはイギリスらしいところもしっかりと描いてらっしゃるので、そこを楽しんでいただけたら。実際に構内に入れる場所もあるので、イギリス旅行に行った時にロンドン市内だけでなく、知られざるイギリスにも足を運んでみてください。