現在渋谷で絶賛公開中のチベット仏教の巡礼を描いた『ラサへの歩き方〜祈りの2400km』。
昨日、公開中の劇場にてトークイベントをおこないました。

チベット人の人生の“尺”の取り方に注目!
チャン・ヤン監督の“外の目”が生かされた映画。

への歩き方〜祈りの2400km』は、チベットの11人の村人が “五体投地”という地面に体を投げ出す礼拝を繰り返しながら、2400kmもの距離を1年かけて巡礼する姿を、村人自身が自分を演じる形で描いた劇映画。公開以来、その驚きの映像に盛況が続いている。
この日のトークゲストは、東京外語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授で『ラサへの歩き方』字幕監修に協力してくれた星泉さん。現代チベット映画の2大監督ペマ・ツェテン、ソンタルジャの信頼も篤いチベット文化のスペシャリストだ。

■2016年7月30日(土)16:00の回上映終了後、 シアター・イメージフォーラムにて開催。

  
 星さんは、まず、「五体投地は“尺取虫のような”と形容されるけれど、それでいえばチベットの人たちは人生の“尺”の取り方長いんだということをあらためて感じた。
今生(こんじょう)でうまくいかなくても来世ではうまくいくと考えるようなスケールの大きさ。
それを強く感じさせる映画でしたね」と、『ラサへの歩き方』を見て感想を述べた。
 
 本作は『胡同のひまわり』などで知られる中国人のチャン・ヤンが監督。
星さんは「チャン・ヤン監督は長くチベット文化に関心があって “彼らの文化をリスペクトをもって紹介したい”と語っている。まさにその通りで、監督はチベット人に寄り添った形で描いていて、また “外からの目”だからこそ、チベット人には当たり前ことでも、監督が驚いたことや感動したことをとてもうまくエピソードとして配していて、それが素晴らしい。たとえば、妊婦まで一緒に巡礼に出ることや、村人たちの運転するトラクターが追突されてしまう事故のシーン。ぶつけられたのにそのまま行かせちゃうなんて、いくらその人たちの車に高山病の人が乗っているからって信じられないですよね。
もちろんチベット人皆がそうする訳ではないけど、 “困っている他者がいたら助ける” というチベット人の考え方がうまく出ている」。そして一方、「チャン・ヤン監督は“外からの目”で描くことに徹し、心の中の葛藤はあえて描いていない。それをやっているのがペマ・ツェテン、ソンタルジャなどチベット人の監督です」と、“外からの目”と“内からの目”の違いを語る星さん。『タルロ』で昨年の東京フィルメックスのグランプリを獲ったチベット人のペマ・ツェテン監督を例に挙げ、「ペマ監督は“チベット人にしか撮れない映画、自分たちが日々何を考えているかを表現したい”と言っていて、例えば『タルロ』であれば人間の弱さや絶対的な孤独を描いている」と説明。今後は、チベット人監督が撮ったチベット映画が公開されることを期待した。

 その後は、実はこの映画の村人たちの暮らすマルカム県は、男性も女性もとても美しい人が多いという話にもおよび、巡礼チームのリーダーの男性ニマや、巡礼中に赤ん坊が生まれる若い父親セパのハンサムぶりを紹介。さらには自宅で試す五体投地のポイントなど映画のさまざまな楽しみを紹介してトークショーは終了した。

イメージフォーラムでの今後のトークイベント
8月 3日(水)18:30の回  石濱裕美子さん(早稲田大学教授)
8月 7日(日)13:20の回 諸岡なほ子さん(『世界ふしぎ発見!』ミステリーハンター)
8月11日(木・祝)13:20の回 渡辺一枝さん(作家)