映画『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』「もっと若いときにこの映画に出会いたかった」井筒監督が絶賛する理由とは?
2014年カンヌ国際映画祭正式出品を始め、ELLE シネマ大賞ノミネート、2015年サンタバーバラ国際映画祭で観客賞、2015年セントルイス国際映画祭で最優秀作品賞を受賞するなど、各国の映画祭で絶賛された感動作
『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』が8月6日(土)YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町、角川シネマ新宿 他にて全国順次公開いたします。
本作は、当時18歳だった「落ちこぼれクラスの元生徒」が自身の体験を元に、監督と共に脚本を共同執筆、出演も果たした、実話に基づく奇跡の物語。 主演のアンヌ先生を演じるセザール賞主演女優賞の名女優アリアンヌ・アスカリッドの迫真の演技、そして何よりも、歴史の生き証人でもあるレオン・ズィゲル氏の壮絶な体験談を真剣な表情で聞き入る生徒たちの演技を超えた表情は、世代を超えて「学ぶこと」「知ること」の大切さを観ている私達に訴えかけてきます。
この度、本作の日本公開を前に、7月25日(月)、映画監督・井筒和幸さんを迎え、トークイベントを開催!
ポーランドのアウシュヴィッツを訪れたことがある井筒監督が、そのときの様子ふくめ、本作を鋭く解説、そして今の日本の教育についても井筒監督ならではの視点で物申す!トークを繰り広げました。
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【日 時】 7月25日(月) 【場 所】 ニッショーホール
【登壇者】 井筒和幸監督 (63歳) / MC:森直人 氏(映画評論家)
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この日、MCを務めた映画評論家の森直人氏から、本作を鑑賞しての感想を問われた井筒監督はまず「この映画をみて、自分も中学3年くらいかな、教師になろうと思ってたことを思い出した。でもこの映画をみたら、こんなヤンチャな奴らがいるクラスで担任なんてなれへんな〜って思ったよ。今、フランスが抱えている社会事情や教育の実態が非常に歴然と描かれている。でも、こんな教室に赴任したら、たまらんなぁ〜」と監督ならではの率直な感想が。
続いて森氏から「先ほど楽屋でフランス映画なのに、なんで俺(がゲスト)なの、って言ってましたけど、劇中で描かれるクラスっていわゆる落ちこぼればかりで、『ガキ帝国』以降、監督が描き続けてきた世界に通じますよ」という指摘が入ると、「確かに問題児ばかり描いてきたのは事実ですけどね。島田紳助から始まってね(笑)いろんな奴らとやってきたけど、実際人間はね、輪になってね、一緒にともに生きていくというのはどういうことか、というのを考えていくのが教育だし、学校であるわけで。僕は今、学生の前で授業することもあるんだけど、若い子たちとどうやって接し、どう育むか、年いけばいくほど考えることになりますね」と井筒監督。
さらに「この作品をみると、アウシュヴィッツについて、僕もリアルタイムでこういう教室で、こういう先生に、こういう授業を教えてほしかった!もっと若いときに出会いたかった!」と熱弁。その理由としては、「劇中の生徒たちもそうだけど、変化のインパクトが違う。若い感受性で受け取ることが大切で、年取ってからでは遅いんだよね。もっと若いときになぜこういうことを知らなかったのか、なさけないな、って。この映画では、そういうことを強く感じたなぁ」と熱く観客に語りかける一面も。
実は、井筒監督は3年ほど前に、ポーランドの首都ワルシャワの映画祭に招待された際、現地の方の案内で、アウシュヴィッツ(アウシュヴィッツ強制収容所)に行ったことがあるそうで、その時のことを聞かれると
「電車で2時間半くらいかかったのか、アウシュヴィッツこれはドイツ語で、ポーランド語ではオシフィエンチムという場所になるのですが、結構当時のまま残されていてね、こんな狭い3段ベッドに5,6人で寝ていたのか、とか。歩いて回るんだけど、当時みんな貨車で運ばれてきて、駅で降りて、すぐ選別されて、そこからいわゆるガス室まで、そんな遠くなくて、ほんの何十分かの間に行われていたんだ、と…。心に迫って息ができないって、こういうことか…そんなことを感じました。」 そしてポーランドでは学生が必ず社会科見学のような形で訪れるように決められているようで、若い学生もたくさんいたと語りつつ「日本の教育でも、こういう先生がきて歴史のすべてをきちんと教えていくのが、大切だなとつくづく思った」と貴重な体験とともに語ってくれた。
最後に、これから本作を観る方へ「返す返す言いますが、僕は若いときに、こういう教室にいたかった!やはり人間というのは、若い時にどんなことであれ、経験する、知る、知力をつける、ということが大事だといつも思うから」と強く語り、トークを締めくくった。