11月12日(土)より全国順次公開の冤罪事件を描いた韓国映画『弁護人』が、カリテコレクション2016にて先行プレミア上映されました。
これを記念して日本で人権派弁護士としてご活躍されている宇都宮健児弁護士をお呼びしてトークショーを行いました。

『弁護人』宇都宮弁護士トークショーレポート
◆開催日程:8月6日(土) 
◆場所  :新宿シネマカリテ(新宿区新宿3丁目37-12新宿NOWAビルB1F)
◆登壇者 :宇都宮健児 弁護士

【イベントの様子】
作品の感想を聞かれて「全体的にとても迫力のある映画」と絶賛した宇都宮弁護士。

イム・シワンが実際に10kg体重を落として臨んだという拷問シーンは、「すごく生々しい迫力が有り、衝撃的でした。韓国は1980年代の全斗煥政権時代に、反政府運動の取り締まりをして多くの人を逮捕して、映画同様の拷問をしていたんですね。これは日本が戦前、朝鮮半島を支配していた時代に、日本の特高警察が、社会主義者や文化人など、国家に反する人間を逮捕して拷問していた時代があったのですが、それを真似ていたんですね。そういった戦前の時代には決して戻ってはいけないと思います」と話されました。

自身と主人公の弁護士に重なる点はあるかという質問には、「(映画の主人公もそうだが)弁護士というのは事件によって鍛えられていきます。私も駆け出しの頃、営業能力がなくて、過去に2度弁護士事務所をクビになりました。その時、弁護士会から誰もやりたがらなかったサラ金事件の話が来ました。1970年代当時、サラ金被害は多く、相談者はひどい取り立てに悩んでいたんですね。しかし、私が弁護に就くことによって、取り立てが和らいでいきました。これをきっかけに、サラ金事件はとても重要な事件だと感じ、そこから沢山受けるようになりました。サラ金事件を受けていなければ、今頃私はうだつの上がらない弁護士のままだったかもしれません(笑)。
この映画も、馴染みのクッパ店の息子が事件に巻き込まれたことで、主人公が金儲けから人権派の弁護士に変わっていきましたね。」とご自身の過去の経験を交えて主人公との共通点を話されました。

また劇中でも、相手側からの主人公への嫌がらせが描かれていましたが、実際にそういうことはあるのかという質問には、「電話での暴言などはサラ金事件を扱ってる時は頻繁にありましたね。
サラ金業者の若者が刃物を持って脅してきた時は、弁護士として依頼人を守るために身を張って話し合いました。『弁護士のケンカは裁判だ。そちらが脅すのならこちらも引き下がらない。』と伝えて立ち去りました。しかし実際にはいつ狙われるかという不安は付きまといました。」と壮絶な経験を話されました。

奥様の影響で韓国のドラマや映画などを見ているという宇都宮弁護士。最近は韓国の弁護士会ともつながりができ、韓国語も習っていると話もされて、観客からも拍手が起きました。

最後に、「本作を特に若い弁護士や、ロースクール、司法修習生などに是非観てほしい」とベテラン弁護士としての立場からお墨付きをいただきました。