この度、西島秀俊、竹内結子、香川照之、川口春奈、東出昌大など豪華キャストが集結した映画『クリーピー 偽りの隣人』が、6月18日(土)より全国公開致します。

 原作は、ある夫婦の日常が、“奇妙な隣人”への疑惑と不安から深い闇へと引きずり込まれていく恐怖を描き、作家・綾辻行人も「展開の予想できない 実に気味の悪い(クリーピーな)物語」と絶賛した小説「クリーピー」。『岸辺の旅』が第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞した名匠・黒沢清監督が映画化!日本映画界を代表する豪華キャストが集結。隣人の顔をも知らずに生活する現代に忍び寄る圧倒的な恐怖、日常が戦慄へと変貌する、衝撃のサスペンス・スリラーです!

この度、本作の監督・黒沢清と、脚本を執筆した映画監督でもある池田千尋が登壇し、Apple Store銀座にてトークイベント「Meet the Filmmaker」を実施いたしました!小説「クリーピー 」(光文社文庫・前川裕著)から共同で脚本を書き上げた経緯から、原作から脚本を書くことの醍醐味、苦労などを存分に語っていただきました。カンヌ国際映画祭で賞を受賞した世界的な黒沢清監督と、数々の脚本を執筆し西島秀俊を主演に迎えた『東南角部屋二階の女』では監督を務めた経歴のある池田千尋の貴重なトークショーは、作品とは一風変わった和やかな雰囲気で終了しました。

【日時】5月7日(土) トークイベント14:00〜15:00 
【場所】Apple Store銀座(東京都中央区銀座3-5-12 サヱグサビル本館)
【登壇者】黒沢清監督、池田千尋

ゴールデン・ウィークも後半戦に差しかかった本日、Apple Store銀座にはイベント2時間前から列ができるほど、注目度の高い本日のイベント。正席86席は即満席!!立ち見も出るほどの大反響でした!!
Appleの最新機器に囲まれた環境の中、トークショーを行った黒沢監督は思わず、
「Apple Storeでこういうトークショーをやるのは初めてなので、緊張しています。普段はこういった場所とは違った雰囲気の場所でやることが多いので、この場所にあうハイレベルな話ができるか不安ですが、頑張ります。」と冗談を交えながらの自己紹介。
池田さんは「普段は映画監督をしているのですが、黒沢監督は東京芸術大学の先生で、この作品で初めてお仕事をご一緒させて頂きました。今日はちょっと何を言われるかびくびくしながらきました(笑)」と黒沢監督の関係性を暴露。

★『クリーピー 偽りの隣人』での師弟共演はまさに必然?!
黒沢監督は「原作の『クリーピー』は僕が見つけてきたというより、プロデューサーからお話をいただきました。この原作はとても長いので、全部を映画にするのは難しく、そのうちの前半部分をアイディアとして使わせていただきました。池田さんが脚本を担当するということは、プロデューサーから言われていて、元々池田さん付きのお話だったんですね。大物の脚本家さんが挙げたプロットに指示は出しづらいですが、池田さんならできる!という気持ちでうけました。(笑)」と弟子との共同脚本を楽しみにしていたご様子。
池田さんが本作の脚本を務めることになった経緯から思わぬつながりが発覚!!!
「映画監督のほかに、脚本を書ける、書いてみたいと周囲に話していたところ、本作のプロデューサーさんからお声がけをいただきました。なぜこの作品の脚本に選ばれたかというと、東京芸大時代に黒沢監督から四谷怪談を脚本にしなさいという課題をだされたんです。その本を黒沢監督に選んでいただけたんですが、それをプロデューサーさんに読んでいただいたりしたんです!」
黒沢監督が「初めて聞きました。元々は僕がきっかけってことだったんですかね?」と答えると会場は笑いに包まれました。

続いては、本作が共同脚本ということで、製作秘話をお話しいただきました。するとまたもや池田さんが黒沢監督とのやり取りの中で感じたある感情を暴露!!

★脚本制作時の制作秘話
池田さん「原作を読んでから観るとわかるんですけど、プロットづくりに1年弱かかりました。構成だったり、流れをつくるのですが、黒沢監督とやりとりを重ねていって、原作をもとにして新たな物語をつくるのが大変でした。」と本作の脚本にかかった苦労をお話しし始めた池田さん。
話している途中で、黒沢監督とのやり取りの中で、抱えていた不安が一気に吐露されてしまいました!
「ご本人を目の前にしていうのもあれなんですけど、黒沢監督はいじわるで、絶対に答えはくれないんです!池田はどう思うかだよ。僕はこんな気がするんだけど、池田が書いてみなきゃわからないよね。という風に返してくるんです!適格で求めてくるものが高度なので、それに応えるのに苦労しました。(笑)」
池田さんの葛藤したお話を受け、黒沢監督は「僕がやってしまいたいという欲望はあるんですが、僕がやってしまうと、池田千尋という存在がこの作品に関して必要なくなってしまうし、僕だけがつくった世界観になるので、作品が狭い世界の話しになってしまうんです。せっかく池田さんが書くのだから、僕は踏み込まないようにしました。」と師匠ならではの愛を語ってくれました。

近年の黒沢監督作品は、原作ものがおおいという話から原作ものをやり始めた理由を黒沢監督に伺いました。
黒沢監督「5年くらい仕事がなかった時に、たまたまWOWOWのテレビドラマで原作もののお仕事のお話がきて、せっぱつまっていたのでやったのですが、楽しかったんです。それ以来、僕にも原作ものの話しが来るようになって、僕も「贖罪」で結構たのしかったので、可能な限りやるようになりました。最近の作品は、ほぼ全部原作ものですね。(笑)最初から原作ものもやっておけばよかったなと思っています。」
と巨匠から飛びでた意外な苦労話。また、依頼がくる原作の系統を黒沢監督は、
「話がくるのはちょっと変わった、小説としてはダークなものばかりです。三池崇史監督がやるとふざけすぎてしまう、まじめなテイストの時は僕に来るんじゃないんですかね?(笑)」
と冗談を交えながら冷静に分析。
巨匠の苦労話を受けた、池田さんは「黒沢監督が撮った『トウキョウソナタ』と同じ年に『東南角部屋二階の女』が公開したんです。なので、私は8年間映画が撮れなかったんですよ。あの年はリーマンショックがあったので、ぐっど落ちていたんだと思います」とフォローすると、黒沢監督は「そうか、リーマンショックって言葉は、よく聞くけど直接影響していたと感じたことがなかったので、そうかリーマンショックのせいだったのか・・・。」と意外な発見をしたという表情をみせました。

★完成品を見た時の感想
池田さんが作ったものを黒沢監督が紡いでいく。自分の手元から離れ、黒沢監督の手にかかった脚本をみた池田さんは「すごいですよね。2稿、3稿の段階で脚本を黒沢監督にお渡ししたのですが、そこから変化した脚本を見てうなるしかなかったんですよね。「ああ、こうなるのか」とまずそこでうなって、映画になって完成したものをみて、脚本よりさらに展開の唐突さが説得力を増していて、黒沢監督キレッキレだなとおもいました。(笑)一回目は冷静にみれませんでしたもん!」と興奮気味に感想を述べると、黒沢監督は、「職人として、やれといわれたものをこなしただけなので・・・」とクールに切り返すと会場は笑いの渦に包まれました。

最後に黒沢監督からは、「このトークショーを聞いて、映画をご覧になっていない方にはわからない部分があったかと思いますが、ぜひ映画館で確かめて頂けるとうれしいです」
池田さんからは「脚本で参加させて頂いているからではなく、黒沢作品の中でも言葉を一瞬なくすほどの傑作だと思っています。ぜひご覧ください」と締めて頂きました。