2015年トロント国際映画祭に出品、サン・セバスチャン国際映画祭で審査員特別賞・最優秀撮影賞のダブル受賞をし、「初期クローネンバーグを思わせる!」「ルイス・キャロル、グリム兄弟、アンデルセンの死体を掘り起こした」等、大きな反響を巻き起こした『エヴォリューション』が2016年11月の公開に先駆け、2016年6月24日(金)〜27日(月)に行われた「フランス映画祭2016」にてジャパンプレミア。あわせて監督のルシール・アザリロヴィックも来日し、上映後に舞台挨拶が行われました。

【イベント概要】
フランス映画祭2016 映画『エヴォリューション』

2016年6月27日(月)14:00開映
会場:有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町2-5-1)
登壇:ルシール・アザリロヴィック監督

2004年に公開され、カルト的な人気を博したガールズムービーの金字塔『エコール』の監督であり、ギャスパー・ノエの公私にわたるパートナーとしても知られるルシール・アザリロヴィックが最新作『エヴォリューション』を携えて、今回のフランス映画祭2016のために10年ぶりの来日を果たした。美しくも妖しい少女の世界を描いた前作とかわり、外界から隔絶された孤島で生きる少年の不安定な心理を圧倒的な映像美で描いた今作は、2015年サン・セバスチャン国際映画祭やトロント国際映画祭で上映されるや否や「初期クローネンバーグを思わせる!」「ルイス・キャロル、グリム兄弟、アンデルセンの死体を掘り起こした」等大きな反響を巻き起こし、このたびは待望の日本上映となった。

有楽町朝日ホールにて開催されたフランス映画祭2016で、6月27日(月)14:00よりジャパンプレミア。上映後、ルシール・アザリロヴィック監督が登場し、舞台挨拶を行った。

今作について、ルシール監督は「『エコール』よりも前から構想はあったので、ずいぶんと長いあいだ企画をあたためていた。一番最初にあったイメージは病院と少年、そして少年と母親の関係性を描くことです。『エヴォリューション』があったからこそ『エコール』があったとも言えます。また、デジタルで撮影した映画ですが、テクスチャー(触覚)にこだわり、あまり鮮明には撮りたくなかった。衣装なども”性的”ではない官能性を意識している」と語った。

客席からの「この作品が直接影響を受けている作品は?」という質問に対しては、「とくに直接影響を受けた映画はないが、太陽が燦々と照っている田舎の村で怖いことが起こるという話は『ザ・チャイルド』(1976年に制作されたスペインのホラー映画)、あとはデヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』の影響はあるかもしれません。また、『エヴォリューション』は言葉の映画というよりはシュルレアリスティックな無意識を描いているので、ヤン・シュヴァンクマイエルの影響なども挙げられるかもしれません」と答えた。

また、「理屈ではなく、感じる映画だと思いました」という感想を受けて、「たしかにそのとおりです。もし理屈があるとすれば、それはあくまで抽象的な意味であって、”夢”の理屈で構築されている作品です。私はこの映画が、感覚的、有機的、精神的な映画であって欲しい」と発言。

最後、「これまでのルシール監督の作品(『ミミ』や『エコール』)が一貫して子供の視線から描かれている理由は?」という質問に対し、「10歳から15歳くらいの子供は感受性が発達していて創造力が豊かです。まだ大人に従わなければならない時期だけれども、何か内に秘めた強い感情を持っている。わたしはそういう子供の気持ちというのを表現したかったのです」と答えたルシール監督は、作中に登場する赤いヒトデをモチーフにしたブローチを胸に、チャーミングな笑顔で一礼すると大きな拍手とともに会場をあとにした。