角川映画誕生から40年−。1976年衰退の一途を辿る映画界に突如彗星のごとく現れ、「読んでから見るか、見てから読むか」をコピーにした書籍との連動や、当時はまだ珍しかったテレビを使っての宣伝といったメディアミックス展開を行ない世の中に一大旋風を巻き起こした【角川映画】。
1976年の第一弾、今や伝説となった巨匠・市川崑監督の『犬神家の一族』に始まり、昭和時代終了の1988年宮沢りえの映画デビュー作『ぼくらの七日間戦争』まで、パワー溢れる48作品を角川シネマ新宿にて一挙上映中。
 開催を記念して、女優同士の闘いをセンセーショナルに描き、【女優】映画として傑作と名高い『Wの悲劇』の三田佳子さん、澤井信一郎監督が舞台あいさつに登壇致しました。

【日時】 7月31日(日)
【場所】 角川シネマ宿 【登壇者】 三田佳子(74歳)、
澤井信一郎監督(77歳) (『Wの悲劇』監督)

澤井監督:作った当時の興奮が蘇り、嬉しい。
劇場が独自に作成した意識調査で99.8%の人が満足しているという結果に。お客さんが入っているのもだけど、満足度が高くて嬉しかった。
三田:32年経ってもスクリーンにムンムンの熱気でしかも超満員でご挨拶できて嬉しい。水野晴郎さんだったら「映画っていいですね」と言うわね。
とまずご挨拶。

三田:最初に聞いたとき「大女優の役なんてやーねぇ」と思い、監督名を聞いたら知らない人ねと思い会ってみたら「澤井ちゃんじゃない」とびっくり。
*澤井監督が助監督時代、5本ほど一緒に仕事をしていたことがあり、澤井監督
も、「東映時代、三田さんの草履取りしてました(笑)。僕の映画だから、やってみてと話した。」とのこと。
三田:澤井監督に「若い新人女優と、ベテラン女優の拮抗する演技の映画」と言われたので、「やってみたい!」と言いました。

監督:三田さんの役は演じることの魔術にとりつかれた役。いじめようとかでなくて、何もわからなくなって、弟子に罪をなすり付ける女優の業を描きたかった。バックステージものでは、海外では『イヴの総て』があるけど、日本映画ではないタイプの映画だった。

三田:自分の映画を観るのは恥ずかしいから、公開時に観て以来観直してなかったけど、周囲の人から勧められて観直したら本当にすごかった。出てよかったわ。この映画があったから、宮藤官九郎さんとの「印獣」(舞台)があったし、マツコデラックスさんも『Wの悲劇』が大好きらしく、この間「アウトデラックス」という番組に呼んでくださったりしたのよね。

・・三田さん演じる大女優が新人女優(薬師丸ひろ子)に身代わりを頼むシーンの撮影についてーー
三田:(薬師丸)ひろ子ちゃんが若くて若あゆみたいに力あるから演技しながらフレームから出てしまうのを引き戻したりして大変だった。体力使うからこちらも必死。

また、本作の有名な「あなた女を使わなかったの?どうなの?私は使ってきたわ」という名セリフも再現し、この場面は大変だったと述懐。
(薬師丸演じる静香が)退団か否かを劇団幹部と話し合うシーンも蜷川幸雄さんはいるし、名俳優たちが揃ってるし、死んでもいいとい思う勢いでやりました、と告白。
休憩時間には蜷川さんが寄ってきて、「もっともっとやれ!」と。
(この作品の前に)舞台の経験はあったけど、あんなにオーバーには実際やらない。あの演技は映画との差別化のため。蜷川さんの演劇的な演出もおもしろかった。

——薬師丸ひろ子についてーー
三田:ひろ子ちゃんは、かわいいけいど芯があった。当時彼女は女優を続けるか悩んでいたけど、監督が追い込んだから30年経っても女優を続けているのでは?とも。そして、「そういえばひろ子ちゃんからプロマイド貰ったのよ。三田さんこれもらってください!と。かわいいわよね。今でも持っているわよ。彼女はいまでも会うと最敬礼してくるわ」と撮影当時のエピソードを語った。

最後に「こうした形で32年ぶりに三田佳子をみてくれてありがたいし、嬉しい。生きている限り、面白い映画撮りたいし、これからも一生懸命精進していきます」としめくくった。

「角川映画祭」7月30日(土)〜9月2日(金)
角川シネマ新宿にて48作品一挙上映中!