5/21、大阪市淀川区の第七藝術劇場にて井口昇監督の『キネマ純情』公開初日舞台挨拶が行われた。この日は神戸・元町映画館で舞台挨拶を終えての登壇となった。この作品は井口監督が企画した80年代に映画界を彩った“映画で活躍するアイドル”を復活させようというプロジェクトから生まれた。オーディションで中村朝佳さん・洪潤梨さん・荒川実里さん・上埜すみれさん・柳杏奈さんの5人を選出し、“女優”アイドルグループ「ノーメイクス」が結成された。初主演作品『キネマ純情』の制作支援をクラウドファンディングで募ったところ、約124万円が集まり公開に至った。

『キネマ純情』は、ドラマ『監獄学園・プリズンスクール』の活躍も記憶に新しい井口監督が独特のイマジネーションを炸裂させ、画面を埋め尽くすようなキスの乱れ打ちで悲しい過去に秘められた呪縛と闘う女の子たちの姿を描いたアイドル映画のイメージを覆す作品。
姉・ケイコに誘われて大学生の自主映画に参加した高校演劇部のヨシエ(洪潤梨)、親友のアカリ(荒川実里)、部長のアキ(柳杏奈)。監督のナオミ(中村朝佳)からサディスティックな演出を受けたことで、鉄壁と思われた関係性がゆがみ、彼女たちの隠していた顔、自分でも知らなかった顔が露出されていく。

笑顔で登壇した井口監督が
「この映画を全国で上映していきたいというのが夢だったので嬉しくないですか?」とメンバーに問いかけると
メンバーを崖っぷちまで追い詰めるナオミ監督を演じ切ったあちゃこと中村さんは、
「めちゃめちゃ嬉しいです。この映画、多くの人の支援がないと作られなかった作品なので、しかも撮影から一年経って大阪の舞台に5人で立てていることがありがたいことです」

ストレートで破天荒な明るさと行動力を持つヨシエ役で作品の性格を決定付けた大阪出身のゆんゆんこと洪さんは、
「まさか自分の主演映画で、しかも十三というディープな町にやって来れるとは」と持ち前のストレートな物言いが観客の笑いを誘う。これまで演技経験がなかったというゆんゆん。

「ただ映画が好きだったので、何のあてもなく俳優になるぞ!ってアホみたいに東京に来て、井口さんに拾ってもらえたという(笑)」

「初演技作品とは思えない関西弁の太々しい感じが出てて(笑)」と井口監督が評価すると、

「太々しいですね。腹立ちますね。ホンマにもう(笑)」とスクリーンの自身を振り返った。

友人たちの隠された人間性を露出させるファムファタールを愛らしく演じたみのりんこと荒川さんは、一人ずつ名前を呼ばれての登壇に緊張したとのこと。
「板の上をコツコツ歩いて来て、わー、一人で歩いてるって緊張しました(笑)」
と初々しい表情を見せた。

●今だから語れるハプニング満載! 
孤立する高校演劇部の部長をクールビューティに演じたあむこと柳さん。秘密を抱えた笑わないキャラクターで真剣な顔で話しているにも関わらず、ロケ弁のケンちゃん弁当の輪ゴムを腕につけたまま写ってるシーンがあると明かした。

「実は予告編でも写ってるのがすーちゃんのラインでわかったので、みなさんチェックして頂ければ嬉しいです(笑)」

現場で気付いてNGカットになると思いきやそのまま採用されていた。井口監督は、「単に気付いてなかった(笑)。お客様から言われて“ああそうだったのか”みたいな。セリフを結構間違えてるんです。この人たち(笑)」
と突っ込む。

アイドルにあるまじき取り憑かれ顔も堂々と演じ観客を沸かせたすーちゃんこと上埜さんは、ハプニングがそのままOKカットになっていることがたくさんあったという。
「レフ板持ってる時に取り憑かれるところがあるんですけど、レフ板を投げてガンって当たるんですよ。別に演出じゃなくて痛てーって思ってるのを使って頂いたり」

井口「映画の神様が降りてきたな、奇跡の瞬間だって思うんですね(笑)。当たって痛いかもしれないけど、やった!いいの撮れたって(笑)」

「その後みんなでレフ板持ったまま逃げるシーンで、後ろ向いたらパンツがモロ見えになってたっていう(笑)」
演出してない“心霊写真的な”パンチラがたくさんあるという本作。映画の神様に愛された証拠か!?

『キネマ純情』を観て驚愕するのはやはりアイドル映画にもかかわらず、メンバーの女の子全員がキスをしまくること。「実はこれオーディションの時に、女の子同士のキスが出来るか出来ないかが応募条件で。女の子同士のキスがNGの方は落としてたんです。この子たちはやる覚悟満々で来た訳ですね」

とは言うものの、みんな一回くらいのキスシーンやイメージ系の映像と甘く考えていたという。
「俺ね台本渡した時にみんなが感動して、“監督やります!”って言うかと思ったら意外と暗い顔してて。“ええっ何がダメなの?”って思ってたんですよ。僕はてっきり覚悟出来てるもんだと思ったんで」

●乙女心、スポ根!キスシーンの思い出
そんな不安一杯の顔合わせを経て、ノーメイクスとして初めてのライブを経験した直後に映画の撮影に入った。まだメンバー同士打ち解けていなかったが、5日間の合宿撮影で、思い切ってキスに挑んだことで絆が深まった。

「キスはお互い誰が良かったとそれぞれ思ってるんですか?」この質問にふふふと反応したみのりんに井口監督が「誰が良かったですか?」とやんわり迫る。あむとゆんゆんとのキスシーンを演じたみのりん。
「私、これ選ぶのは涙が出そうになるんだけど…」と複雑な心情を明かしつつも、メンバー内で好評だったと言う後輩カズコを演じたリリカルスクールの大部彩夏さんについては、
「とてもいい唇でした(笑)」

あむには暴力的なキスをして欲しいと演出したという井口監督。

「最初バレーみたいにクルって回ってキスするっていうのがなかなか出来なくて。最初歯がぶつかって“痛いねー!”って。最初は必死でした。でも本番は素敵な唇でした。後、もう一人後輩役の晴野未子さんもノリノリでチュウしてくれて結構嬉しかったです(笑)」
と撮影時の苦労と醍醐味を語るあむに笑顔の井口監督。

「この舞台挨拶すると大抵セクハラみたいなの舞台挨拶になっちゃうんですけど(笑)」

(Report:デューイ松田)