『パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト』(Bnkamuraル・シネマ他、全国ロードショー中)は、フラメンコに革命を起こし、その超絶的な速弾きと類まれなるテクニックで、ジャンルを超えて世界中の音楽ファンを魅了し続けた偉大なるギタリスト、パコ・デ・ルシアのドキュメンタリーです。大ヒットを記念し、パコ・デ・ルシアを愛する平野啓一郎さん(芥川賞作家)×鈴木大介さん(ギタリスト)によるスペシャルトークを行いました、天才ギタリストの、苦しく切ない大人の恋愛を描き、ベストセラーになっている「マチネの終わりに」には、パコ・デ・ルシアの名前がさりげなく登場します。平野さんは、もともとパコの大ファンで、本作にも下記の絶賛のコメントをお寄せくださいました。
“神々しいまでの天才! しかし、その栄光と孤独に満ちた人生は、僕たちをただ圧倒するばかりでなく、創造への限りない憧れを喚起し、鼓舞する。パコの音楽は不滅だが、彼自身もまた永遠の存在だ。”
パコ・デ・ルシアの<艶のある音色>は多くの女性たちを魅了し続けています。その世界の魅力を、いまもっとも注目のギタリスト鈴木大介さんとともに語りつくしていただきました。

トーク内容

鈴木:「マチネの終わりに」ベストセラーおめでとうございます。
平野:ありがとうございます。
鈴木:ギタリストが主人公なので、最初、ぼくの師匠(福田進一さん)に取材に来られ、そのあと、ぼくも取材されましたね。小説を読むと、ここは師匠、ここは僕かな?と・・よくギタリストをお調べになりましたね、その精度にびっくりし、怖くなりました。
平野:ギター歴は、小学生のときにエレキギターを買い、ロック少年でした。80年代はギターが流行ってました。最初はマクラフリンから入り、それからスーパーギタートリオへ。パコは別格にすごすぎて、未来永劫。違う世界でした。フラメンコギターはよく知りませんでしたが、目覚めました、すごい世界です。パコの来日公演は3回行きました、感動しました。
鈴木:ぼくはスーパーギタートリオのまねをしたりしてました。1998年パコが来日した時に会いました。カニサレスのツインギターに緊張しました。
平野:クラシック・ギタリストにとってパコとは?
鈴木:クラシックの曲は譜面をそのとおりに、毎日練習します。日によって変わることはない。フラメンコギターはそのときの気持ちによって、瞬発力、別種のギターのうまさが要求される。憧れます。
平野:クラシック・ギタリストは、音色にこだわりありますが、フラメンコギター、パコはタッチ?
鈴木:パコのギターはしびれるギター。羨ましい。とくにフラメンコギターは派手な見せ場がたくさんある。
平野:パコは、ものすごいカリスマがある。神々しい、震えるような。
鈴木:パコは背負っているものがすごい。ギターの神様と交信している。チャンネルあるかのように舞台でやっていた。前人未到の場所にいる。
平野:パコはある時期、フュージョンを教えてもらいに行ったりしていた。その探求心、偉いです。ジャズ、アドリブのシステムを吸収して、鍛えた。
鈴木:パコは40代、アルバム「シロッコ」で、それまでのフラメンコギターに新しい風を入れるため一人スタジオに入り表現にとりくんだ。
平野:キレッキレ、説得力あるアルバムですね。
鈴木:アルバム「ルシア」は、50歳で、「年を取ると指が動かない」といいながら「失うものがあると得るものある」と新しいものに入っていく。ルービンシュタイン、カザルスの領域の音がしている。チューニングからしびれました。彼ほど、神様と思えるひとはいない。
クラシック通の平野さんにとってパコは?
平野:野趣ある。洗練されていて土臭く。音階が多少上がろうと、関係ない音楽の力強さ。はみ出し、高揚感がある。超絶技巧は冷たい人もいるが、パコは、超絶技巧と情熱がやどる、絶妙なブレンド。高揚感とエモーショナルな旋律。
鈴木:旋律!いいですね。
平野:「二筋の川」も鼻歌できるくらいキャッチーですね。見た目も白いシャツで清潔感あり、シンプルでかっこいい。
鈴木:聖職者のよう。白と黒。最後に、パコはかっこいいギター、これです。
平野:パコは、創造することの素晴らしさを鼓舞してくれる。煽られます。創作に行き詰ったとき、パコの音楽を聴いて、弱音をはいてちゃいけない、と刺激を受けます。