日本のスプラッター映画の草分け的な存在であり、日常にひそむ狂気と倒錯のエロチシズムをハードな映像で描き続け、”ピンク四天王”と称される佐藤寿保監督が、「キャタピラー」で四肢を失くした帰還兵を演じ、「さよなら渓谷」で真木よう子の相手役を務めた大西信満を主演に迎えた最新作「華魂 幻影」が4月30日(土)に新宿ケイズシネマで公開され、初日舞台挨拶が行われました。本作「華魂 幻影」は本年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭の、メディアの自主規制の枠を外した18禁のアダルトな作品を上映する新たな試み“フォービデンゾーン”部門でも絶賛され、満を持しての公開です。

“華魂”とは、俗世の欲望の象徴であり、この花が咲くところでは、人間は欲望の箍が外れて理性が崩壊する。本作は、映画愛に満ちた支配人やスタッフ、そして、個性的な客たちによって支えられてきた映画館の閉鎖が決まり、映画館に欲望の象徴“華魂”が暴走する話です。

寿保監督が、昨今閉鎖が相次ぐ映画館を舞台とし、昨年撮影をしましたが、ロケ地の一つであった飯田橋くらら劇場が5/31で閉館となることが先日決まりました。旧上野オークラ劇場でも解体の直前に撮影をしています。

また、本作で映画初出演を果たし、オールヌードを披露したイオリですが、劇中の謎の少女と同様、謎の少女のまま芸能界を引退することが決まりました。

4月30日(土) 21:00〜
登壇者:大西信満・三上寛、真理アンヌ・川瀬陽太・愛奏・
稲生恵・川上史津子・佐倉萌・佐藤寿保監督
会場:新宿ケイズシネマ

Q.この映画にかけられた思いを教えてください。
佐藤監督「昨今次々と良心的な映画館がなくなっていく中で、まさしく閉館になる映画館を舞台にした映画をやらなければいけないと今回はやってみました。老若男女の今の世に対する鬱憤と言いましょうか、嘆いてばかりはいられないということで、この映画を観て頂いて、爽やかな気持ちで帰って頂ければと切に願っております。」

Q.ところで今回、ヒロインのイオリさんがいませんが?

佐藤監督「僕もショックなんですが、事務所を通じて、引退というように聞いているんですけれど、僕はピンク出身で、昔一度消えた女優さんがまた復活してスクリーンを飾ってくれるという例もあったんで、この映画を観て頂いて、スクリーンの中で再登場してくれるんではないかなと。オーディションで選んだんですが、本当に体当たりです。その透明感を目に焼き付けて頂ければと思います。」

Q.沢村役を演じられた主演の大西信満さんにお話を伺いたいと思います。今回、演じるにあたって苦労された点などありますか?また、撮影のエピソードはございますか?
大西「上映前の舞台挨拶というのは、しゃべれないことも多く、困ってしまうこともあるのですが、この作品に関しては、観てもらってなんぼだと思っています。文字でいくら伝えたところで、観て頂いた時のインパクトを超える言葉を僕には見つかりません。そのライブの色んな想いがものすごく詰まっている作品だと思っています。関係試写で観た時に私自身すごく驚いた作品です。」

Q.大西さんは、今回取り壊し前の最後の2日間に映写室などのシーンを撮らせて頂いた旧上野オークラ劇場、そして劇場内のシーンを撮らせて頂き、先日5月末で閉館になることが発表された飯田橋くらら劇場など、相次ぐ映画館の閉館についてどう思われますか?
大西「ただただ残念です。過去自分自身が地方の劇場を回ってきた中で、毎年のように、『どこどこが閉館になった』だというニュースを聞きます。地方のミニシアターの方たちは、東京から舞台挨拶にお邪魔すると、すごく温かく迎えてくれて、一人一人想い出があるんです。そういう人間関係が経ち切れてしまうわけだから、この映画をご覧になって頂いて、どうやったら小さな劇場を応援していくことができるかなっていうことを皆で一緒に考えていくきっかけになれば嬉しいです。」

Q.三上寛さん、今回は劇場の支配人を演じられましたが、久しぶりのラブシーン、しびれました。撮影のエピソードをお願いします。
三上「話があったときに、一番感じたのは、『上野版”ニュー・シネマ・パラダイス”』だね、と。古い映画館の話なので。私なんかも若いころピンクが好きで、想い出の場所なんです。ああいう映画館いっぱいありましたよね。昔ビートルズの映画を観たのは、東北のあるピンク映画館だったんです。(会場「へー」)なんだかよくわからない映画が来るとピンクでやるんですよね。東京の人は『ビートルズの映画は人がいっぱいで観れなかった』と言っていましたが、私は貸し切りですよ。(会場笑い)私は恩があるんですね、ピンクの劇場に。東京に出てきたとき、東京に慣れない時もピンク映画を見ていると満たされました。」

Q.真理アンヌさん、クライマックスの暴れっぷりが見事でしたが、演じてみていかがでしたでしょうか?
真理アンヌ「最初びっくりしちゃって。台詞がとにかく下半身の下ネタで、どう言ったらいいのか戸惑って、でも、やったことがないから面白いなって思ったんですね。やっててすごく面白かったです。楽しかったです。」

Q.劇中映画「激愛」の主演の川瀬陽太さん、今回の現場はいかがでしたか?
川瀬「監督が先ほど『爽やか気持ちになってほしい』と言っていましたけれど、なるわけがないじゃないですか!(会場爆笑)いい加減気づいて下さい!(会場爆笑)佐藤寿保監督とはかねてから付き合いがありましたが、仕事という仕事でかかわったのはこの作品が初めてだったので、かつて観ていた寿保さんの狂気の世界に自分が入っていくのは初めてだったので、楽しみました。」

Q.劇中映画「激愛」のヒロインを務められた愛奏さん、寒い中での撮影だったので、完成披露試写では、『普段の乳首と違うんです』とおっしゃっていましたが、撮影はいかがでしたか?
愛「今日はそのことは忘れて、今日は絶対変なことを言うのはやめようと思っていたんです。冷たいところにいると、人間は頭が痛くなるということを初めて知りました。次の日体が痛くて、グーグル先生に聞いたら、震えている時に筋肉が知らない間にぶるぶるなるから勝手に筋肉痛になってしまうということがわかりました。」

Q.裕美役を演じられました稲生恵さん、撮影のエピソードなどを教えて下さい。
稲生「初めての相手が三上寛さんで、すっごくよかったです!」(会場爆笑)
監督「誤解を生むよ!」
司会「本当に頑張りましたよね」

Q.みどり役を演じられました川上史津子さん、撮影のエピソードを教えて下さい。
川上「『華魂 誕生』を公開当時にこの劇場で観まして、痛みもある映画なんですけれど、最後にカタルシスがすごくて、第二弾のオーディションがあると聞いて飛びつきました。皆さん、帰り道にはきっと華魂があったらいいなと思われるんじゃないかと思います。普段隠さなくてはいけないと言われている欲望を皆さんお持ちだと思うので、帰り道に人を襲ったりしないように気を付けながら観て頂ければと思います。」

Q.久美役を演じられました佐倉萌さん、撮影のエピソードなどを教えて下さい。
佐倉「ここに華魂入っていませんから(と、妊娠中のお腹をさす。)寿保監督の作品は、『刺青 SI-SEI』(2005)から約10年ぶりでした。前作も拝見したのですが、今回はメルヘン色がめちゃくちゃあると思いました。メルヘンチックな作品になっていると思います。」

Q.最後にメッセージをお願いします。

大西「初めてお客さんに観て頂くこの瞬間を楽しみにしていました。すごく嬉しいです。もし観ていいなと思って頂けたら、なるべく次のお客さんにつないで頂けると嬉しいです。」

佐藤「観ているお客さんの『映画を観たい』という気持ちは普遍的だと思います。昨今のテレビや映画で満足しきれない部分を補ってくれる“超R作品”です。目を背けずに、脳みそまで届いてくれたらと切に思っています。」