綾野剛主演、日本映画賞を総なめにした『凶悪』の白石和彌監督の待望の最新作『日本で一番悪い奴ら』が全国公開中です。6月22日より開催中のニューヨーク・アジア映画祭ではオープニング作品として上映され、綾野剛がライジング・スター賞を受賞した本作。国外からの絶賛はもちろんのこと、国内からも本作をご覧になった方からは「脱帽!」「白石監督に敬意を表したい」「傑作!」など<日本警察史上最大の不祥事>と呼ばれる実在の事件をもとに最高のエンターテイメント作品を完成させた白石和彌監督への絶賛コメントが多数よせられております。

白石和彌監督による7日間連続トークイベント<第六弾>のゲストは、本作の主題歌「道なき道、反骨の。」担当の東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)からバリトンサックスの谷中敦、ギターの加藤隆志。新宿日悪署でのゲリラライブも記憶に新しく、主題歌もリリースされたばかり。映画の作品世界と主題歌楽曲のテーマについて、じっくり語り合いました。

 映画の主題歌を担当したスカパラの谷中と加藤とは今回初対面だという白石監督。「映画の主題歌を書いてくださって、ずっとお会いしたくて今日ようやく会えました」と挨拶し、まずは谷中と加藤に本作の感想を伺う。谷中は「いま49歳なんですが、僕ら世代には堪らない映画。踏み込んで描いているが、娯楽感や昔の昭和のような痛快さがあって、好きな映画です」と本作に太鼓判を押す。加藤は「もともと綾野剛くんが役者として好きで、お話をいただいたとき、お会いできるかなぐらいに思っていたのですが、観終わったあとは白石監督のファンになりました!リアリティがあって、色々考えさせられる映画でした。一番悪い奴らの意味、一番悪い奴らは誰なのかを考えさせられましたね」と述べ、続けて谷中が「仲間には入りたくないですけど、必死に生きてるなと。悪い人間ってパワーがある。嘘つきって嘘に嘘を塗り重ねていくから、テンションが半端ない。映画から悪い奴らのエナジーを摂取して昇華して、ポジティブなエネルギーに変えたいなと。音楽だとよくそういうことをやるんですけどね」といい、そこから音楽の話へ。

撮影現場では、エンディング曲について「綾野剛くん、歌う?と話しをして綾野くんも「歌いますよ!」ってやる気だったのですが、翌日それはないなって(笑)」。そして、白石監督は「劇中の曲もですが、エンターテイメントを感じる曲がよかったんです。勢いのあるテンポがよくて、スカの要素を劇中でもいれていきたいと思っていました。そこで、スカパラさんがいいなと話をさせていただいたところ、快くお返事をいただいて。最後のピースがハマって本当にこれ以上幸せなことはないです」と主題歌になった経緯を明かし、さらに横山健をボーカルに迎えることはスカパラからの逆提案だった。オファー時、白石監督は谷中に直筆で手紙を送る。「悪い人たちを悪趣味で描くのではなく、青春映画のつもりで作った映画なんです」と。「エンディングテーマは、終わりのようではじまりにしたいという思いがあった。終わったところから新たな命を吹き込んでいただいて本当にありがたかったです」と白石監督はお二人に感謝の気持ちを述べた。歌詞を書いたのは、谷中。加藤は「谷中さんの歌詞は映画のプロジェクトがはじまりだけど、映画を超えたところにもメッセージが伝わるような核の部分が監督とリンクするところがあるのかなと。映画と曲がリンクするところがあってよかったなと思いました」と客観的に分析する。谷中は「横山健もパンクロックでインディーズで道なき道を進んできて、スカパラもスカという道なき道を進んできて、昔の人間は脱線してでも到達点がよければよかったということがあった。最近は少しでも脱線すると許されなくなってきている。面白く生きてほしいなという気持ちがあって、その面白くするためには寛容さも必要で、面白いからいいやという人間がいてもいいのかなと。『恨まずに終わりにしようか』という歌詞は、恨んでると先に進めなくなるけど恨まずに前に進んでいこうよ、という思いを込めました」と本作に込めた熱いメッセージを語った。

白石監督が「この一曲で健さんと終わるのはもったいないですね」とこぼすと、加藤から「実は、次も考えていて…」と言い、続けて「映像をつけてほしい!」というオファーが!加藤「白石監督と近くなれたので、いろんなことをできたらいいなと思います」、谷中「これから楽しいお話ができそうだなと思ったので、よろしくお願いいたします」と言葉を残し、終わりではなくはじまりになったイベントは拍手喝采のなか終了した。