『木靴の樹』の世界的名匠エルマンノ・オルミ監督の最新作『緑はよみがえる』。
上映中の岩波ホール(神保町)で、主演のクラウディオ・サンタマリアさんが舞台挨拶。
現在、有楽町朝日ホールで開催中のイタリア映画祭出品作『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』のための来日だったが、尊敬するオルミ監督のためにと岩波ホールを快く訪れた。

粋な帽子姿のクラウディオ・サンタマリア。現在撮影中の映画のために、実は見事な<禿頭>

なのだ。29日の舞台挨拶では帽子を脱いで、観客を驚かせていたが、きょうは帽子は取らず。

だいぶ髪が生えて中途半端になってきたからとか。
映画のたびに20kg増やしたり、髪を剃ったりの「イタリアのデ・ニーロ」。
演技の幅の広さは有名だったが、ついに今年、『〜鋼鉄ジーグ』でイタリア・アカデミー賞主演男優賞の栄冠に輝いたのだ。

その演技派にとっても高いハードルだったのが、世界的名匠エルマンノ・オルミ監督作『緑はよみがえる』の少佐役。自身の役を「本部の無意味な命令を前線に伝えなければならず、無意味と知りながらも、自分が生き延びるためにそれをしなくてはならない。心がふたつに引き裂かれている役」と説明したサンタマリア。

オルミ監督は「とても詩的な表現で俳優たちを役者から人間にしてしまう」そうで、役者の殻をどんどん脱がせてしまう監督のやり方から多くを学んだと言う。しかもオルミ監督の現場はリハーサルなし。脚本もその日の分を毎朝もらうという形で、そのうえ台詞はどんどん変えられていく。「俳優にとって明日何をやるかわからないというのは、恐怖なんですよ(笑)。でも戦争の映画ですから、その恐怖が良かったのでしょう」。しかも撮影はイタリア・アルプスの麓、アジアーゴ高原の冬。マイナス20℃という酷寒の中での撮影だった。とにかく大変な現場だったようだが、それを乗り越えさせたのは「戦争で亡くなった人へのリスペクト」と「今まで会った人の中で最も人間的なひと」だというオルミ監督の存在だったと真摯に話した。

終了後には一転、気軽にサインをしたり、握手したり。ファンサービスも満点(特に女性)。
「さすがイタリア俳優ね〜」と観客が思わずつぶやいてしまう魅力を振りまいて劇場を後にした。

すべての俳優が自分の殻をやぶって新しい演技にたどりついた『緑はよみがえる』。
名匠の演出マジックをぜひスクリーンで見てほしい。